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意外な人からの意見
しおりを挟む彬良がクライアントへ行く日、茉穂も同行する。
「茉穂、ちょっと待ってろ」
社用車に乗ってクライアントの会社ビルに到着すると、彬良は黒縁眼鏡をスーツにしまい、髪を掻き上げる。
「取引先にはそうやって行ってるの?」
「ああ……相手によるがな……根暗陰気の俺じゃオタクにしか見えねぇし」
どうりで、仕事の評価もある筈だと納得する。
車を降り、クライアント側の社員と話は順調ではあったが、彬良と茉穂の意見が食い違う箇所には、クライアント側も納得した回答が得られなかった。
「パーティションの案も一理ありますが、それではモニターの統計も正確に取れるとは思えないです」
「パーティション無くては、羞恥が上回って取れない、という事もありませんか?………個人の意見が先ず大事かと」
茉穂は女性目線では言ってみるものの、クライアント側は男性担当者で、彬良と同意見に近い。
「その為に水着着用ですからねぇ……全裸でとは言ってはいない訳ですし、そもそもアダルトグッズのモニターをかって出るぐらいですから、パーティションが無いなら出来ない、という方は参加しないかと」
「私がモニターなら、パーティション欲しいです……水着があっても……」
「水木と、これで食い違ってるんですよ……私的にはあっても無くても、あったとしても分けるとかでいいんじゃないか、と言ってはいるんですけどね」
「村雨さんは、パートナーにはどうして欲しいです?もし参加するなら」
「私です?………そうだなぁ……」
彬良は横に座る茉穂をまじまじと見つめる。
「仮面付けてるし、皆お互いに盛り上がってる時、気にならないとは思うんですけどね………」
「盛り上がる迄の羞恥心は如何するのよ」
「そりゃ、男の盛り上げ方?」
「彬良みたいな人達ばかりじゃないのよ?」
「そうか………茉穂は直ぐに盛り上がるのか………」
「はっ!」
「…………お2人も参加して下さいよ、交際してるなら……ね?そうしましょうよ!」
―――ヤラレた!何?彬良の目論見コレなの!?
目の前で彬良はニタニタと茉穂を見ていた。
「て、事で茉穂も参加っと」
「嫌だってば!」
何故か茉穂も彬良と参加する流れになってしまい、彬良が企画した事が通ってしまった。最後迄、渋って拒否してやる、と茉穂は思い、彬良への拒絶を始める。
会話はするものの、スキンシップは一切応じない茉穂。
「茉穂~………いい加減機嫌直してくれよ」
「直さないってば!……不参加にしてくれたら直す」
「…………ちぇっ……今日、奢るから裕司の店行こうぜ?」
「…………航さんの料理食べれる?」
「航の料理食べれないから、どっかで飯食って裕司んとこ」
「…………デート?」
デートも、航の店に行った以降出来ていない。むしゃくしゃするのもあり、発散したかった茉穂は、デートならと仕事帰りに彬良と行く事にした。
別々で会社を出て、待ち合わせして食事をする。そんなデートも久々だった。
―――金曜だし、ゆっくりデート出来るかな……
食事後、裕司の店に着くと、裕司は女性とカウンター内で話し込み、接客は他のスタッフがしていた。
「彬良、茉穂ちゃん、いらっしゃい」
「こんばんは、裕司さん」
「忙しそうだな、今日」
「週末のこの時間はこんなもんだ」
「紗耶香さん、久しぶりだね」
「えぇ、他の店も盛況で、なかなかこの店に回れなくて………裕司に全部任せきっちゃってる………彬良さんの彼女?」
「あぁ、茉穂って言うんだ」
「初めまして、水木茉穂です」
「白河紗耶香です、この店のオーナーしてます」
紗耶香は裕司の恋人でもあるという。この日は紗耶香も時間があるというので、一緒に飲む事になった。
「彬良さんと同僚なんだ」
「幸か不幸か……」
「幸だろうよ」
「………今は不幸だもん」
「まだ言ってやがる……不参加出来るか如何かはクライアント次第だっての……人数集まらなきゃ、サクラしてくれって言うのは理解するだろ?」
「やだよ……アダルトグッズのモニターなんて……」
「何?アダルトグッズのモニターやるのか?彬良と茉穂ちゃん」
裕司が興味を持ったらしい。
「そ、クライアントから頼まれてな……」
「裕司、その線で協力してくれそうな人居るよね」
「…………あぁ……SM系の店には知り合い居るが…………あと、羽美の旦那も詳しいと思うぞ」
「裕司、それ言っちゃうとマズイでしょ、羽美さん妊婦だし……私達は知らない振りしないと」
「羽美の旦那って………この前会ったぞ?」
「あ、そうだった………羽美の旦那の事は聞かなかった事にしてくれ………航にも言ってねぇから」
「…………そうする……航をキレさせたらマズイしな」
何故、裕司と紗耶香が律也を知っているかは分からない茉穂だが、隠しておきたい事なのは理解した。
「裕司さんの知り合いにもモニターしてくれる人あたってもらえません?募集はしてるけどイマイチ集まらないらしくて」
「いいぜ、聞いてみてやるよ……紗耶香もモニター参加するか?」
「絶対に嫌………社会的に私は無理よ……白河酒造の跡取りなんだから」
「…………だな……て、事で俺達は誘うな……その代わりにモニター集めに協力してやる」
「裕司、頼むわ」
裕司は紗耶香を盾にして、何とか逃れた様で、それで茉穂が逃れられた訳では無かった。
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