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新企画を組む事になりました
しおりを挟む同棲を始めて、暫く経った頃、茉穂は上司から呼ばれた。
「水木、新たに加わって欲しい企画があるんだが、仕事は立て込んでるか?」
「いえ、特には……急ぎの物はありませんけど」
「それなら、村雨と玩具企業のイベント企画を組んで進めてくれないか?」
「……村雨君とですか?」
彬良と組むのは始めてで、かなり嬉しい茉穂は、嬉しい表情を見せないようにしていた。
「前から、村雨が組みたいと言ってはいたんだが、クライアントがまぁ……アレなもんだから、女性社員と組ませるのは……とは思ったんだが、村雨から…………」
上司は急に声のトーンを抑えて続ける。
「お前達が付き合ってる………て聞いて……それだったら、クライアントのイベントを村雨と組ませるのに支障はないかと思ってな」
彬良のクライアントで玩具会社と聞くと、茉穂もピンと来る。
―――上司に言ったって聞いてないんだけど!
交際を隠していたのではないのか、と言いたい茉穂だが、彬良とは組んで見たかったのもあり、一瞬了承しようと思った。
―――ちょっと待って!玩具会社て……まさかアレ扱う部署のじゃないでしょうね?
上司も、女性社員を彬良と組ませるのを渋ると言うのだからアレだろう。
「え………えっと……村雨君と組むのは構わないんですが……そのクライアントの企画って………アダルト的な物だったりします?」
「十中八九それだ」
「な!………お断りしたいんですけど!」
「え?水木、冷たい………」
「っ!……いつの間に背後に居たの!?」
「今………課長、僕が説得しますから、水木はやってくれると思います」
「そうか?………水木、頼んだぞ」
「ち、ちょっと!課長!」
「はい、水木………打合せするよ」
上司との話もそれ以上無い為、彬良に空き室に連れて来られた茉穂。
「はい、座って」
「…………何で私が、アダルトグッズのイベント企画しなきゃならないの?」
「実はなぁ……少し前からクライアントから依頼あって、俺が考えた企画が気に入られちゃってさ………その企画を詰める為に、女性目線の意見も聞きたい、と思って課長に茉穂と組ませてもらえないか、て直談判してたんだ」
「聞いてないよ?一緒に住んでるのに……」
「決まってないものを言えないだろ?」
「………そうだけど……」
企画書を彬良に見せられた茉穂は、凄く嫌そうな顔をする。
「嫌そうだな」
「だって、新商品説明のイベントで何でこんなにオープンにするの?アダルトグッズによ?こういう系は、ひっそりやるものじゃないの?」
「そういう事を取り払いたいんだとさ」
「………え~~?」
彬良が考えた企画は夫婦やカップル、マンネリしたセックスをするのに飽きて、レスになった人達に、新商品を試すだけでなく、新境地を開いて貰おうという企画だった。
参加者は匿名で参加可で水着持参。顔を隠して参加も可能。パートナー変更は不可で大胆になり新商品や他の商品をお試し出来る、という物。参加者には全員、コラボレーションしているラブホテルの宿泊券がプレゼントされ、気に入った商品は購入も出来るという。
会場は大きな会場を借りて、全員その会場でカップル同士がイチャつく企画だ。
「これで、更に詰めろ、と?」
「そう」
「…………如何やって?」
「男は良くても、女が恥ずかしがったりして試せない場合もあるだろ?逆も然り」
「…………ハードな物は嫌なんじゃない?」
「SM好きなカップル来たら如何するよ」
「SM好きな人達は既に試してるんじゃないの?玩具は」
「………確かに……」
「パーティション立てたりは欲しいかも……見られるのはパートナー以外嫌だし……大丈夫なカップルと、隠して欲しいカップルと分けてとか……」
結局、茉穂も話に加わってしまっているのに気が付いていない。
「それがなぁ………優秀賞みたいな物も用意したいとか言ってたんだよ……いわばモニタリングも入ってるから……」
「え?表彰される訳?」
「関係が変化した人達が居たら喜ばしい事だろ?」
「悪化したら?」
「…………ああ……悪化……考えてねぇな……クライアント……」
「そもそも、如何やってモニターしてくれるカップルを募集するの?」
「それはHPと商品購入時に一時、領収書と共にお知らせ記載入れるんだとさ」
「………それで集客出来るの?」
「以前はその方法で新商品も売れたぞ……企画したの俺だし」
「………好評だった、とかいう企画?」
「まぁな」
彬良を手伝ってあげたいが、茉穂はアダルトグッズには抵抗があり、なかなか理解し難い部分があった。
打合せは進まず、一旦他の仕事もあるので切り上げた茉穂と彬良。
フロアに戻ると、英美が茉穂に寄って来た。
「暗雨と仕事だって?」
「あ、うん……正直困る仕事だけど………」
「だよねぇ……暗雨とじゃ、嬉しくは無いよね~」
「え?嬉し……あ、いや……クライアントの企画が困るってだけだよ」
思わず、『嬉しい』と言ってしまいそうになった茉穂。
「何の企画?」
「…………アダルトグッズの新商品発表イベント」
「……………マジ?………断りなよ!」
英美は気が付いてはなかったので、仕事内容を話した。
「女性目線からの意見も聞きたいからってぐらいだよ」
「セクハラじゃん、そんな仕事」
「違うよ……別にセクハラされてないし」
「本当に?」
「うん……モニター募集も掛けるし、私は企画を詰めるだけだから」
そう、決してモニターになる事はないのだ、と断言して仕事に戻るのだが、やはりなかなか詰める事が出来ず、茉穂はクライアントとの打合せに彬良と行く事となる。
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