惚れた男は根暗で陰気な同僚でした【完結】

Lynx🐈‍⬛

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休憩が宿泊に……それが……

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 村雨に引っ張られる様に歩く茉穂。
 村雨は駅方面からズレて、目の前のホテル街に入って行く。

「どこも満室だな……」
「き、金曜だからね……」
「…………仕方ないな……ラブホじゃなくてもいいか?」
「う………うん……」

 村雨はそう言って、タクシーを拾うと名の通ったホテルの名を言う。

「悪い、ちょっと電話する」
「う、うん……」
「もしもし……若宮?………悪いが今から部屋取れるか?………そこを何とか頼んでるんじゃないか…………あぁ、そこでいい……金はちゃんと払う…………バラすなよ、親父に」

 ―――お父さん?

 聞かない方がいいだろう内容。暫くすると村雨が指定したホテルに着き、ロビーにホテルでも肩書が上層であろう男が村雨を見つけると声を掛けて来る。

「彬良様」
「若宮……さっさとチェックインさせろ……長くロビーに居たくない」
「………チェックインは部屋で……部屋にご案内致します」

 明らかに村雨の方が年下だ。
 茉穂がその男の名札を見るとジェネラルマネージャーと記載してある。

 ―――え!村雨君に呼び?

「茉穂、行くぞ」
「う、うん………」

 エレベーターに乗ると、若宮という男が村雨に話し掛ける。

「彬良様」
「…………俺は……アンタは業務を全うしてくれ」
「………失礼致しました、様……」
「で?何?」
「ご実家にはお帰りにならないので?」
「帰らない………帰ってアイツの決めたレールに乗るのは絶対に嫌だしな……アイツも渋々俺に任せるのは嫌だろ……従順に出来るアイツのがレールに乗ればいい……もう、この話はするな」
「…………畏まりました」

 エレベーターが止まると、上層階の1室を案内される。ホテルに着くと、村雨は茉穂の肩や腰に手を回し、茉穂を見る事なく若宮と話し、冷たい表情だ。

 ―――ここに来たくなかったんだろうな……なら何で来たんだろ……

 チェックインを部屋で済ませ、若宮が退室すると、頭を掻き毟り、ジャケットをソファに投げ捨てた。

「…………ふぅ………」

 深い溜息と共にソファに座る村雨。茉穂はどう声を掛けていい分からなかった。

「悪い……本当はここに来たくなかったんだが、俺の部屋じゃムードもねぇからな………」
「来たくなかったのなら、来なくて良かったし………私は村雨君の家で良かったけど?」
「………マジで口説きたい女を初めて抱く日の夜に、あんな部屋はねぇだろ」
「…………村雨君は凄い家の産まれだったんだね……」

 茉穂は窓際に立ち、夜景を眺める。高級そうな部屋で気後れしそうだ。

「黙ってた所で、何れバレる……息子だと言ったって、俺は親父と関わる気は無いからな………抜きで俺を見てくれればいい」
「裕司さんや航さんは知ってるの?」
「…………あぁ……知ってる……あいつ等は抜きにして付き合ってくれてるから、今でもダチだ」

 夜景を眺める茉穂の後ろに村雨がガラスに映る。その村雨の目線は茉穂に真っ直ぐ見つめ、茉穂とガラス越しに目が合った。

「っ!」
「…………そっちに行っていいか?」
「………う、うん……」

 ボサボサになった髪を掻き上げ、村雨が立ち上がり、ゆっくりと歩くと茉穂の背後に立った。

「…………抱き締めていいか?」
「………ほ、本当に身体で口説くつもり?」
「なら、何故一緒に来た?」
「…………き……に……なりそうだったし……」
「は?聞こえねぇ……」

 村雨が茉穂の肩に顎を乗せると、耳に息が掛かる。
 抱き締める許可が出てはいない為、村雨の両腕はガラスに付いていた。

「…………す……好きに……なる………かも……て………思って……たから……」
「………プッ!………何だよ、、て………もうでいいんじゃね?」
「なっ!………村雨君が口説くって言ったから、口説かれたいって思っちゃいけないの?会う度に、口説かれてみたいな、て……どんな口説き文句言うのか楽しみだったんだから!セックスするなら、やっぱり好き会ってシたいな………とも思って……狭間で揺れ動いてたんだから!………ラブホに直行、て言われて………この前から………気に……なって……」
「…………くっ!………煽るんじゃねぇよ!」
「きゃっ!」

 村雨が茉穂を抱き上げる。逞しい筋肉質の胸板に茉穂は顔を埋める。ドクドクと村雨の鼓動が激しく茉穂に届いた。

「窓際で夜景見ながらセックスも唆られるが、ベッドで抱き潰してやるよ」
「シャワー先がいい!」
「あ?………無理!俺もこの前から煽られて、毎日オカズにしてたんだからな!」

 ポン、とベッドに落とされた茉穂。足元に村雨は茉穂を跨ぎ、シャツを脱ぎ始めた。1つ1つ、ボタンを外しながら、目線は茉穂を見ている村雨。徐々に暴かれる胸板に茉穂は胸が踊った。
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