12 / 37
休憩が宿泊に……それが……
しおりを挟む村雨に引っ張られる様に歩く茉穂。
村雨は駅方面からズレて、目の前のホテル街に入って行く。
「どこも満室だな……」
「き、金曜だからね……」
「…………仕方ないな……ラブホじゃなくてもいいか?」
「う………うん……」
村雨はそう言って、タクシーを拾うと名の通ったホテルの名を言う。
「悪い、ちょっと電話する」
「う、うん……」
「もしもし……若宮?………悪いが今から部屋取れるか?………そこを何とか頼んでるんじゃないか…………あぁ、そこでいい……金はちゃんと払う…………バラすなよ、親父に」
―――お父さん?
聞かない方がいいだろう内容。暫くすると村雨が指定したホテルに着き、ロビーにホテルでも肩書が上層であろう男が村雨を見つけると声を掛けて来る。
「彬良様」
「若宮……さっさとチェックインさせろ……長くロビーに居たくない」
「………チェックインは部屋で……部屋にご案内致します」
明らかに村雨の方が年下だ。
茉穂がその男の名札を見るとジェネラルマネージャーと記載してある。
―――え!村雨君に様呼び?
「茉穂、行くぞ」
「う、うん………」
エレベーターに乗ると、若宮という男が村雨に話し掛ける。
「彬良様」
「…………俺は客……アンタは業務を全うしてくれ」
「………失礼致しました、村雨様……」
「で?何?」
「ご実家にはお帰りにならないので?」
「帰らない………帰ってアイツの決めたレールに乗るのは絶対に嫌だしな……アイツも渋々俺に任せるのは嫌だろ……従順に出来るアイツの息子がレールに乗ればいい……もう、この話はするな」
「…………畏まりました」
エレベーターが止まると、上層階の1室を案内される。ホテルに着くと、村雨は茉穂の肩や腰に手を回し、茉穂を見る事なく若宮と話し、冷たい表情だ。
―――ここに来たくなかったんだろうな……なら何で来たんだろ……
チェックインを部屋で済ませ、若宮が退室すると、頭を掻き毟り、ジャケットをソファに投げ捨てた。
「…………ふぅ………」
深い溜息と共にソファに座る村雨。茉穂はどう声を掛けていい分からなかった。
「悪い……本当はここに来たくなかったんだが、俺の部屋じゃムードもねぇからな………」
「来たくなかったのなら、来なくて良かったし………私は村雨君の家で良かったけど?」
「………マジで口説きたい女を初めて抱く日の夜に、あんな部屋はねぇだろ」
「…………村雨君は凄い家の産まれだったんだね……」
茉穂は窓際に立ち、夜景を眺める。高級そうな部屋で気後れしそうだ。
「黙ってた所で、何れバレる……息子だと言ったって、俺は親父と関わる気は無いからな………ソレ抜きで俺を見てくれればいい」
「裕司さんや航さんは知ってるの?」
「…………あぁ……知ってる……あいつ等は抜きにして付き合ってくれてるから、今でもダチだ」
夜景を眺める茉穂の後ろに村雨がガラスに映る。その村雨の目線は茉穂に真っ直ぐ見つめ、茉穂とガラス越しに目が合った。
「っ!」
「…………そっちに行っていいか?」
「………う、うん……」
ボサボサになった髪を掻き上げ、村雨が立ち上がり、ゆっくりと歩くと茉穂の背後に立った。
「…………抱き締めていいか?」
「………ほ、本当に身体で口説くつもり?」
「なら、何故一緒に来た?」
「…………き……に……なりそうだったし……」
「は?聞こえねぇ……」
村雨が茉穂の肩に顎を乗せると、耳に息が掛かる。
抱き締める許可が出てはいない為、村雨の両腕はガラスに付いていた。
「…………す……好きに……なる………かも……て………思って……たから……」
「………プッ!………何だよ、好きになるかも、て………もう好きでいいんじゃね?」
「なっ!………村雨君が口説くって言ったから、口説かれたいって思っちゃいけないの?会う度に、口説かれてみたいな、て……どんな口説き文句言うのか楽しみだったんだから!セックスするなら、やっぱり好き会ってシたいな………とも思って……狭間で揺れ動いてたんだから!………ラブホに直行、て言われて………この前から………気に……なって……」
「…………くっ!………煽るんじゃねぇよ!」
「きゃっ!」
村雨が茉穂を抱き上げる。逞しい筋肉質の胸板に茉穂は顔を埋める。ドクドクと村雨の鼓動が激しく茉穂に届いた。
「窓際で夜景見ながらセックスも唆られるが、ベッドで抱き潰してやるよ」
「シャワー先がいい!」
「あ?………無理!俺もこの前から煽られて、毎日オカズにしてたんだからな!」
ポン、とベッドに落とされた茉穂。足元に村雨は茉穂を跨ぎ、シャツを脱ぎ始めた。1つ1つ、ボタンを外しながら、目線は茉穂を見ている村雨。徐々に暴かれる胸板に茉穂は胸が踊った。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Honey Ginger
なかな悠桃
恋愛
斉藤花菜は平凡な営業事務。唯一の楽しみは乙ゲーアプリをすること。ある日、仕事を押し付けられ残業中ある行動を隣の席の後輩、上坂耀太に見られてしまい・・・・・・。
※誤字・脱字など見つけ次第修正します。読み難い点などあると思いますが、ご了承ください。
続・上司に恋していいですか?
茜色
恋愛
営業課長、成瀬省吾(なるせ しょうご)が部下の椎名澪(しいな みお)と恋人同士になって早や半年。
会社ではコンビを組んで仕事に励み、休日はふたりきりで甘いひとときを過ごす。そんな充実した日々を送っているのだが、近ごろ澪の様子が少しおかしい。何も話そうとしない恋人の様子が気にかかる省吾だったが、そんな彼にも仕事上で大きな転機が訪れようとしていて・・・。
☆『上司に恋していいですか?』の続編です。全6話です。前作ラストから半年後を描いた後日談となります。今回は男性側、省吾の視点となっています。
「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。



淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
小野寺社長のお気に入り
茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。
悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。
☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる