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村雨の過去②
しおりを挟む「美味し……」
「マジ美味ぇな……」
お洒落なバーで重箱を突くなんて、場違いではあるが、村雨と裕司の考えなので、茉穂には何もその事には触れられない。
それ以上に、航が持って来た料理が美味しくて、食べるのに夢中になってしまった。
「でも、いいのかな………バーでこんなに凝った料理食べちゃって……」
「大丈夫大丈夫……まだ金曜で客来ないし……この店は2次会3次会に使われる店だから」
裕司も、重箱からひょいひょいと摘んで行く。
「てめぇ、俺達のだろうが!」
「いいじゃねぇか……割烹料亭おさないの料理、美味いんだから………頑張ったんだな、航」
「お前のおかげでな……」
3人の間で何があったのかは気になる茉穂だが、完結している様で、茉穂は敢えて聞かなかった。
「それで?彬良………」
「………ん?」
「茉穂ちゃんを口説くんだろ?ほれ、口説けよ」
「…………ここで口説けるかよ……会わせに来ただけだ………お前に後から冷やかされんのも嫌だしな……飯も航ん所に行きたかったが、週末混むの知ってるし、航が後継ぐと決めてから、あの店には近付かないようにしてたからな………それに引き換え……てめぇ等は俺が前に働いてた会社に何度も来やがって……航はともかく、裕司はムショ出て間もない時期に来るから、警察迄来る羽目になったんだからな!俺の立場悪くしやがってよ……敵対してた奴等迄、ちょっかい出しに来る様になって、あの後大変だったのはお前も知ってんだろ」
「アレは悪いと思って謝ったじゃねぇか!航に俺も会えなくなったから、お前伝に航の情報を……」
「いい迷惑だ………航からは裕司の近況を聞かれても、裕司から口止めされてたし、お前からは航の近況を根掘り葉掘り聞かれるし……」
「彬良が居てくれたから、今こうしてられるんだろうが」
「…………はぁ……もう落ち着いたんだろ?お前も……航と殴り合うなよ、もう」
「んな事言って、チクッたじゃねぇか、お前も航に店に居る時間帯をよ……」
「訳は知らん……俺は航や裕司程お互いに理解してないからな………ただ、航から『裕司に借りを返す』て言われただけ………借りの事は俺も知ってるから、その件を手助けしただけの事だ………だから、お前高嶺の花を捕まえたんだろうが」
「…………ぐっ……」
懐かしい話の内容の様でも、つい最近迄引き伸ばされた様な内容で、茉穂は聞いている事しか出来ない。
「もっと揶揄いたいが、茉穂にはこの話つまらないよな?」
「………意味は分からないけど、聞いてた……波瀾万丈だったんだね、3人共」
「茉穂ちゃんは、こんなガラ悪い彬良に口説かれそうなのに、気にならない訳?」
「裕司、お前が言うな」
ガラが悪いのはお互い様なのだろうが、第三者目線からの心配なんだろう。
村雨の方は余計なお世話だという目を裕司に向けている。
「………職場一緒だし、会社では根暗で黒縁眼鏡に頭ボサボサだったから、ギャップには驚いてるけど、今はこの方がらしいかな、て思う………」
「笑えるよな!コイツが根暗キャラ通してんの!コッソリ会社近くに見に行った事あってさ、俺………大爆笑したわ!コイツこれでも高校時代、族の総長してた奴だから、当時知ってる奴があの姿見たら、絶対に笑う!」
「族に居たとは聞いてたけど……総長………」
余程、ヤンチャしていた人達からしたら、村雨は知らない存在ではなかっただろう。今思えばよく更生したと思われた。
「何年も前の話を蒸し返すな、裕司」
「今、真面目にしてるならいいんじゃない?」
「そうそう、俺みたく前科持ちじゃないだけマシ」
「裕司、よくお前オープンで居られるな」
「紗耶香も知ってるし、航の為の勲章だと思ってるからな……隠したって、叩きゃ埃の様に出て来る……なら、先に言った方がマシ……ちゃんとオツトメしてきたからな」
「明るくなったな、お前」
「まぁな……闇からやっと這い出れた気がしたのは、羽美の事があったからだから」
「羽美に何年も会ってねぇな……航が会わせてくれなかったのもあるが………」
「航は羽美と会わせねぇだろ……羽美も会いたくないと思うぜ………羽美が浮気する男を嫌ったのはお前が原………んぐっ!」
「裕司!」
彬良が前に乗り出して、裕司の胸ぐらをつかむ。その行為に茉穂は察した。女の感だが、羽美という女性は村雨と付き合っていた事がある、と。
「いいじゃねぇか、羽美に手を出す前に、他の女食ったぐらい、茉穂ちゃんには関係ないし、10年以上前なんだから………羽美も結婚して、もう直ぐ子供産まれるし……てか、航もよく許したよな」
「茉穂………羽美という女は航の妹でな……昔、少し付き合ってはいたんだが、航がかなりのシスコンで、羽美が初めて付き合う男が俺だったのもあって、航にハメられて浮気させられた苦い思い出がある……」
航の嫉妬心から、村雨に女をあてがわれ、村雨はコロッと羽美を裏切ってしまったらしい。それが原因で、羽美は浮気をする男は、分かると直ぐに別れる様になった、という。回り回って、羽美は幸せを掴んだのだが、それについては村雨も祝福しているという。
茉穂が聞く辺り、未練は無さそうだった。
だからこそ、浮気はしない、と断言していたのも頷けた。
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