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マジで口説くから

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 スマートフォンにナビゲーションを設定し、待ち合わせのバーに向かう茉穂。空腹であるのに、料理が出るバーであればいい、と思いながら、繁華街にあるビルに着いた。

「いらっしゃいませ」

 スーツ姿の男が出迎える。

「あの、待ち合わせで……」
「お相手は男性ですか?」
「はい」
「…………今、1人で居る男性客居られないので、カウンターにどうぞ」

 高級そうなバーで、茉穂が入り慣れない雰囲気のバーだった。

「何か先に飲みます?」
「………来てからでいいです?」
「じゃ、冷出しますね」

 タンブラーに氷水が出され、茉穂はスマートフォンを出し、連絡が無いか確認する。

 ゚.*・。゚♬*゜

「………はい、バー白河………おぉ、彬良」

 ―――村雨君?

「女性1人客?………あぁ、今来たぞ……分かった、伝えとく」

 バーの店員が、茉穂を見ると、メニューを差し出した。

「彬良と待ち合わせ?あと10分ぐらいで着くってさ」
「あ、はい………村雨君はよくこの店に来るんですか?」
「まぁね……高校からの腐れ縁で、俺がこのバーの雇われ店長になってから、ちょくちょく………俺、小松 裕司」
「………水木 茉穂です」
「へぇ~、アンタが……」
「私の話が村雨君から出てたんですか?」
「…………まぁね、たまにだけど」

 何故、村雨は茉穂の事を友人に話していたのか分からない。

 カチャ。

「いらっしゃ………何だ、航か」
「あぁ?裕司が届けに来いって言ったから来てやったんじゃねぇか!裕司!週末だぞ!俺だって店あるんだから、抜け出して来たってのによ!」

 村雨の様に、少々ガラの悪い男が入って来ると、荷物をカウンターに置いた。

「彬良が頼んだんだよ、言うなら彬良に言え」
「うわぁ………やっぱりか…………俺の料理食いたきゃ店に来いって言っとけや!」
「敷居高いんだとよ」
「………ちっ!気にしやがって……お前は来てんのによ」

 風呂敷に包んでいたのは重箱だった。微かに、タバコのニオイと共に、いい香りがする航という男。

「まぁまぁ……金はしっかり払わせるからよ……彬良はもう直ぐくるぜ?少し会ってけよ」
「………お前と音沙汰無い間、頻繁に会ってたよ、見なくていいや……店を親父に任せて、羽美も手伝ってるが、行かねぇと」
「そっか、仕方ねぇな……羽美は妊娠中なのに、働かせるなよな」
「アイツが好きでやってんだよ……じゃあな」

 カチャ。

 航という男は、忙しいのかバーを出て行った。

「はい……どうぞ」
「…………え!?」

 置いて行った重箱には、日本料理が詰まった料理が敷き詰めてある。一流料理店顔負けの凝った料理だ。

「彬良も俺も、今の男と長い付き合いでね、アイツは和食の料理人なのさ……彬良が店に行けないから、持って来させた」
「す、凄いですね………」
「食べていいよ」
「…………でも、村雨君来る迄待ってます」
「気にする奴じゃないよ、彬良は」

 裕司はそう言うと、日本酒を茉穂に出す。

「俺から1杯奢らせてくれ」
「そんな……悪いですよ………」
「彬良が女紹介するの、久々でね………ちょっと嬉しいんだ」
「そ、そうなんですか?」
本気マジ相手になると、俺達に会わせようとするからね」
「え!?」
「…………あれ?……付き合ってんじゃないの?」
「付き合ってないです!」
「…………ヤバ……〆られる……内緒ね!俺が言ったの」

 カチャ。

 バツが悪そうに、裕司は濁した所で、走って来たのだろうか、村雨が息荒く入って来た。

「裕司!てめぇ………余計な事言ってねぇだろうな?」
「…………いや?……今、航来てお前が頼んだもん持って来たから、俺達の関係話てた所」
………本当か?」
「え!?………えっ………と……」

 茉穂には村雨が隠していたかったのか分からないし、また急に名を呼ばれて動揺してしまった。
 その動揺が、村雨に伝わる。

「………裕司、何言った……」
「暴れない事を約束したら言う」

 裕司は両手を掲げ、反抗心が無いアピールをしている。

「少し前に、この店で航と暴れて、親会社にこっぴどく怒られたからな……暴れんのは勘弁してくれ」
「んなものは、てめぇの都合だろうが!」
「り、料理食べない?美味しそうだなぁ!」

 茉穂は、キレる村雨が怖くて、話をすり替えた。

「ほらほら、茉穂ちゃんも居る事だし!な?」
付けするんじゃねぇよ!てめぇの彼女にチクるぞ!」
「あ、それは止めて………嫉妬心強いから」
「じゃ、言え」
「…………彬良の本気マジになる女は、俺や航に紹介する、て話をしたんだよ」
「なっ!」

 村雨の顔が急激に赤くなる。茉穂に聞かれたくなかった様だ。

「俺達の暗黙のルールだったろうが!マジの相手は紹介し合ってたろ!」
「航には、、て言ったのに、コイツに忘れた……」

 だから、航は茉穂とは会話せずに退散したのだろうか。目は合ったが、挨拶もせずに帰って行った航。
 チラチラと、村雨は茉穂を見るが直視しない。出来ない、と言った所だろう。

「茉穂………すまん……もう少し後で言いたかったが………俺……マジで茉穂を口説く事にしたから」
「…………!!」

 今度は、茉穂が茹でダコの様になる瞬間を村雨に見せたのだった。
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