9 / 37
マジで口説くから
しおりを挟むスマートフォンにナビゲーションを設定し、待ち合わせのバーに向かう茉穂。空腹であるのに、料理が出るバーであればいい、と思いながら、繁華街にあるビルに着いた。
「いらっしゃいませ」
スーツ姿の男が出迎える。
「あの、待ち合わせで……」
「お相手は男性ですか?」
「はい」
「…………今、1人で居る男性客居られないので、カウンターにどうぞ」
高級そうなバーで、茉穂が入り慣れない雰囲気のバーだった。
「何か先に飲みます?」
「………来てからでいいです?」
「じゃ、冷出しますね」
タンブラーに氷水が出され、茉穂はスマートフォンを出し、連絡が無いか確認する。
゚.*・。゚♬*゜
「………はい、バー白河………おぉ、彬良」
―――村雨君?
「女性1人客?………あぁ、今来たぞ……分かった、伝えとく」
バーの店員が、茉穂を見ると、メニューを差し出した。
「彬良と待ち合わせ?あと10分ぐらいで着くってさ」
「あ、はい………村雨君はよくこの店に来るんですか?」
「まぁね……高校からの腐れ縁で、俺がこのバーの雇われ店長になってから、ちょくちょく………俺、小松 裕司」
「………水木 茉穂です」
「へぇ~、アンタが……」
「私の話が村雨君から出てたんですか?」
「…………まぁね、たまにだけど」
何故、村雨は茉穂の事を友人に話していたのか分からない。
カチャ。
「いらっしゃ………何だ、航か」
「あぁ?裕司が届けに来いって言ったから来てやったんじゃねぇか!裕司!週末だぞ!俺だって店あるんだから、抜け出して来たってのによ!」
村雨の様に、少々ガラの悪い男が入って来ると、荷物をカウンターに置いた。
「彬良が頼んだんだよ、言うなら彬良に言え」
「うわぁ………やっぱりか…………俺の料理食いたきゃ店に来いって言っとけや!」
「敷居高いんだとよ」
「………ちっ!気にしやがって……お前は来てんのによ」
風呂敷に包んでいたのは重箱だった。微かに、タバコのニオイと共に、いい香りがする航という男。
「まぁまぁ……金はしっかり払わせるからよ……彬良はもう直ぐくるぜ?少し会ってけよ」
「………お前と音沙汰無い間、頻繁に会ってたよ、見なくていいや……店を親父に任せて、羽美も手伝ってるが、行かねぇと」
「そっか、仕方ねぇな……羽美は妊娠中なのに、働かせるなよな」
「アイツが好きでやってんだよ……じゃあな」
カチャ。
航という男は、忙しいのかバーを出て行った。
「はい……どうぞ」
「…………え!?」
置いて行った重箱には、日本料理が詰まった料理が敷き詰めてある。一流料理店顔負けの凝った料理だ。
「彬良も俺も、今の男と長い付き合いでね、アイツは和食の料理人なのさ……彬良が店に行けないから、持って来させた」
「す、凄いですね………」
「食べていいよ」
「…………でも、村雨君来る迄待ってます」
「気にする奴じゃないよ、彬良は」
裕司はそう言うと、日本酒を茉穂に出す。
「俺から1杯奢らせてくれ」
「そんな……悪いですよ………」
「彬良が女紹介するの、久々でね………ちょっと嬉しいんだ」
「そ、そうなんですか?」
「本気相手になると、俺達に会わせようとするからね」
「え!?」
「…………あれ?……付き合ってんじゃないの?」
「付き合ってないです!」
「…………ヤバ……〆られる……内緒ね!俺が言ったの」
カチャ。
バツが悪そうに、裕司は濁した所で、走って来たのだろうか、村雨が息荒く入って来た。
「裕司!てめぇ………余計な事言ってねぇだろうな?」
「…………いや?……今、航来てお前が頼んだもん持って来たから、俺達の関係話てた所」
「茉穂………本当か?」
「え!?………えっ………と……」
茉穂には村雨が何を隠していたかったのか分からないし、また急に名を呼ばれて動揺してしまった。
その動揺が、村雨に伝わる。
「………裕司、何言った……」
「暴れない事を約束したら言う」
裕司は両手を掲げ、反抗心が無いアピールをしている。
「少し前に、この店で航と暴れて、親会社にこっぴどく怒られたからな……暴れんのは勘弁してくれ」
「んなものは、てめぇの都合だろうが!」
「り、料理食べない?美味しそうだなぁ!」
茉穂は、キレる村雨が怖くて、話をすり替えた。
「ほらほら、茉穂ちゃんも居る事だし!な?」
「ちゃん付けするんじゃねぇよ!てめぇの彼女にチクるぞ!」
「あ、それは止めて………嫉妬心強いから」
「じゃ、言え」
「…………彬良の本気になる女は、俺や航に紹介する、て話をしたんだよ」
「なっ!」
村雨の顔が急激に赤くなる。茉穂に聞かれたくなかった様だ。
「俺達の暗黙のルールだったろうが!マジの相手は紹介し合ってたろ!」
「航には、今はスルーしろ、て言ったのに、コイツに忘れた……」
だから、航は茉穂とは会話せずに退散したのだろうか。目は合ったが、挨拶もせずに帰って行った航。
チラチラと、村雨は茉穂を見るが直視しない。出来ない、と言った所だろう。
「茉穂………すまん……もう少し後で言いたかったが………俺……マジで茉穂を口説く事にしたから」
「…………!!」
今度は、茉穂が茹でダコの様になる瞬間を村雨に見せたのだった。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】
ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。
※ムーンライトノベルにも掲載しています。
Promise Ring
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。
下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。
若くして独立し、業績も上々。
しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。
なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】
ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。
「……っ!!?」
気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
憧れの童顔巨乳家庭教師といちゃいちゃラブラブにセックスするのは最高に気持ちいい
suna
恋愛
僕の家庭教師は完璧なひとだ。
かわいいと美しいだったらかわいい寄り。
美女か美少女だったら美少女寄り。
明るく元気と知的で真面目だったら後者。
お嬢様という言葉が彼女以上に似合う人間を僕はこれまて見たことがないような女性。
そのうえ、服の上からでもわかる圧倒的な巨乳。
そんな憧れの家庭教師・・・遠野栞といちゃいちゃラブラブにセックスをするだけの話。
ヒロインは丁寧語・敬語、年上家庭教師、お嬢様、ドMなどの属性・要素があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる