拝啓、殿下♡私を追い出して頂いて感謝致します【完結】

Lynx🐈‍⬛

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35 *レイノルズside

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 レイノルズと決別を決めたミューゼは、再び蟄居したクロレンス侯爵家の領地に逃げる様に帰った。
 ファルメル国の事を追求されたくなかったからだ。しかし、そんな上手く行く訳はなく、蟄居先の領地からの通報で都へと連れて行かれてしまう。

「何よ!私は何も悪くないわ!」
「貴女には、実家フロム侯爵家の脱税、レイノルズ元王子の国庫横領への加担の容疑が掛かっている!」
「し、知らないわよ!レイノルズ様が勝手に私に貢いだんだし!」

 勝手に貢いだ、と吐かすミューゼに反省の色は無かった。
 欲に眩み、レイノルズに甘やかされて、貢がれた事に味を占めて、性欲の強さ同様に物欲も膨れ上がり、それを下げたくなかったのだ。
 まさか、レイノルズの資産が底を付き、国庫に迄手を出すとは思わなかったから、廃位を理由に別れ、次の男に貢いで貰わなければ、貧乏侯爵の屋敷では生活出来ない。
 そして、ミューゼがパサ宮殿に住んでいた間に、クロレンス侯爵家の屋敷の金品は侍従達に盗まれていて、ほぼ何も無かった。
 侍従も1人も居らず、屋敷は荒れ放題。
 レイノルズが迎えに寄越してくれなかったら、ミューゼは餓死していた事だろう。
 だから、ファルメル国に連れて行ってくれる、というレイノルズに乗り、買い物をしまくって、それを持って、クロレンス侯爵家の屋敷に逃げて来て、それを売りながら、次の男を見付かる迄、我慢をしながら生活するつもりだった。
 頼る父も投獄され、金品も入らないのだから、ミューゼは仕方ない、とぐらいしか思っていない。
 全て自分の為だ。

「その荷は何だ!」
「触らないでよ!レイノルズ様から頂いたんだから大事な物よ!」
「没収だ!これ等もレイノルズ元王子からの貢ぎ物だろ!」
「気安く触るなぁ!」

 醜聞顧みず、暴れるミューゼは、クロレンス侯爵領に帰る事は2度となかった。
 そして、獄中で女児を出産する。
 勿論、レイノルズの子で、ミューゼはレイノルズの子だと、と言い張る一方、それを同じく獄中で聞いたレイノルズは、自分の子ではない、と認めず、レイノルズとミューゼはもう仲が戻る事は無い、と皆がそう思ったという。
 ミューゼは王族の血を受継いでいる子を、金になると思ったからか、認めて貰う迄、片時も娘を手放そうとはしなかった。
 そのレイノルズというと、ミューゼへの愛はすっかり冷め、廃嫡になり取調べで、国庫の横領を補填し隠していたのはサブリナで、夫婦であった5年間だけ、影からレイノルズを結果的は支えていたのだと知った。それを知ったレイノルズは、何故か此処でサブリナのその行動が、自分への叱咤と愛と勘違いする。とてつもなくポジティブ思考の持ち主だった。
 そして、レイノルズの固有財産は全て没収され、サブリナへの慰謝料として、補填された横領分を返却された。

「お、俺の財産………」

 廃位どころか、廃嫡され、貴族でもなくなったレイノルズに、生活等1人では出来ないだろう。僅かばかりの金しか手元に残らず、獄中を出ても、身体を使った仕事も出来ない事を予想された。
 レイノルズとミューゼの子は、ミューゼが育てられないと思い、ミューゼから国王と王妃がミューゼから取り上げた。
 そのミューゼは国王と王妃に娘の認知を懇願したが、認知をした所で、王位継承もしない、と突っぱねられると、ミューゼはあっさりと娘を捨てた。
 その頃には、オルレアン国は新たな王太子を立て、暫く情勢を回復に尽力を費やし、王族への支持回復の傾向が見られた為、オルレアン国王は退位している。

「働いて下さいよ、!」
「っく!」

 レイノルズは、日雇いで収入を得なければ、食べる物に困る生活に落ちぶれていた。
 都の方が仕事はあるが、外面が良く、街にも頻繁に顔を出していたレイノルズなので、レイノルズを敬っていた民衆は顔を知っている。
 そのレイノルズがもう王族でなくなり、平民に落ちたのと、愚行の数々で今は民衆達から馬鹿にされながら生きていかねばならなかった。

「今に見てろ……」

 罪歴のある者達が働く採掘場で日雇いの仕事しかなかったレイノルズは、泣けなしの金だけ持って、都を出る。
 オルレアン国に居ては、今後一生馬鹿にされながら生きていかねばならない、と悟り、あれ程嫌っていたサブリナの居るファルメル国へと目指した。
 国庫を横領したレイノルズを助けてくれていたのだから、また助けてくれるかもしれない、と淡い期待を篭めて。

「サブリナ………今会いに行ってやるからな」

 助けてくれたから、レイノルズはサブリナから愛されていた、と勘違いしてしまったのだろう。
 サブリナが助け、補填したのはレイノルズとの結婚生活の5年間のみ。
 王太子だったレイノルズの責任は妃であるサブリナにも嫌疑が掛かりかねないので、横領した分は返しただけの事。
 しかもサブリナは自分の資産を運用して、補っていたが、王太子夫婦に支給される金銭を返していた事も多いのだ。上手く活用していたからなだけで、サブリナの損は余りない。
 寧ろ勉強になった、と思うだけだ。
 そんな事もレイノルズは頭が回らないらしい。
 そして、レイノルズがファルメル国に働きながら目指して、離縁してから既に2年も経っていた。
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