拝啓、殿下♡私を追い出して頂いて感謝致します【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 サブリナの元に面会者が来ていた。
 父であるユーザレスト公爵と兄のモントールが、兄マイルの手紙を持って来ている。
 ユーザレスト公爵から、婚約の祝いを伝えに来たのと、アステラから役職を任命されたから、感謝の意を述べに登城した。
 そして、マイルの手紙からはレイノルズが王太子を廃位になるという内容で、新たな王太子をマイルに、という打診があった事があり、近くオルレアンを出るという話だった。
 マイルが王太子になってしまっては、折角妻のデイジーや息子のアベルをファルメル国に行かせた意味も無くなる。
 オルレアン国王族の血脈のユーザレスト公爵はもうオルレアン国に見切りを付けているのだから、マイルもそれに賛同しているのだ。
 でなければ、身を隠していた意味も無い。

「俺がこの手紙を受け取った時、ファルメルには頃合いを見て、兄上も亡命すると言っていたよ」
「ご無事に到着すると良いのですが………」
「大丈夫さ、兄上は」
「それにしても、何故マイルお兄様に白羽の矢が………幾ら王族の血脈だからと言っても、随分と前の事ではありませんか」
「恐らく、マイルが王太子になればサブリナが帰って来やすいと思ったのだろうな」
「あり得ませんわ」
「しかし、ヤル事が汚い」
「陛下はその様な事をする方ではない。臣下の者だろう………サブリナの手腕を知る者からすれば考えそうな事だ」

 応接の間で、淹れられた茶を飲み、ユーザレスト公爵の話を聞いたモントールは、しかめっ面をする。

「亡命して正解………俺は商人になってしまったから、オルレアンには戻る事もあるだろうが、ほとぼりが冷めない内は俺も行かない方が良さそうだね」
「オルレアンには部下を送れば良い。お前も見付かって問正され、サブリナに何かあっては困る。アステラ陛下の妃になるのだからな」
「だけど、よく決心したなサブリナ」
「お慕いしておりますから」
「…………あっそ………少なくとも、レイノルズ殿下よりマトモだった、て事か」
「違いますわ、モントールお兄様。レイノルズ殿下はアステラ様の足元にも及びません」
「サブリナ」
「はい、お父様」
「漸く、幸せを掴んだのだな?」
「…………はい」

 サブリナの安堵する表情で、ユーザレスト公爵とモントールも安堵の顔を見せた。

「それで、レイノルズ殿下はいつ頃廃位になるのですか?」
「今、サブリナが暴露していた後始末をレイノルズ殿下が解決させ、新たな王太子が立太子する頃だそうだ。まぁ、解決させる前に王太子が決まれば直ぐにだろうな」
「モントールお兄様の予想は的中しますわ」
「言い切るなぁ、サブリナ」
「当然です。レイノルズ殿下には無理なのですもの…………レイノルズ殿下は資産を投げ売ってでも、反省してもらわなければなりません」
「……………何をしたんだ?」
「……………レイノルズ殿下は国を誑かしてましたもの」
「……………誑か………まさか横領か!」
「はい…………国の資産を使い込んでましたわ。廃位になるどころか廃嫡も可能性あるかと思います」

 サブリナは最後にその証拠をオルレアン国に突き付けるつもりだ。
 ミューゼへの散財をレイノルズは国庫を横領していた。それをレイノルズの資産を知るサブリナが知らない訳は無い。
 それをサブリナは国王に隠しながら、レイノルズの資産を活用し、横領の証拠集めをしていたのだ。
 碌でもない男でも、そういう悪巧みには賢かったのだ。

「流石………」
「本当に息子で産まれて欲しかったな」

 サブリナが男で産まれていたなら、苦労する結婚生活はしなかった筈だ。
 それなのに、サブリナは後悔が無いとばかりに綴る。

「嫌ですわ、お父様…………わたくしは女で喜びを噛み締めておりますのよ?やっと………安住の地を見つけましたわ」
「兄上も優秀で、妹も優秀…………俺は平凡………板挟みしないでくれ」
「あら、お兄様も商人の才がお有りではないですか」
「それが性に合ってる」

 今ではモントールも大富豪と言われていて、オルレアン国の貴族の中でも、資産は多かった。
 サブリナやユーザレスト公爵よりも。

「全く…………貴族らしい事をせんで、遊び呆けているの間違いではないか?お前もそろそろ落ち着きなさい」
「恋人は居ますよ。平民の娘で父上の許しが出るなら求婚します」
「……………お前……私が反対するとでも?」

 ユーザレスト公爵はモントールのする事を諦めている節がある。

「いえ?父上が反対したら俺は縁を切る事ぐらい理解されてると思ってますから」
「お兄様も策士ですわね………先に仰るのはズルいですわ。縁切る覚悟迄されている方なのですね?」
「まぁ良い…………連れて来なさい。了承は人柄を判断してからだがな」
「ありがとうございます、父上」
「サブリナ様、陛下がお越しになりました」
「申し訳無い。家族団欒の中にお邪魔する」

 アステラが応接の間に来ると、サブリナの横に腰掛けた。

「いえ、アステラ陛下。最早陛下も家族だと思っております。娘を娶って頂くのですから………私等、家族と申し上げるのは烏滸がましく、無礼な事やもしれませんが」
「いえ、貴方は義理の父になります。家族と見て頂き嬉しく思います」
「サブリナの直ぐ上の兄、モントールと申します。長兄はまだオルレアンでの仕事があり、不在で申し訳ございません。ファルメルに亡命する予定ですが、参りましたら直ぐに登城許可を頂くかと思います」
「貴方が、ギルドを運営するモントール卿ですか………噂はかねがね……俺も何度か利用させて貰ってますよ」
「存じ上げております。賢帝と言われる陛下に覚えて頂き、嬉しい限り」
「サブリナの家族ですから、知らないとは言えません。それに、父君と兄上に報告もあり、参りました」

 アステラはそう言うと、サブリナを見つめた。
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