拝啓、殿下♡私を追い出して頂いて感謝致します【完結】

Lynx🐈‍⬛

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「…………もう我慢出来ん!」
「っ!」

 サブリナの顔と手で昂ぶったアステラは長椅子の上で、サブリナを押し倒した。

「…………離縁してくれて良かった………本当に好きだったから、やっと名実共に俺の妃に出来る………」
「アステラ陛下………」
「…………もう、名称呼びは止めてくれないか?臣下に呼ばれている様に聞こえる………其方は王妃になるんだ。俺と同等の位置に居てくれ」
「…………で、では………アステラ様……で宜しいですか?」
「そうだな………呼びやすい様に呼んでくれ、本当は呼び捨てでも構わないが、多分拒むだろ?サブリナは」
「…………拒みます………」
「サブリナらしい、生真面目さだな…………」
「っ!」

 呼び名だけの会話でさえも、アステラから受け取る目線は熱かった。
 皮肉に聞こえそうな言葉でも、優しく微笑まれ、押し倒されたサブリナは目が離せない。
 先日の執務室での、逃げようと思っていた気持ちが今は無く、受け入れたくなる程、アステラの気持ちが嬉しく感じた。

「…………」
「…………」

 何方も無言になり見つめ合うと、サブリナは目を綴じた。
 視界が無い真っ暗なサブリナに、アステラの柔らかな唇が触れた瞬間、目を綴じた暗闇でも、明るい稲妻がサブリナに走って行った感覚に陥る。
 優しく触れるキスだが、刺激が強い。
 それなのに、まだ欲しくなる刺激だった。

「っ!」

 一瞬、アステラが唇から離れると、唇が舐められる。
 すると、強引に割り入れられるその舌が、サブリナに未知なる衝撃を与えて行った。

「んっ………」

 レイノルズともこんなキスはした事はない。
 結婚式でほんの少し触れただけのキスしかしなかった。
 もっと濃厚なキスが経験するのも、レイノルズとはしたくなかった。
 だが、アステラから貰うキスはそれを身体が悦んでいる。

「んっん………」

 重なる唇から漏れるサブリナの声。
 その声で、アステラの腕に包み込まれたサブリナの身体は、浮き上がる様に抱き締められ、深いキスへと変わった。
 歯肉をアステラの舌が這い、サブリナの舌がアステラに吸われて息さえもアステラに移されて行く苦しいキスが、何故か気持ちが良い。
 苦しく酔わされて、息が出来なくなりそうになった頃、漸くアステラはサブリナの唇から離れた。

「…………可愛い……サブリナ………」
「…………はぁ………はぁ……何処が………」
「俺に酔った、蕩けた顔だ………寝台に行こう………長椅子では思う存分、味わえない」

 アステラに身体を起こされたサブリナは、立たせられ寝台へと連れて行かれた。
 そして、寝台に腰掛けられたサブリナの前にアステラが立っている。

「サブリナ、中央に…………」
「は、はい………」

 寝台に連れて来られると、尚更この後の事が近付くと思わせられた。
 寝転がる方が良いのか、座った方が良いのかは分からないが、曝け出す様な姿勢はサブリナには度胸がなく、毛布を剥いで中央に座った。
 その姿は背筋が伸び、行儀良く手を膝に乗せ、これからアステラとする行為に緊張していると分かる。
 レイノルズとの夜も同じ様に待っていて、サブリナはあの時の罵声を思い出してしまった。

 ---ち、違う………あんな事、アステラ様が仰る事は無い筈……

「こら、余計な事を考えるな」
「っ!…………あ………」

 アステラは上半身のシャツを脱ぎ、サブリナの前に向かい合って寝台の中央に乗っていた。それを気付かない程、緊張して気配さえも気に出来なかった様だ。

「何を考えてた?」
「……………そ、その……」
「まぁ良い…………察するから聞きたくない……忘れろ、これからは俺が身も心も目一杯甘やかしてやる」
「あ、アステラ様…………こんな可愛げ無いわたくしが、アステラ様をお慕いして良いのでしょうか…………」
「っ!…………だ、大歓迎だ!………寧ろ他の男を慕うな!視界に入っても俺と比べて、俺の方が良い、と迄思ってくれ!」
「…………い、至らぬかもしれません………ご満足頂ける身体では無いと思いますが、精一杯努力を…………っ!」
「そんな心配は無用…………御託を並べた所で何になる…………本音でぶつかれば見えなかった事も感じなかった感情も分かるものだ」

 頭の中で難しく考えているサブリナに、アステラは抱き締めて緊張を解そうとする。
 早く抱き合いたいのだろう。
 アステラの心拍が早く、サブリナが直に触れる肌から伝わっていた。

 ---アステラ様も緊張なさってる?ご経験豊かな方なのに………

 それだけサブリナが好きだったのだが、サブリナには分からない事。
 でも、それが何故か安心し心地良いと思えた。
 その瞬間、サブリナの視界はもう天井とアステラがサブリナを見下ろす顔しか見えなくなっていた。

「っ!」

 寝台の中央で押し倒され、柔らかな微笑みのアステラが、サブリナの頬を掠める様に、熱い息とともに囁く。

「今は俺の事だけ考えろ。俺だけを見ていればいい」
「っん!」

 耳朶に甘噛みされ、ぴちゃ、とアステラの舌が這うと、もう片側の耳朶を指で弄ばれたサブリナ。
 こんなにも異性を近くに感じて、初めてされる愛撫に翻弄される。
 腰には硬くなった物も当たり、サブリナに欲情しているアステラに身を任せてみよう、とサブリナはアステラの背に腕を回した。
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