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しおりを挟む「まぁ……分からないでもないが……無理、と思ったら上手くは行かないよな」
「一生ですもの。レイノルズ殿下と契らなくて本当に良かったですわ」
「うん、それには感謝だ。俺が初めての男になれる」
「…………もう、退室致しますわね」
再びアステラに口説かれそうになった事を察し、サブリナは椅子から立ち上がった。
身体の触れ合いは無くとも、雰囲気で口説かれるのを察する程、サブリナも鈍くはない。
「あっ!」
サブリナが立ったものだから、それを引き止めたくて、アステラも立ち上がると、サブリナの手を取ろうとした。
「きゃっ!」
しかし、アステラが足を滑らして、前のめりになり、2人の間にあるテーブルにアステラがうつ伏せになった拍子に、サブリナを椅子の上に押し倒してしまった。
そしてそれが調度、サブリナの胸にアステラの顔が埋まる。
「っ!」
「あ、アステラ陛下………」
「……………」
「あ、あの………ど、退いて下さいませ………」
アステラは無言だ。
「アステラ陛下!」
「……………」
「っ!」
それどころか、アステラはサブリナの背に腕を回し入れ、抱き締めていた。
「ん~………気持ち良い………これぞ、怪我の功名か?」
「っ!………あっあ、ん……」
アステラに埋められた顔を、胸に頬擦りされて、サブリナの胸の谷間にザラっとした舌の感触を感じ、思わず声を挙げた。
「…………良い声だ……もっと聞きたい………」
「だ、駄目です!お放し下さい!」
「口説かせてくれ…………身体で………」
「ほ、本当………に………駄目………んっ……」
「……………サブリナ………キスしていいか?」
「っ!」
熱が篭った目がサブリナを見つめ、谷間に触れるアステラの舌が唾液を纏い、ドレスの中へと垂れて行く。その唾液も熱がある様に、サブリナの身体を熱くした。
「答えないのは、良いと判断するぞ?」
「……………だ、だ………………」
「……………拒否は受け取らない」
サブリナの顔の前に、アステラの顔が上がって来て見つめられ、言葉が出なかった。
目線が外せず、身体も開放されず、力強い男らしい腕の中で、こんなにも異性を近くに感じた事も無かったサブリナに更なる火照りを促していた。
返事を駄目だと言うのは、アステラは許さないと言うならば、キスを受けるという事しか選択肢を与えてくれないという事だ。
逃してくれないアステラはサブリナの唇を塞ごうと息が掛かって来る。
「…………ま……って………」
「おや、お邪魔でしたね」
「「!」」
2人の世界に居たサブリナとアステラに、突如横入りした声。
慌てふためき身体は離れたが、サブリナは顔が真っ赤で、アステラは直ぐに不機嫌な顔をした。
「ガネーシャ!本当に邪魔しやがって!」
「同意では無さ気でしたから。サブリナ様をガーヴィン様がお探しだそうですよ?」
「…………ほ、本当ですか?い、行かないと………失礼致しますわね、アステラ陛下」
サブリナは早くこの場から離れたくて、直ぐに執務室を出て行った。
「…………ガネーシャ…………お前………応援する気無いのか!」
「ありますとも」
「ならば、何故邪魔をした!あと僅かの距離でキス出来たんだぞ!」
「純情ですねぇ、陛下…………側室が沢山居られる方とは思えませんよ」
アステラは昂ぶっていたのだろう、局部を隠すかの様に、服を整えていた。
「側室の部屋へ行かれます?」
「…………夜でいい………何だ?」
「仕事をお持ちしただけですよ」
「早く渡せ!」
奪う様にガネーシャから仕事を受け取り、机の上に投げ落とすアステラ。
もう少しでキスが出来たのに、本当に邪魔された事に苛立っていた。
「同室をお使いでは?」
「使ってるが、それが如何した」
「抱かれてるのでしょう?」
「……………それが出来たのなら、こんなに溜めるかよ。仕事が終われば側室を呼び、抜いてから部屋に戻ってる」
「……………サブリナ様は未通では無いでしょうに」
「……………」
「え?まさか………未通?…………今からでも部屋分けさせますか?」
サブリナが白い結婚だったのをガネーシャに知られてしまった。
知られた所で、何かある訳でもない。
「余程、仲が悪かったんですね、あちらの王太子とは」
「一方的に、サブリナは嫌われていたらしいからな………お前も見るか?報告書」
「良いのですか?」
「それで、サブリナが俺に落ちる対策がお前から出れば、特別手当を考えてやってもいい」
「…………読むの止めます」
「何でだよ!」
「私に読ませて、対王太子対策も練ろうとしてるんでしょ?」
「バレたか」
「サブリナ様が冷遇されてきた内容は、私は読まない方が良いと思いますよ。サブリナ様から私に話されたら別ですが、王太子の今の情報だけで私は腹いっぱいなので。それに、人の恋愛に第三者が介入すると碌な事になりませんからね」
「…………それなら邪魔すんな!」
「面白かったので」
「しっかり介入してるじゃないか」
「とんでもない、仕事をせずにサブリナ様と始めるのでは、と心配しましたので、注意をしたのです。まぁ、それがお2人がまだだとは驚きましたが」
ガネーシャの驚きは当然の事だろう。
サブリナが既婚者で、一国の王太子の妃。後継者が居ないのは周知の事だが、子供が出来ないのは何方かの身体の異常が問題なのか、と思う者も居た筈で、それが問題に挙がっていなかったのかも定かではないにしても、そもそもその行為をしていないのだから、身体の異常の心配は二の次だ。
その事に対しては、サブリナをアステラの妃にする事に、今は何も心配は無かった。
子供が出来ない、とは確定していないのだから。
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