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 北の大地にハーヴェイとロブ達が防寒対策を終えて再び到着した。
 北風が突風として突如変わるこの地は、人が寄り付かない事でも知られている。
 人も寄り付かないので、魔獣も気性が荒く、危険の地域だ。

「いいか!捜索は常に危険を伴う!気温もそうだが、この寒さに順応して生きている魔獣も多い!心して掛かれ!」
「団長!ハーヴェイ団長!」
「何だよ、五月蝿いな!」

 ロブがハーヴェイの言葉も聞かずに北の大地にある雪山を指刺した。

「防御壁が消えたぞ!」
「え?」
「……………魔力残渣がある!山の中に居るかも!」

 魔法防御壁が消えた理由はハーヴェイ達には分からない。
 掛けたデュークが解除したとは思えないのだ。
 突然の出来事に、慌て蓋めいてしまう騎士達。

「行くぞ!この寒さだ!凍死しかねない!」
「それより魔獣に襲われる方が先だろ!」
「行くぞ!」

 集められた騎士達により、士気が上がる。
 すると、再び突飛が吹き、バサバサと羽音が響いた。

「グリード様!」
「グリード様だ!」

 グリードも騎士達に気が付き、竜の姿のグリードは旋回すると、山へ降りて行った。
 防御壁が無くなった事に、気付いている様で、ハーヴェイ達もグリードを追う。
 飛ぶ竜に追いつけないのが分かるので、山の麓でグリードは待つ事にした。

「グリード様、何故急に防御壁が無くなったのでしょう」
「……………考えたくない事が起きたかもしれない」
「考えたくない事ですか?」
「デュークは魔法が使えない状況にしていた……」
「…………まさか……」
「…………」

 魔法は、その掛けた者が解除するか、意識が無くなった時、効力が消える。
 デュークが魔法を使えない状況なのに、効力が消えたという事は、デュークの身に何かあったとしか考えられなかった。
 グリードが重い空気を醸し出し、ハーヴェイも何と言葉を掛けて良いのか分からない。
 グリードの深い溜息が白い息となり消えた。

「今は……リリの安否だ」
「はい!」

 グリードが進む方向へと進む騎士達。
 洞窟付近には魔獣達も集まりつつあり、洞窟に入らなかった騎士達が戦っていて、雪が薄っすらと積もる地面には赤く染まっていく。

「どれだけ集まって来やがる!」
「俺に聞くな!」
「おい!そっちに行くぞ!」
「洞窟に入れるな!」

 洞窟の入り口は広く、隙あらば入ろうとする魔獣達に防戦一方だ。
 洞窟には既に中に入った魔獣も居るかもしれず、油断は出来ない。

「くっ!湧き出ている様だな」
「本当に………」

 グリードの背後、洞窟入り口付近の方からは騎士達の戦っている様子が聞こえ始めた。

「リリは大丈夫なのか?入り口が此処で合ってるのか?」
「グリード様、貴方に俺達ついてきているんですからね。感じたから此処から入ったんじゃないんですか?」
「知らん………」
「え?分からず進んでたんですか?」
「デュークの魔力残渣を追っているだけだ。火を使ったからだろう………相変わらずリリの気配は感じない」

 グリードはデュークの使った魔法残渣を頼りに来ただけで、未だにリリアーナの魔力は感じないらしい。

「ロブは如何なんだ?」
「…………グリード様と一緒だけど……足元見て下さい!」
「足元?…………足跡か!暗くて分からなかった!靴底の模様が凹んでいるぞ!」
「足元を照らしながら行くぞ!」

 奥へ奥へ、と進むが暗闇に加えて、迷路の様に入り組んだ洞窟に、不安も過ぎる。

「赤竜騎士団は此処は詳しいのか?」
「い、いえ………此処迄奥には入った事はありませんでした。魔獣の気配も感じなかったのもありますが、魔獣はこの奥を嫌っている様な気がする、とデューク様も仰って………」
「魔獣が嫌う場所だと?」
「一体何があるんですかね」
「行かないと分からないな」

 細い洞窟から少し広まった場所に出たグリード達。
 
「っ!」

 グリードが足を踏み入れると、白い物を踏み付けた。
 パキッ、と音が鳴り、足元を照らしたハーヴェイもギョッとした顔をする。

「骨~!骨踏みましたよ!」
「誰?誰か居るの?助けて!私帰らなきゃ!」
「リリ!リリが居るのか!」
「グリード?………グリード!」

 その更に奥からリアーナが居ると分かる。
 しかし、暗すぎて声からの方向でしか分からない。

「明かりをもっと照らせ!」

 騎士達が魔法や松明で火を灯し、洞窟を明るくした。

「な、何だ!コレ!」
「白骨した竜の骨だ!」
「…………な……如何して……過去の竜の王………なのか?………知らないぞ………私は……此処に骨で残っているのは……」
「姉上!おい!羽織る物をありったけ!治癒魔法のある者!早く治療を!」
「っ!…………リリ!すまない!」
「…………グリード……ハーヴェイ……良かった……生きて会えた……」

 リリアーナは竜の骨が所々折れて刺さり、出血が凄かった。
 何故この洞窟に竜が眠り白骨したのかは、グリードにも分からない。
 だが、竜の魔力が骨から感じていた。
 それが、魔獣達が寄り付かない証拠だろう。

「グリード………デューク様が……私を……」
「分かっている……それよりこの魔具を如何にかしなければ………これを外さねば、リリの魔力が使えない」
「グリード様、とりあえずこのまま此処を出ましょう………此処は暗いですし、寒いですから」
「そうだな………場所は分かったし、今度この場所を調べる事にして、転移魔法で帰ろう。洞窟外に居る者達も、長居は無用だ。キリを付けて帰還命令を」
「分かりました」

 グリードはリリアーナを抱き上げ、これ以上この骨を壊さぬ様に、転移魔法で帰還した。

「あ!また俺達置いて帰ったな!グリード様~!ズルいだろ!」

 転移魔法がグリードより時間が掛かるハーヴェイは、こんな寒い所から早く出たいのに、ハーヴェイに言われたくないグリードはサッサとリリアーナを連れて勝手に帰って行った。
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