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しおりを挟む「父上、デュークは話しましたか?」
デュークが1人の世界に入ってしまった頃、グリードがサーシャから話を聞いた後、牢獄へと入って来た。
「…………グリード……お前は気が付いていたか?デュークがリアナに好意を持っていた事………」
「…………えぇ、まぁ……兄弟ですし、リアナに向ける目は見逃しません」
「…………末恐ろしいな、お前の執着心は……」
デュークに話を聞ける様子でも無いので、見守って待つ事にしたいが、いつまでも待つ気は無い。
「今、リリの捜索に入りました。魔力を感知出来ない場所を重点的に探させています」
「ほぉ…………逆の観点からか、考えたな」
「えぇ、私も盲点でした。リリの育った村の出身者が騎士になりまして、彼の魔力感知能力が優れているんです。その彼の案で…………今、ハーヴェイと北の大地に入った、と通信が………」
「っ!……………北の……大地………」
「デューク?…………其処か!」
「あは…………ははははっ!場所が分かった所で、如何やって探す?彼処の洞窟は迷路だ!広範囲に俺の防御壁に罠も仕掛けてある!あの女はあの洞窟の中で、凍死か餓死になる!」
北の大地とデュークが言ったので、デュークが半狂乱で高笑い、リリアーナ救出は無理だと叫んだ。
「俺は部下達の力を信じているぞ、デューク………例え、彼等がお前より魔力が弱くとも、考える力もある…………所でデューク、変装が出来る魔具を何処で入手した?他にも噂が出ていた許可が出ていない入手困難な魔具をお前は持っているな?」
「…………それが如何した……持っていてもそれがどういった形状かも知らないくせに……」
「あぁ………分からないな」
魔具の形状が分からない以上、探し出すのは困難で、デュークが偽物を出したら信じてしまうかもしれない。
「父上………俺は如何なります?」
「デューク!私の質問が先だ!」
しかし、それはデュークは答えてはくれそうにない。
自分の今後の身を案じるのならば、馬鹿な事をやらなければ良かった筈だ。
「デューク………今のお前の立場、信頼は地に落ちたと思って良い………極刑か否か………否だとしても、王籍に残す事はあり得ぬだろう」
「…………極刑は嫌ですね……」
「父上、今その様な話ではなくて……」
「グリード、デュークが話すか話さないかを見極める事も大事だぞ?」
「…………っ!」
情報は駆け引き。
デュークが話す様に持って行かなければ、デュークは話さない、と父だから分かる息子の性格。
グリードは、その方法をデュークに効くか等分からなかった。
「…………兄上ならリリアーナの気配を察知出来るだろ?」
「今は出来ないじゃないか!防御壁の中に囲っていても普段なら分かる!だからそのお前が使った魔具の出処を話せ!」
「贈られて来た………『役に立てろ』と短い文章と共に………差出人は偽名だと思う………あとは知らん」
逃げ場はもう無いデューク。
言わない選択肢もあったが、場所を知られたらリリアーナの証言で、デュークは後が無い。
だからなのか、魔具の出処を話し始めた。
「贈られて来た?………検印されなければ城内に持ち込めないのにか?」
「知らないものは知らない………俺がサーシャを利用したのは認める……俺には後援する貴族も居ないが、リリアーナ排除を目論む奴らと手を組むにも厳選してた家の奴の中からじゃないか、とは思ってる」
「反対派と企んでたのか!私とリリの排除を!」
「…………反対派は兄上を排除しようと考えてない………分かるだろ!リリアーナが番い候補から落ちた娘達を番いにさせたかったか!だから虐められてたんじゃないか!リリアーナが!」
利害一致なのはリリアーナの排除。
デュークはグリードの排除を目論むが、反対派は違う。
リリアーナさえ居なければいい。
「誰だ!首謀者は!お前に魔具を贈り付けたのは!」
「だから分からないって言ってるだろ!」
「2人共、冷静になりなさい………魔具の出処はドラクロワ公爵が調べている案件だ。尻尾を捕まえたとしても切り離せる輩なのはデュークで明らかだ。デュークは利用された、と見ても良いだろう……」
「………父上、私はリリ救出に向かいます」
大事な弟迄、利用されてはグリードも黙って見ているつもりもない。
今迄、デュークの闇の部分を放置した自分にも責任がある、とばかりに反対派を根絶やしにする覚悟を決めたグリード。
「気を付けて行きなさい」
「はい」
グリードは牢獄の警備を厳重にし、散り散りに捜索していた騎士達を北の大地に集結させた。
そして、1人牢獄の鉄柵内で、自分の愚かさを見返していたデュークに、1人の面会人が入って来た。
「…………もう少し、骨のある男と思っていましたのに、非常に残念ですな……デューク様」
「…………お前は………っ!」
面会人は警備を掻い潜ったのか、それとも普通に面会を申し出て侵入可能となったのか、デュークの目線からは確認が取れなかったが、鉄柵を開けて迄入って来ると、刃物をデュークに根本迄差し込んだ。
唸り声を上げさせない様に、デュークの口迄押さえて。
「…………ぐっぅっっ……サ……イ……」
「魔法が使えませんからね……初歩的に、かつ人道的に始末させて頂きますよ………ここ迄の活躍は見事でしたな、デューク様………後はお任せ下さい…………貴方に生きていて貰うと今後も邪魔になりますからな…………くっ!」
デュークは、面会人の名を残せぬまま、望んだ生を全う出来ず息絶えた。
「呼ばないで頂きたい………私は此処に居てはならないのですからな………あぁ、もう聞こえてませんね………あの世で直ぐにリリアーナを贈って差し上げますよ」
この言葉は誰も耳に入らない。
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