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 ぴちょん、ぴちょん、と何処からの音を何度聞いたか分からなくなったリリアーナ。
 洞窟なのだけは分かるが、姿勢も変えられず、暗い為に身動きしない方が良いのだろうが、地面に付いている肌が痛みとねとっとしたベタ付きも感じ、気持ち悪さもジワジワと感じる。

 ---寒い…………出血もしてる………頭も打ってるみたいだし、髪が頭皮にまとわりついてる、という事は頭からも出血しているんだわ……魔法さえ使えれば………

 リリアーナの聖魔法さえ使えれば、脱出出来なくても生きながらえるのに、全身を魔法抑制の縄が阻む。
 どうやってこの場とこの状態を知らせるかより、リリアーナの体力の方が問題かもしれない。
 見付けて貰えなかったら、此処で生命を落とすだろう。
 そう考えただけでも涙は止まらなかった。
 デュークが拘束されたのもリリアーナは知らずに、ハーヴェイ指揮でデュークが率いていた赤竜騎士団も使い、リリアーナ捜索の会議が開かれていた。

「魔力感知出来る者は、各班に分かれて貰う。街は青竜、境界や魔獣が出る地域は赤竜と銀竜を配備だ」
「ハーヴェイ団長、何故銀竜も赤竜の警備範囲を回るんです?」
「デューク様は赤竜騎士団の団長だからだ……地の利を活かし、魔獣生息地にも詳しい………魔力感知しても見付けられないのはデューク様により防御壁が作られた空間があるからだ。王城内は今日の警護予定者の銀竜の残った騎士でこのまま捜索させ、残りは赤竜の各班と手分けして、散り散りに捜索」
「…………なぁ、団長……」
「何だよ、ロブ。忙しいんだ、手短にな」

 会議と言っても振り分ける程度のものしか出来ないのに、休暇返上したロブがハーヴェイに意見を言う様だった。

「魔力感知出来ないんだろ?それは魔力を使えない状況って事なんだから、防御壁を使われてる場所を探しゃ良いんじゃね?」
「それが出来れば苦労はしないだろ!」
「いや、だからさ………人間は誰しも動けば魔力を放出してんだって話だよ」
「…………え?そ、そうなのか?」

 魔力感知が誰しも出来る訳ではない。
 ごく稀に、人の魔力を測定出来る人間が居る。
 その1人がロブだ。

「え?知らない?………まぁ、俺もそんなに気にした事無かったんだけど、魔力鍛錬ではっきり分かる様になった、っていうか………魔力感知出来る奴だって、そうだよな?皆魔力の動き分かるんだから」

 と、ロブが言うと頷く者も居る。

「じゃ、じゃあ………広範囲から小範囲、些細な魔力が動いてない場所が分かるって言うんだな?」
「広範囲って………そこ迄、俺上手くねぇけど、1人で場所特定するのは無理だぜ?それに其処の近くに行かないと自信ねぇし」
「方角は分かるか?」
「あぁ、それは分かる………距離迄ははっきりとは分からねぇ」
「地図お前は読めるか?」
「地図?俺それは分からねぇって!」

 ロブは辺境の領地の片隅の村の出身。
 教育を受けられても、文字の読み書き程度だ。
 首都に来る迄は領地から出た事も無い。

「…………使えそうで使えない奴だなぁ………」
「悪かったな!団長」
「まぁ、良い………方角を合わせて地図を開けば、方角は分かる………各班、感知能力のある騎士から、方角を合わせて、魔力を感じない場所を徹底的に探せ!防御壁が施されている場所であれば、壊して構わない!もし、デューク様と無関係だと思われたら、壊すか如何かは確認を入れろ」

 捜索は虱潰しの方法でしかなく、広い国内で刻一刻とリリアーナの危機度が増し急がれた。
 数十人体制で散り散りになった所で、ハーヴェイは捜索手順をグリードに知らせ、ハーヴェイもロブと数人の騎士達と一緒に捜索にあたった。

「本当、凄ぇな………転移魔法って……俺も出来るかな?」
「ロブ!遊びに来たんじゃないんだぞ!姉上を探せ!」

 ハーヴェイと共にロブが到着したのはドラヴァール国の北の大地。
 もう直ぐ冬になる季節で、雪も山頂に積もっていた。

「こんな所に来ても、魔力なんて感じる訳ないだろ」
「団長、あのな………魔獣からも魔力発してんだぜ?」

 寒くなる地域に、防寒対策もしていなかった事に後悔しながら、ハーヴェイは腕を抱き締め寒そうにしていた。
 転移魔法先にロブが示した場所はそんな場所なのに、ロブは地図も読めないのだから、どんな場所も分からないから、寒い場所なのだとも知りもしない。

「団長!防寒対策してからまた来ましょう!」
「いや、こんな寒い場所に、リリアーナ様は居ませんよ!きっと!」

 誰も来たがらなかった北の大地だったのだ。
 それでも、ロブは魔力を感じない場所のこの地を示したから来たのだが、皆寒さで振るえてしまった。

「捜索はする………もし、この辺りに姉上が居たら、姉上の生命が心配でならない……防寒対策をしてもう一度来るぞ!」
「…………多分、此処で合ってると思うぜ、団長………あのデュークって野郎の魔力残渣が半端ねぇよ………魔獣達は怖くて此処から離れてるし、警戒されて魔獣達に俺達囲まれてる」
「何だと!」
「戦えませんよ!俺達寒くて………」
「ぼ、防寒着来て直ぐに戻れば良い!転移魔法作れ!」

 ロブも寒さを感じてはいたが、他の弱音を吐いた騎士とは違い、デュークの魔力の残渣を読み取っていた。
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