魔力を封印された女の解呪はまぐわいでした※新婚編※【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 ドレスをブライトに引き裂かれたリリアーナは、ブライトに警戒心を持ってもみなかったので、グリードの掛けていた防御魔法を出す事が出来なかった。
 そして、リリアーナの護衛騎士を配備するに辺り、何故デュークが入り込んでいたのかさえも分からないままで、リリアーナは冷静にはなれなかった。

「ブライト!止めなさい!」
「っ………リリアーナ………様っ…………くっ!」
「ブライト!」

 かろうじて、ブライトは理性があったのだろうか、腰に装備していた剣を足に斬りつけて倒れた。

「ちっ!役立たない奴だな………仕方無い………」
「ブライト!今治療するわ!」

 リリアーナはまだデュークと距離はあった。
 それでも逃げた方が良いに決まっていて、逃げる行動を取らねばならないリリアーナだったが、自分1人も守れないリリアーナには護衛が必要だった。
 ブライトを先ず優先に治療を、と思い処置をしようとしていた時、リリアーナはデュークに髪を引っ張られ、床に投げ付けられる様な衝撃が起き、頭を床に打ち付けてしまった。

「きゃぁぁっ…………ゔっ………う……」
「リ、リリアーナ………様………クソッ!………デューク様………な、何をす……る………」

 部屋の中ではブライトしか意識の無い状態で、それでもやっと理性を保てる様子の身体で、デュークを止めに入る事は難しいだろうと思われる。

「まさか、お前が口にするとは予定が狂ったが…………グリードに伝えておけ………『お前は王の器じゃない』とな………」

 遠退く意識の中で、リリアーナはデュークの言葉を聞いた。
 ふわふわと揺れる身体だと感じた時、もうリリアーナはドラヴァール城の中から忽然と姿が消えたのである。

「……………リリ?………リリが居ない?」

 リリアーナの気配が消えた事に、グリードは直ぐに気が付いた。

「如何なさいました?グリード様」
「…………ゴドム伯爵、今日はサーシャ嬢がリリアーナと会っている予定だった筈だ………サーシャ嬢がリリアーナを城外に連れ出してはいまいな?」
「まさか………そんな事は無いとは思いますが………娘は菓子や茶葉を自分で用意し、リリアーナ様と会うのだ、と申していただけです」
「では、何故城内にリリの気配が無い!」
「そ、そんな事を仰っられても………直ぐに確認してまいります!」
 
 執務室でグリードはゴドム伯爵と仕事をしていた。
 リリアーナはサーシャとお茶会の真っ最中の筈で、城内に居る事も一瞬前迄分かっていた。
 それは、グリードがリリアーナに施している、番いの刻印がグリードと繋がっているからだ。
 長距離でなければ、グリードの魔力でリリアーナの気配は感じ取れ、その距離はドラヴァール国内何処でも分かる程なのに、その気配がぷっつりと消えれば、グリードも慌てる。

「私は茶会の行われている部屋に行く!ハーヴェイ達、銀竜騎士団を招集させろ!」
「は、はい!」

 仕事を放り投げ、執務室から急ぎ向かうグリード。

「リリ!……………っ!………防御壁?………やはり、この部屋からリリの気配が消えている………この壁を解除するには、扉も壊さねばならなさそうだ………」

 リリアーナが居ない部屋なのに、扉を壊す事に躊躇いは無いが、お茶会の間の護衛騎士は5人は付けていて、何故その騎士達がリリアーナを守れなかったのか、中で何があったのか、グリードは中の状況が分からないのに、被害を大きくしかねない破壊行為は考える必要があった。

「グリード様!」
「ハーヴェイ!隣の部屋からベランダに乗り移り、中の状況を調べろ…………扉の破壊は簡単だが、中に今誰が居るか分からない………ただ、言える事は、この中にはリリが居ない、という事だ」
「姉上が居ないなら、ぶち壊しましょう!」
「そうしたいが、扉付近に誰か居るかも分からないんだぞ!ゴドム伯爵の娘も居たら如何する!」
「……………はぁ………はぁっ………」

 ハーヴェイが銀竜騎士団の騎士達を引き連れ、娘可愛さにゴドム伯爵さえも駆け付けていたのだ。

「む、娘は………サーシャは………」
「防御壁を壊すのに、部屋を壊しかねないのだ、ゴドム伯爵」
「何ですと…………サーシャ!サーシャ!」

 バチバチと静電気が部屋を囲む様に魔法展開をされていて、扉だけ壊すだけなのに、部屋ごと破壊してしまう様な被害が出そうな防御壁だったのだ。
 グリードも、この防御壁の破壊には細心の注意が必要だった。

「っく…………グリード様!壊せないのですか!娘は…………中で一体何が………」
「グリード様、両隣から入り、ベランダから中を確認させます………ゴドム伯爵も、暫くお待ち下さい」
「…………頼む、ハーヴェイ」

 グリードもただ黙って見ている訳ではない。
 リリアーナの痕跡を辿り、国中に気配を探りを入れていた。

「グリード様!何があったのです!」
「……………あぁ、ドラクロワ公爵……リリが連れ去られた様だ………気配は探っているが、見つからない…………今、両隣の部屋からこの部屋のベランダに乗り移り、中を確認させている」

 騒ぎを聞き付けた、リリアーナとハーヴェイの父、ドラクロワ公爵も仕事を投げ出し、グリードの傍にやって来ていた。

「グリード様………気配を探れない、という事は、魔具を使われている可能性があるでしょう………とりあえず、部屋の中に入る方法を探さねばなりません」
「そんな魔具があるなんて、聞いた事が無いぞ?ドラクロワ公爵」
「…………私も、耳に入れたばかりで実在するかは確認取れてはおりません………魔力制御の役割のある魔具の強化で出来た物かもしれません」
「…………それは、何処の貴族が関わっているかは………」
「…………調べもまだ付いておりません……申し訳ございません………」
「いや…………引き続き調べさせてくれれば良い」

 魔力気配が消せる魔具があるのなら、グリードもリリアーナの魔力を感じる事は出来ない。
 物も見た事が無い以上、如何する事も出来なかった。
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