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しおりを挟むリリアーナの体力は翌日には回復し、城の生活を早く慣れる為、朝からグリードの執務の手伝いをしている。
主な書類整理や事務処理ぐらいしかまだ出来はしないが、グリードが助かると言うので、リリアーナも喜んで手伝っていた。
「グリード、ゴドム伯爵に渡す書類も纏めてあるわ」
「あぁ…………夕方には取りに来るだろう」
「他に手伝う事は無い?」
「今は無いな………そういえば、后教育の復習も行うのだろう?」
「えぇ、それなんだけど宰相が今、日程を組んでくれているの………教師も厳選中らしいわ。教師の都合もある事だし、その間私はグリードやお后様の仕事を手伝うつもりよ………でも、薬師としても常駐医師に助力願いたい、と言われてるから、忙しくなりそうなの。后教育が始まる前に、手伝える事は手伝うわね」
書類をグリードに渡すべく、リリアーナはグリードが指示した場所に置くと、グリードはリリアーナを手招きし、膝上に座らせた。
「…………はぁ……リリが仕事をするのも勉強するのも構わないが、身体だけは気を付けてくれよ?体調を崩さない様にな」
「分かってるわ、無理はしない」
見つめ合うと自然にキスを交わすリリアーナとグリード。
執務室なので、不謹慎な事は避けたいが、グリードからのキスは止まらなかった。
「んっ!………んんっ!」
---グリード!これ以上は駄目っ!
身体を押し返そうとするが、ビクともしないのが、グリードの身体だ。
【悪いが止まれないな………リリが欲しい……】
「っ!」
「駄目ったら!夜迄待たないなら、夜は別の部屋で寝るわよ!」
差し込まれたグリードの舌をカリッと咬んだリリアーナ。
痛みでグリードはたじろぎ唇を放すが、身体は抱き締めたままだ。
「それは嫌だな………」
「ごめんなさい、噛んで………大丈夫?血は出てない?」
思い切り噛んではいないので、出血はしていない様だが、グリードが放してくれたので、リリアーナはグリードの頬を両手で挟んだ。
「大丈夫だ………噛むなんて酷いじゃないか、リリ」
「そういう貴方だって、私の身体に痕を残すじゃないの………見えるから止めて、てお願いしてるのに」
「一緒にするな、キスマークと今のは別だ」
「屁理屈だわ、それ…………もう下ろして、グリード」
「嫌だね」
「……………なっ!不謹慎だと思わないの?此処は貴方の仕事する場所よ!」
「そう…………私の執務室だ。だから、私が此処で何をしようとも許される場所だ」
立場上はそうかもしれないが、それは書面上の国政に関わる事のみの事で、性的な事を許される場所ではない。
「執務室は、まぐわう場所では無いわ!」
「場所が此処で無いなら、今からでも良いのか?」
「っ!…………そ、それも駄目!今は仕事中でしょ!」
「……………急ぎの仕事は今は無い………寝室なら良いのなら、執務室の横にベッドがあるぞ?狭いがな」
「な、何でベッドが執務室の横にあるのよ!」
「私の仮眠用のベッドだ。部屋に眠りに行く暇も無い程忙しい時に使っている」
転移魔法を使えるグリードなのに、仮眠用のベッド等必要なのだろうか。
「転移魔法使って部屋に戻れば良いのでは?」
「私的な空間に仕事を持ち込むな、と父から教えられている。仮眠室にも書類を持ち込み、寝落ちしたりするのでな。その代わり、不審な者がこの執務室に入る事への防御は欠かしてはいない」
仮眠用というだけあり、寝転がりながら書類や資料を読むという事らしい。
仕事と私的はきっちり分けたいというグリードは、リリアーナとの共有スペースに仕事を持ち込んではいなかった事に、リリアーナは気が付いた。
「そうだったのね………それなら尚更私は仮眠室には入れないわ………というか無理、寧ろ嫌」
「何故だ?」
「そんなに拘っていて、其処でするなんて、自分の拘りを捨てる事になるわよ?」
「…………リリと………愛し合うのに場所等、拘っていられるか!」
「きゃぁぁぁっ!」
「昨夜は結局、一度しかまぐわえてない!リリが足りん!」
リリアーナが悲鳴を挙げた時、グリードは椅子からリリアーナを抱き上げながら立ち上がり、仮眠室へと行こうとした時だった。
『失礼致します、グリード様。リリアーナ様の悲鳴が聞こえましたが、何かありましたでしょうか?』
廊下からノックと共に、ブライトの心配する声。
「虫に驚いただけの様だ。大事無い」
『そうでしたか………今、面会の要望でゴドム伯爵が来られてますが、入室して頂いても宜しいですか?』
【ブライト!確信犯か!アイツは!】
執務室からの声に聞く耳を立てていたのか、と思える程のタイミングの良さで、ブライトの声とゴドム伯爵の面会希望。
グリードはリリアーナを下ろし、服の皺を伸ばした。
「通せ」
「……………プッ……」
「リリ………今夜は、昨夜分上乗せだからな」
「……………え……」
この場を逃げれた、とリリアーナは笑ったが、それにグリードは癪に触った様だった。
その夜、グリードの手により、リリアーナは逃げる事も休む事も出来ぬまま、朝迄抱き潰される事となる。
「失礼致します、グリード様、リリアーナ様」
「丁度良かった。完了分も此処に纏めておいた。持って行って欲しい」
「おぉ………こんなにも……リリアーナ様が手伝われた分ですな?仕事が早いですな………私から追加分と………此方には、招待状や謁見申し込み書状が届いております。特に、リリアーナ様宛ではありますが」
「え?私にですか?」
「リリアーナ様は次期后なのですから、懇意にしたい夫人や令嬢達からでしょう。申し訳ありませんが、一度中身は確認の為に、開封しております事をご了承下さい」
城外から第三者の手で持ち込まれた物は、牽引される事が決まっている。
王族宛の物は暗殺の危険性もあるからだった。
「疚しい事が無かったから、ゴドム伯爵が持って来てくれたのでしょう?気にしませんので、これからもお願いします」
「……………御意………我が娘、サーシャからのもありますが、リリアーナ様のご都合が宜しい時に、会ってやって下さい」
「サーシャ様から?…………えぇ、勿論です。彼女は友人ですから」
「では、私は仕事が立て込んでおりますので、失礼致します」
リリアーナが処理した積み上げられた書類を抱え、少し持ちにくそうにしていたゴドム伯爵は、直ぐに退室した。
リリアーナが処理した仕事は、これで終わりでは無い。
更に事務次官やその案件に携わる部署にと仕事が渡って行くのだ。
ゴドム伯爵はグリードの補佐をする仕事をしているので、グリード同様いつも忙しなく働いている。
「大変そうね、ゴドム伯爵も………不備確認もしつつ、振り分けるのよね」
「仕事には誠実な人間で、頼りになるんだ」
娘がグリードの番い候補から落とされた事で、リリアーナには良い思いはしてはいないだろうに、それをリリアーナに見せない様にしてはいても、やはりグリードに見せる表情より堅い。
サーシャもだが、何を考えているか読めない人物ではあった。
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