魔力を封印された女の解呪はまぐわいでした※新婚編※【完結】

Lynx🐈‍⬛

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「申し訳ありません、父上」
「……………」

 グリードがハーヴェイと向かった先は、国王と后の居住スペースのリビングだ。

「ハーヴェイ」
「はっ、陛下」
「其方も難儀だったろう。仕事が残っていないなら、今日は帰りなさい」
「え?………ですが、報告が必要では……」
「訓練場での事は、他の騎士達やデュークにも言音は取っている………相違は無さそうだ。グリードにはリアナの様子を聞きたいだけなのだよ。そもそも、ハーヴェイに責は無い」
「分かりました、下がらせて頂きます」

 ハーヴェイはグリードを待っていたのに、追い出される様に、部屋を出て行った。

「さて………グリード………お前はしていたのだ?」
「リリが起きるのを待っていたのです」
「起きたのか?」
「今は寝ています」
「…………?…………では、眠った、という事か?」
「…………っ!」

 二度寝、という事を察した国王に、他の事も感づかれた様子で聞かれたグリード。

「大分………疲れが溜まっていた様で………」
疲れさせてはおるまい?」
「…………さ、さぁ……」
「グリード………励むのは構わんが、今日の事が事のだけに、事は出来ぬと思うが?」
「っ!」
「リアナが倒れたと聞き、我々も心配し、ドラクロワ公爵も心配していたのだ………魔力を枯渇したのであれば、リアナに治癒魔法を掛けさせ、回復を促す事も出来る………それを起きたからと言って、始めるのは如何かと思うが?」
「ご、ごもっともです………父上……」

 自分の欲望を優先し、貪っていたグリードが悪いので、当然叱られる。

「…………まぁ、リアナが大丈夫なら良い………デュークには暫く謹慎と始末書を促した………訓練中の出来事とはいえ、些かやり過ぎだったからな………しかもリアナの護衛というではないか………デュークに負ける様なら、人選を変えるべきではないか?グリード」
「…………そうですね………再び、デュークがリアナに危害を及ぼす事も考えれば………と思いますが、怪我した騎士は、リリの生活していた村の青年で、リリとは仲が良く、王城生活に不慣れなリリの精神的支え要素として、任せた男なので、降ろすというのも、リリがどう思うか……」
「…………替えよ」
「父上…………分かりました………ロブにはその様に………」
「幾ら精神的支えとなる男だろうと、リアナを危険に晒す可能性がある要素は排除すべきだ……その者が、もっと強くなれば戻してやりなさい」
「はい」

 この事は、グリードにとっても、ロブの力量の無さを知る良い機会とはなったが、リリアーナの心中とはまた別だろう。

「父上、デュークに謹慎と始末書とは甘過ぎではないですか?」
「通例な事ではないか。今迄も過度な怪我を負わせた者は、減俸や謹慎、始末書、と処分は決まっている。訓練中に怪我するな、とは言わないが、実戦さながらな訓練を日々しているのだ。怪我は付き物………しかし、生命の危機になる程の怪我を負わせた場合は、妥当の処分ではある…………負った者がで済まされてしまうのだ………しかし……防御壁の魔法を掛けていて、大怪我とは………その者、大丈夫なのか?入団試験を本当に合格したのか?」
「ロブは、魔法感知能力に長けています。戦闘慣れもしていて、私とハーヴェイは見込み有り、と思った者………デュークが桁外れの強さなのですよ………竜になれずとも、私と然程魔力の差は無いのですから」
「…………不憫な子だ……」

 グリードの弟として産まれてなければ、王位継承権を望まなかったかもしれない。
 そうでなくとも、グリードと大差無い魔力の持ち主なのに、竜の子として産まれず、臣下達からの後援を得られない立場なのだ。
 卑屈になり、グリードと争う事も致し方ないかもしれない。

「ですが、デュークが改心しなければ、私やリリに危害が及びます………デュークに私は殺されやしませんが、リリは別です………人間なのですから」
「だからこそ、護衛は強くなければならない………少々、デュークが不穏な動きをし始めた様だからな」
「不穏な動き、ですか?」
「間者が申すには、リアナ反対派の令嬢達と影で会っていると、な」

 結婚式間近だというのに、未だリアナを認めない、グリードの元番い候補の令嬢達とデュークの関係は、グリードも知らない事だった。

「令嬢達に会って如何するというのです。彼女達を使って、リリを排そうとしても、私と結婚出来る訳ないのに」
と思っているのだろう………竜の血脈の番いの役割を知るのは、竜とその番いのみだ」
「隠している意味は私も分かっていますから、それを公表しようとも思ってもいませんが、デュークだって竜の血脈の子ではありませんか………デュークさえ知っていれば、こんな馬鹿な事を止めさせられるのではないんですか?」
「長年…………議論してきた事だが……それでも竜の血脈を守る為に、竜の子以外は教えられぬ、と何代も決めてきた事なのだ…………過去には、竜の子が産まれた後に産まれた男児は、死を迎えたり、養子に出したりしていた、という………私達はその決断は出来なかった………」

 王位継承を守る為に、苦肉の策を行って来た過去がある。
 情が湧く前に手放す選択肢は、グリードの両親には無かった、との事だ。
 分け隔て無く育てられた、と分かっているグリードにも、リリアーナとの子が2人以上出来たら、同じ選択をするかもしれない、とグリードは頭を抱えるのだった。
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