25 / 43
24
しおりを挟む「申し訳ありません、父上」
「……………」
グリードがハーヴェイと向かった先は、国王と后の居住スペースのリビングだ。
「ハーヴェイ」
「はっ、陛下」
「其方も難儀だったろう。仕事が残っていないなら、今日は帰りなさい」
「え?………ですが、報告が必要では……」
「訓練場での事は、他の騎士達やデュークにも言音は取っている………相違は無さそうだ。グリードにはリアナの様子を聞きたいだけなのだよ。そもそも、ハーヴェイに責は無い」
「分かりました、下がらせて頂きます」
ハーヴェイはグリードを待っていたのに、追い出される様に、部屋を出て行った。
「さて………グリード………お前は何をしていたのだ?」
「リリが起きるのを待っていたのです」
「起きたのか?」
「今は寝ています」
「…………今は?…………では、また眠った、という事か?」
「…………っ!」
二度寝、という事を察した国王に、他の事も感づかれた様子で聞かれたグリード。
「大分………疲れが溜まっていた様で………」
「更に疲れさせてはおるまい?」
「…………さ、さぁ……」
「グリード………励むのは構わんが、今日の事が事のだけに、そんな事は出来ぬと思うが?」
「っ!」
「リアナが倒れたと聞き、我々も心配し、ドラクロワ公爵も心配していたのだ………魔力を枯渇したのであれば、リアナに治癒魔法を掛けさせ、回復を促す事も出来る………それを起きたからと言って、始めるのは如何かと思うが?」
「ご、ごもっともです………父上……」
自分の欲望を優先し、貪っていたグリードが悪いので、当然叱られる。
「…………まぁ、リアナが大丈夫なら良い………デュークには暫く謹慎と始末書を促した………訓練中の出来事とはいえ、些かやり過ぎだったからな………しかもリアナの護衛というではないか………デュークに負ける様なら、人選を変えるべきではないか?グリード」
「…………そうですね………再び、デュークがリアナに危害を及ぼす事も考えれば………と思いますが、怪我した騎士は、リリの生活していた村の青年で、リリとは仲が良く、王城生活に不慣れなリリの精神的支え要素として、任せた男なので、降ろすというのも、リリがどう思うか……」
「…………替えよ」
「父上…………分かりました………ロブにはその様に………」
「幾ら精神的支えとなる男だろうと、リアナを危険に晒す可能性がある要素は排除すべきだ……その者が、もっと強くなれば戻してやりなさい」
「はい」
この事は、グリードにとっても、ロブの力量の無さを知る良い機会とはなったが、リリアーナの心中とはまた別だろう。
「父上、デュークに謹慎と始末書とは甘過ぎではないですか?」
「通例な事ではないか。今迄も過度な怪我を負わせた者は、減俸や謹慎、始末書、と処分は決まっている。訓練中に怪我するな、とは言わないが、実戦さながらな訓練を日々しているのだ。怪我は付き物………しかし、生命の危機になる程の怪我を負わせた場合は、妥当の処分ではある…………負った者が弱いで済まされてしまうのだ………しかし……防御壁の魔法を掛けていて、大怪我とは………その者、大丈夫なのか?入団試験を本当に合格したのか?」
「ロブは、魔法感知能力に長けています。戦闘慣れもしていて、私とハーヴェイは見込み有り、と思った者………デュークが桁外れの強さなのですよ………竜になれずとも、私と然程魔力の差は無いのですから」
「…………不憫な子だ……」
グリードの弟として産まれてなければ、王位継承権を望まなかったかもしれない。
そうでなくとも、グリードと大差無い魔力の持ち主なのに、竜の子として産まれず、臣下達からの後援を得られない立場なのだ。
卑屈になり、グリードと争う事も致し方ないかもしれない。
「ですが、デュークが改心しなければ、私やリリに危害が及びます………デュークに私は殺されやしませんが、リリは別です………人間なのですから」
「だからこそ、護衛は強くなければならない………少々、デュークが不穏な動きをし始めた様だからな」
「不穏な動き、ですか?」
「間者が申すには、リアナ反対派の令嬢達と影で会っていると、な」
結婚式間近だというのに、未だリアナを認めない、グリードの元番い候補の令嬢達とデュークの関係は、グリードも知らない事だった。
「令嬢達に会って如何するというのです。彼女達を使って、リリを排そうとしても、私と結婚出来る訳ないのに」
「出来ると思っているのだろう………竜の血脈の番いの役割を知るのは、竜とその番いのみだ」
「隠している意味は私も分かっていますから、それを公表しようとも思ってもいませんが、デュークだって竜の血脈の子ではありませんか………デュークさえ知っていれば、こんな馬鹿な事を止めさせられるのではないんですか?」
「長年…………議論してきた事だが……それでも竜の血脈を守る為に、竜の子以外は教えられぬ、と何代も決めてきた事なのだ…………過去には、竜の子が産まれた後に産まれた男児は、死を迎えたり、養子に出したりしていた、という………私達はその決断は出来なかった………」
王位継承を守る為に、苦肉の策を行って来た過去がある。
情が湧く前に手放す選択肢は、グリードの両親には無かった、との事だ。
分け隔て無く育てられた、と分かっているグリードにも、リリアーナとの子が2人以上出来たら、同じ選択をするかもしれない、とグリードは頭を抱えるのだった。
5
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041


【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる