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しおりを挟むリリアーナの城での生活は、グリードが起きて準備を始めた事で始まった。
「リリアーナは疲れているから、寝させておいてやって欲しい」
「畏まりました。起床後、入浴して頂き、本日はごゆっくり過ごして頂く旨で宜しいのですね?」
「そうだ………初日はゆっくりして欲しい……これから忙しくなるから………」
「グリード」
侍女との会話で、リリアーナはベッドから起きて、身体を羽織る物が見当たらなかったので、ベッドにある毛布を羽織り、グリードに近付いた。
「リリ!まだ寝てて良いのだぞ?」
「起きるわよ、私も。貴方の妻として居る為には、国政の事を無視する訳にはいかないし、直ぐにとは言わないけど、后としての役割を担って行きたいわ」
「今日ぐらいは、と思ってたんだが………」
「初日から甘やかさないで」
「…………分かった……では、一緒に朝食を先ずは取ろう」
「えぇ」
グリードは既に、身体を流していたのか、香を焚き染めた服に、髪も整えられて準備は出来ていた。
リリアーナは全くそれに気付かずに眠っていたのが悔しい。
素っ裸で、湿った下腹部が恥ずかしさもある。
「これからは、グリードが起きる時間に合わせて起きるから」
「…………いや、今日はちょっと早く起きた、というか………」
「そうなの?」
【朝から美味そうな身体を見せられて、また貪りそうだったからだ………今でもその気怠そうな顔をして!…………っ!………せっかく治めた熱がまた勃って来るじゃないか】
「っ!………そ、そうなのね………分かったわ……それなら私の方でも対処を考えるわね」
どうやら、リリアーナの寝姿で、昂ぶらせた身体のグリードは、貪って仕事に遅れると困るから、無理矢理準備を早く始めた様だった。
---それなら、終わった後私が何か着ておけば良いのよね………なるべく肌が隠れる様にして……
「え!嫌だ!」
「…………思考読まないでよ!何で嫌だって言うの!朝から貴方が卑猥な事考えるから、私もそうならない様に、て思ったからじゃないの!」
「リリの寝顔や寝姿は私の活力剤だからだ!裸で眠っててくれていい………私が朝我慢すればいいだけだ」
「そ、そう………それなら……て私がそれで良いとは思えないから、何か着て寝る事にするわ」
「…………拷問じゃないか、それ」
「何言ってるのよ、着ても着てなくても、拷問だと言ってるのはグリードじゃない」
「ゔっ………」
「私は手早く身体流して来るわね」
裸で眠る姿が欲に駆られて抱きたくなり、その後支障が来たすなら、裸で眠らない様にすれば良いだけなのに、グリードは裸で眠る姿を見たいとは矛盾している。
活力剤とリリアーナがなるのであれば、別の方法で幾らでもリリアーナはなれる筈だ。
それだけ、リリアーナはグリードの事をよく分かっていて、喜ぶ事はまぐわいだけでは無いのも知っている。
【こ、こんな事なら、我慢せずに私が起きた時、起こして迄まぐわえば良かった………】
「…………そうね、仕事を始める時間に間に合わせられるなら、その方が良いんじゃないかしら?」
「っ!リ、リリ!良いのか?」
「今朝はもう無理よ」
「…………そ、そうだな……」
リリアーナには聖魔法が使えるのだから、治癒回復出来るぐらい迄はグリードに付き合える。
何故、グリードは遠慮をしたのかは、リリアーナは気になったが、夫婦になって始まったばかりで、グリードも手探り状態であったのかもしれない。
リリアーナが封印解呪前の夢の中でさえ、グリードは夜明け前には解放してくれていた。
その延長だとも言えるのだろう。
---朝、健康体の男性なら、勃つって聞くし、グリードは人一倍体力も魔力もあるのだもの、我慢させた方が、身体には良く無いわ
リリアーナが風呂場で身体を流しながら、耽っていた時、不意にグリードから思念が送られて来た。
「っ!」
【では、寝起きは遠慮無く、眠っているリリの膣内に挿入るから、明日から頼むよ。眠れなかったらごめん。睡眠不足には気を付けるから】
---思念を送る範囲って何処迄よ!
リリアーナがグリードと使う寝室から、風呂場は一部屋分離れていた。
夫婦共有の居間とダイニングがあるのだが、寝室はその奥にあり、風呂場は洗面室を挟んでいる。
そして、グリードは今は寝室を出て、ダイニングに居る筈だった。
ダイニングには朝食が運ばれて来るので、先に待っていて貰っている。
王太子夫婦の部屋なのだ。
かなり広い居住スペースである。
リリアーナがボヤく思考は無視をされ、返答が無いまま、リリアーナは刻印が見えるデザインのドレスを着て、ダイニングへと向かった。
「お待たせしちゃって、ごめんなさい」
「構わないよ、お腹空いただろ?食べたら、執務室に行こう。ブライドとロブを呼びに行かせてあるから、食事を終えた頃には来ている筈だ」
「グリードにも護衛付いてるのに、私の護衛を呼ぶ必要あるの?」
「部屋を出たら何が起きるか分からないだろ?」
四六時中、リリアーナはグリードと一緒に居る事は無い筈で、一緒にグリードの執務室に行ったとしても、同じ仕事をするとは限らないし、別行動する事の方が多いだろう。
予め、傍に居た方が良い、とのグリードの判断だった。
「起床時間に、就寝時間、食事を取る時間はブライドに伝えてあるから、彼等もそれに合わせて動く」
「そっか」
護衛は守る人の行動範囲を把握して動くので、生活リズムはもう伝えてある、という事だろう。
「ねぇ、グリード」
「何だ?」
「私達の思念って、どれぐらいの範囲を聞けるの?今、無視してたよね」
「…………全部が全部聞ける訳ではないし、範囲も定まってはいない………というか、分からないな」
「分からない?」
「私が思念を感じるのはリリだけだ、と話をしただろう?」
「うん」
「それでも、私という存在を思い浮かべた時、そして距離が近ければ感じ取る思いも強いと思う。遠いとそれが届き難い。今迄も聞こえては来てないと思う………その説明は、顔を合わせて話したくてね」
村でグリードに助けを乞うた時は強く念じていたが、お互いに考えていたから届いた、ともグリードは説明をする。
しかし、それは封印解呪前の事。
思念での会話とも少し違うだろう。
「…………封印解呪して、より強く思念を聞く事が出来てる?」
「恐らくね………父や母と、そんな話をした事は無いが、竜の王の力なのだと思う」
国王と后にもそれが出来る、というのを聞くと、リリアーナは后に聞いて見たくなる。
「お后様にお話聞いてみても良い?」
「構わないんじゃないかな、母はリリになら答えてくれるだろう」
グリードでさえも分からない力だというのだろうか。
リリアーナには不思議な思念の会話で興味深かった。
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