魔力を封印された女の解呪はまぐわいでした※新婚編※【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 グリードはその後、直ぐに国王と后に報告に行った。
 食事する所ではない。
 リリアーナも、まさかデュークが其処迄闇があったとは思いもよらなかった。

 ---兄弟で争う気なの?デューク様だってグリードの魔力の高さは分かってる筈じゃないの………何で無謀な事を………

 デュークは互角だと思っている節があるが、リリアーナは封印解呪でグリードに魔力を返していて、リリアーナでも分かるぐらい、グリードの方が魔力が強くなっている。

「り、リアナ………赤竜の団長……グリード様に勝てねぇだろ」
「…………デューク様、感じ取ってないのかも……多分……」
「リリアーナ様、それよりもう今日はお休みになられた方が………忙しい日でしたし」
「そ、そうね………休むとします………部屋迄護衛をお願い」

 魔力の感知能力は、魔力の流れで感知する者と、使ってない魔力迄感知出来る者も居て、リリアーナとロブは後者だ。
 リリアーナがグリードに魔力を返した事で、グリードは更なる魔力が扱え、制御する事が出来るので、デュークが制御していたグリードの魔力を知らなかったかもしれない。

「お送り致します」

 部屋に戻り、侍女達に入浴も手伝って貰うと、リリアーナは疲れで体力の限界が来ていた。
 
 ---治癒魔法を自分に掛けても、どうせ魔力が消費するから疲労回復した気もしないのよね……今日は何方かと言えば、精神的疲労も重なったのだし………

「リリアーナ様、紅茶をお淹れ致しましょうか?」
「いえ、水で良いわ………あ……そうだわ……解毒薬あるかしら」
「解毒薬、ですか?」
「えぇ、念の為に」

 侍女に水と解毒薬を渡され、リリアーナは飲み込むと、溜息と共に、毒を息で吐き出した。
 その息は透明ではなく、ドス黒い。

「リリアーナ様!まさかお料理に毒が!」
「料理には無かったから大丈夫」
「で、では………」
「心配しないで………私は聖魔法の持ち主だから、浄化出来るし毒は効かないわ」

 ---ちょっと……毒性強い物で、浄化に時間掛かったけど………グリードは大丈夫かしら……あのワイン、グリードも飲んでいたし……デューク様が飲み切ってしまったから、誰も手を着けないとは思うけど……

 そう、デュークが持って来た酒は毒入りだったのだ。
 リリアーナは聖魔法により元々毒は効きにくく、薬師という薬学知識があるので、毒に対する耐性も付けているから、致死量の毒でも多少の疲労感で済んでしまう事の方が多い。
 グリードも、王族として耐性は付けてはいるが、聖魔法を持たないグリードには辛いぐらいの毒だった筈だ。
 デュークも飲んでいたし、デュークも耐性があるのだとは思うが、リリアーナの様に体内で浄化し、処理は出来ないだろう。
 予め、毒を分解する解毒薬を服用していたら話は別だろうが。

 ---何にしても、グリードには思念で飲まないで、と伝えたのに、デューク様程ではなくとも、おかわりして飲んでいたし心配だわ………

 国王と后には自分で伝えなければ、と行ってしまったし、リリアーナは応急処置で浄化を掛けたが、グリードはその腕を離してしまったのだ。

「グリード様がお戻りになられた様です」
「グリードが?」

 リリアーナは寝室に居たが、寝室の隣の居間に入って来たグリードは顔色が悪かった。

「リリ………頼む………ちょっと……浄化を……」
「我慢し過ぎよ!やっぱり効いてるんじゃない!誰か、解毒薬をもう1回持って来て!」
「は、はい!」
「浄化してたのに、グリードが振り払うから……」

 グリードをソファに横たわらせ、リリアーナはグリードの解毒する為、浄化を行い始めた。

「信憑性に欠けるだろ?………父達に、デュークの企みを伝えるのに………私は、デュークが羨ましかったからね………私はで、デュークはに育てられた………竜?……こんなに私は魔力は要らなかったよ………ここ迄魔力が無ければ、リリと別れず2人で過ごせた筈なのに………」
「っ!…………グリード……」

 グリードの辛さはリリアーナも見てきている。
 好きでこの魔力を持っていた訳ではない、と苦悩もリリアーナにはグリードは子供の頃打ち明けてくれていた。
 デュークの様に、他の人間の様に、魔力の暴走する心配をしない身体が欲しい、とグリードは願っていたのだが、リリアーナを番いと認識し、一時は封印しなければならないと知り、自分の運命を受け入れる覚悟も、グリードはしていたのをリリアーナは知っている。

「何で泣く?リリ………あぁ、大分回復したよ、後は解毒薬を飲んでおく……」
「私が回復するわ!」

 起き上がろうとするグリードを、涙が溢れても押さえ付け、グリードの腹の上に涙が落ちた。

「リリ、毒の量は多い!それにリリも飲んだだろ!其方も自分の治癒魔法を使った筈だ!」
「悔しい………何で……憎むの………」
「…………リリ………」

 手を振り払われ、グリードは身体を起こし、リリアーナを抱き締め、リリアーナの肩に頭を埋める。

「デュークも辛い立場なのは………」
「分かってるわ!グリードや陛下、お后様がどんなに愛情を注いでも、デューク様は直ぐに汚されていく………心無い言葉に……だから……グリードも私も邪魔だって………」
「優しいな………リリは………私の為に泣いてくれて………」
「リリアーナ様、解毒薬をお持ち致しました」
「あぁ、貰うよ………リリは先に寝室に行っててくれ………私は酒の匂いを落としてから行く」

 抱き締め合うのを止め、グリードは侍女から解毒薬を受け取ると、直ぐに飲んだ。
 リリアーナの毒の量とは違い、暫くドス黒い呼吸の息をグリードはしている。
 
 ---私は一杯でも多い量だと思ったのに、グリードは続いてる………耐性を付けてない人が飲んだら、一口でも………

 あからさまな宣戦布告に、リリアーナも受けて立たねばならなかった。
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