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しおりを挟む后との面会が終わろうとした頃、グリードが迎えに来た。
「終わった?リリ………終わってないなら終わらせてくれ」
「何です、グリード……母には挨拶も無いのですか?」
「母上、居られたのですね」
后と面会している、という事も知っているグリードなのに、后へ挨拶しないどころか、ほぼ無視だ。
「……………はぁ……リアナの前ではわたくしは空気扱いになるのは変わらなかったわね」
「グリード、お后様に酷いわ」
流石に、居たのか、は無い。
「母上も慣れている。話が終わっているなら、リリの護衛を会わせたくてね」
「護衛?」
先程、監視と護衛の話をしていたので、タイムリーな事だった。
「リアナ、またお話しましょう」
「お后様、時間を作って頂き、ありがとうございました」
「わたくしこそ、楽しい時間をありがとう」
「さ、行こう、リリ」
「え!ち、ちょっと!こ、転ぶ!」
お辞儀をしていたリリアーナに、グリードは腕を取り、引っ張られよろめくと、自然にグリードは支える辺り、リリアーナの事をよく見ている。
「悪かった………足捻ってないか?」
「大丈夫だけど、気を付けてよね!」
「ごめんなさい」
「うん、気を付けてくれるなら許す」
喧嘩になりそうでも、お互い直ぐに謝罪してきたリリアーナとグリードを見て、懐かしく思ったのか、后は目元を押さえていた。
ドラヴァール城には騎士団の訓練施設が併設されていて、リリアーナはグリードに其処に連れて来られた。
中でも、銀、赤、青の騎士団の騎士全員が訓練出来る一番大きな訓練施設だ。
「ハーヴェイ!ハーヴェイは居るか!」
グリードは広い訓練施設で、ハーヴェイの名を大声で呼ぶ。
「ハーヴェイ?…………祝賀会の後なのに、訓練してたの?」
「アイツは団長だからな」
「そう聞いたけど、今日ぐらい休むのかと」
すると、3人の騎士がリリアーナとグリードに近寄って来る。
1人はハーヴェイだが、1人は見知った男、そして1人は知らない男だ。
「ロブ?」
「よぉ!リアナ!」
「ロブ!もう王都に来てたのね!」
「あぁ、それも団長達が帰るっていうんで、俺もウッディも…………痛っ!な、何すんですか!」
ロブの姿を見たから、リリアーナは話し掛けたが、ロブもリアナの姿で、挨拶がてら気さくに話始めると、ハーヴェイから頭をひっぱたかれた。
「口を慎め、ロブ………今やこの方は、王太子の后、リリアーナ様だ!リアナ様、もしくはリリアーナ様と呼べ!ね?姉上」
「い、いや…………ハーヴェイだって私に姉上って呼ぶのは如何なのよ」
リアナからすれば、ハーヴェイもリアナの臣下に値する事になるので、不躾だと言える。
「ハーヴェイ、よく言った。お前が止めなければ、私が首絞める所だった………一応、お前の監視下に置いている部下だ、お前が扱わないとな」
「良かったな、ロブ………首が繋がってて」
「……………平手打ちも不意打ちで、舌噛んだんですけど……」
そんなハーヴェイに対し、グリードが同意をするのも大概だった。
「でも、何故ロブもこの場に?ウッディは?」
「姉上、ウッディは別の持ち場にする予定です。姉上の護衛をするに、気心知れた騎士が1人は居た方が良いかと、グリード様が仰るので、ロブが姉上の護衛に、もう1人のブライトに任せる事にしました」
「宜しくお願いします、リリアーナ様」
「そういう事だ、リアナ………様……」
ロブがグリードの顔色を伺う様子に、リリアーナはグリードを見上げた。
「ん?…………睨まないの、グリード……ロブに礼儀を求めるのは、直ぐには無理よ。だってガサツで乱暴者で、敬う事を知らない人だから」
ロブに容赦無いリリアーナだが、実際にそうなので、フォロー等出来ない。
「姉上、はっきり言いますね……」
「分かってたけど、本当に容赦ねぇ……」
「ロブは教養を先に身に着けた方が良いんじゃないか?」
「グリード様、それは俺達で叩き込みますから」
「は?ただでさえ地獄の訓練なのに、勉強もさせる気かよ!団長!」
「当然だろ?姉上はドラヴァール内随一の美女でグリード様の番い!美しく気高い姉上の傍に就く護衛が、無様な所を見せたら姉上が恥をかくからな!」
「ハーヴェイの言う通りだ………リリは美しさだけではない………教養、知識、歴史、雑学、薬学………頭の良さも抜きん出ている……子供の頃、リリが作ってくれたケーキさえも、リリの治癒魔法が込められていて、味も然ることながら、私の心迄癒やしてくれた!」
陶酔するグリードに引き気味のリリアーナ。
リリアーナだけでなく、ハーヴェイやロブ、ブライト迄引いている。
「盲目的愛情者は放っておいて、ロブは武器の鍛錬はまだ未熟なので、戦わせるより守らせる様に言い聞かせてます。その点、ブライトは剣術に長けているので、姉上の身の安全はお任せ下さい。彼等2人だけではないですが、潜伏護衛も配備していますから」
「そうなのね、頼もしいわ………私は戦闘には不向きの魔法しか使えないから」
「リリには私から防御魔法を掛けている。今迄もそうだったろう?静電気とか突風とか家の防御壁とか」
「や、やっぱりアレはアンタの仕業だったのかぁ!」
「「ロブ!」」
「痛っ!痛っ!」
ロブが、リリアーナに掛けられていた魔法の理由が分かって発狂すると、両隣に居たハーヴェイとブライトに頭をどつかれた。
「感知能力もあるロブなら、鍛錬で研ぎ澄まし、予測付けて動ける筈だ、期待しているよ」
「え?本当っすか?」
「感知能力も無い者の方が多いんだぞ?殆どが身体の筋肉の動きや魔力の流れで、何が来るかを見極めるんだから」
「リリの家に掛けてあった防御魔法に残渣は残っていたが、君は魔法で打ち破るのを止め、壁に触れたのは何故だ」
「え………それはただ、この魔力の持ち主より弱いから壊せないと思ったからで……」
「それ、感じない人多いからな」
鍛錬を繰り返していても、本能で動ける人の方が、身体は早く動くものだ。
練習で如何する事も出来ない壁でもある。
だからこそ、筋肉や魔力の動きを見ないとならない、という事になる。
「とりあえず、壊してみよう、て思うものだと思うがね………ロブだけじゃない、あの家には沢山の残渣が残っていて、壊して押し入ろうとしていた男達がどれだけ居たか………父があの家を守っていた時のを見たが………まぁ、凄かった」
「そんなにあったの?壊そうとされたの」
「日中、夜中、時間問わずね」
「……………怖っ……」
「そういう事だから、ロブは入団出来た、という訳だ」
リリアーナはロブの静かだが嬉しそうな表情で喜びを表していた。
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