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しおりを挟む祝賀会も終わり、夜はゆっくりする様に、と下がらせて貰ったリリアーナは、グリードの部屋に案内された。
「私はグリードと同じ部屋になる、と言う事かしら」
「はい、グリード様が離すな、と仰りますし、貴族社会とは違い、竜の血脈の方は夫婦別のお部屋では無いらしいので」
私室はあるにはあるが、寝室と寛ぐ居間は、グリードと同じらしい。
そして、私室にベッドも無い、ただ机と本棚、鏡台、ソファとソファに合わせた高さのテーブルだけだ。
「…………ふ、ふ~ん………喧嘩して、別の部屋に寝る、て事は出来ない、て事ね」
「何で別で寝る必要がある?」
「っ!…………い、今貴方は執務室に行ってたんじゃ!」
「不服そうだから、仕事放り出してリリに説明しに来た」
「そ、そんな事、後から聞くから仕事して来て!」
気配を感じたと思ったら、直ぐに近くに転移魔法で来てしまうのには驚いた。
侍女達も、急に現れた事には、驚いた表情を隠しきれてはいない。
「前は、喧嘩しても直ぐに仲直りしたんだ、ベッドは絶対に必要無い!寝室は私と一緒!それは譲らない!」
「……………分かったから、仕事して来て。私も着替えたらお后様に面会申し込んで会いに行きたいの」
「母にか?私も行こう」
「いや、来なくていいから…………女同士の話をさせて」
「隠し事されたくない」
「分かってるけど、ほら!…………あぁ……何だ………よ、夜の営みの悩み………とか……子が宿った時の相談………とか………じ、時期……とか………け、穢れの事………とか………わ、分かるでしょ!もう女を知ってるんだから、女は男と違って、そういう話を女同士でしたい相談相手にお后様しか、私にはこの城に居ないの!竜の王の番い同士なんだから!」
竜の王になる子をリリアーナは産む事になるのだから、その話をリリアーナは后としたいのだ。
祝賀会中、話も出来ずにいたのだから、時間がある時に早々としたいし、もっと話したいと思っている。
「…………分かった……母に取られるのは癪だが、リリを慰めてこれたのは、母だからな………我慢するが、私が戻った時にリリが居なかったら迎えに行き、話を終わらせるからな」
「相変わらずの盲目的愛情………」
「リリにしかならない」
「…………もう……グリードったら……」
傍に立つグリードに抱き着くリリアーナは、背伸びしてグリードに唇を合わせた。
「…………リリ……どれだけ私を夢中にさせる気だ?」
「いっぱい?………10年も会えなかった分、全然足らないでしょ?」
「っ!…………毎日寝させられないから覚悟する様に」
「……………治癒魔法の使い手だという事が、私を助けるわね……望む所よ」
意地の張り合いの様に見え、それが何故まぐわいなのか、と侍女達に思われたに違いない。
グリードはその後、執務室に戻り、リリアーナは后と会う許可が取れた。
「リリアーナ…………あぁ、リリアーナ……」
「お后様…………ご挨拶が簡素で申し訳ございませんでした」
「何を言うの………立派な挨拶でしたよ」
后は優しい眼差しでリリアーナを出迎えてくれた。
人払いしてまで、リリアーナに2人きりで話すぐらい、気を使ってくれる。
「10年振りのお城でのご挨拶でしたし、声が震えてしまって……」
「久々だもの、緊張したのね………それで?リアナ………早速わたくしに会いに来たという事は、早速何かあったのかしら?」
「…………隠せませんね………お后様には……」
「…………まぁ……わたくしも封印解呪直後はねぇ……ありましたよ」
代々繰り返された事なのだろう、后の意味含む物言いには、やっぱり、と思う事しか出来なかった。
「何故、竜の王の番いの封印は、極秘事項なのでしょう?私は、10年前何も其処に疑問は持ちませんでした………ですが、番い候補だった令嬢達も知らない様でしたし………」
「封印自体は知られている事です。ただ解呪方法やその意図は知らされていないだけよ。解呪と刻印が同じだとは、番い候補は知らされてはいません。勿論、番い候補の家族にもね。番いの家族にも知らされぬ事を、候補如きに教えてはあってはならぬ事なのです」
確かにリリアーナは、封印解呪が竜の血脈との結婚が結びつく事は知らなかった。
「わたくしの元にグリードが来てくれたのは、刻印を受けてから5年も掛かったの………」
「5、5年も………ですか!」
「えぇ………その間、常にわたくしに対して、番いに相応しくない、代わりの番いを我が娘に譲れ………生命を狙われたりね……わたくしが何を貴方達にしたの?と、よく思いましたよ。きっと一生思う事ね………リアナを見ても思うのだから………いっその事、内密にせず公にすればいいと、陛下に直談判した事もあったのだけど、番いを狙う方法が変わるだけで、何の解決もならない、と返されてしまったわ」
番いの生命を狙い、番いが死亡すると、竜の魔力は暴走してしまう。
それだけは避けて通りたいという事実を公表しても、所詮次の番いを当て替えば良いとしか思ってはいないので、神秘的に隠し通す、という事なのかもしれない。
「竜の血脈が一代で一子なのも不思議です………グリード以外にもデューク様が居られるのに、彼は竜にはなれないって………デューク様への不遇な扱いもありましたよね」
「……………一子しか、竜になれる子が産まれないのは分からないそうなの………グリードが産まれて、それからも子が宿り難いのだろう、と思っていたら、2年程でデュークが産まれ、シャルロッテもわたくしの元に来てくれたのは、竜の子だからとしか言えないのよ………過去、封印解呪を失敗し、1人しか産めなかった后も居れば、子沢山な后も居た様だし」
「封印解呪の失敗、てあるんだ………」
后は、心配してない顔に変わり、リリアーナに微笑む。
「貴女達は失敗していないから大丈夫ですよ」
「わ、分かるのですか?それ」
「不仲ではないもの」
「不仲…………にはなってはないですね……」
「解呪を失敗すると、一生不仲になるのよ、リアナ」
「え!一生!」
「過去に、封印解呪を急いだ竜の子は、番いと同意無く無理矢理解呪してしまったから、番いの心の中で不信感が植え付けられ、義務として子は産めたものの、それ以降は………拒否、というか……まぁ………」
封印されている間は、記憶が番いには無いのだから、同意迄の関係に持ち込めなかったからに過ぎない。
焦って失敗して、不仲になるのは不幸せになるに決まっている。
「番いの解消も出来ないとか、聞いてますが」
「竜が番いを離さないですからね………たまには1人になりたいわ、と思っていても常に居場所は伝わっているので、逃げようもないのよ……新婚の時は特に戸惑ったかしら」
「…………監視を付けている訳では……」
「魔力の制御が出来ない時期は監視を付けてましたよ、ですがもうリアナには付けてはいないのではないかしら………グリードが駆け付けるのが早いだろうから………でも、一応護衛は付けてるわよ………王太子の妻になったのだし」
監視と護衛とどう違うのか、と思ったリアナだが、それは後に知る事になった。
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