魔力を封印された女の解呪はまぐわいでした※新婚編※【完結】

Lynx🐈‍⬛

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4 *思春期

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 異議申し立てしようにも、私欲満ちた言ってばかりの為、国王の一喝でリリアーナの封印が決まった。
 それをグリードに知らされたのは、その日の夕刻、番いの間に国王自ら知らされた時だった。

「い、嫌です!私が何とか自分で制御しますから!リリに会えないなんて嫌です!」
「今でも会えておらぬではないか、グリード」
「っ!」
「強くなるのだ!グリード!」
「ゔっ………うっ……」

 竜の姿で泣き崩れ、番いの間にある物が次々に破壊されて行く。

「グリード!この聖地を壊す気か!」
「で、出来な………です……制御が………」
「選ぶ時が来たのだ、グリード………番いと共に歩む未来を考えれば、この選択は間違ってはおらぬ。歴代の王は皆、この選択をした………私もだ」
「っく………」

 情緒不安定で悩むグリードに沈黙が流れ、漸く口を開いた時は、一夜が明けていた。

「…………父上……」
「決心が付いたのだな?」
「…………はい………リリに封印します……ですが……私に場所を知らせない様にお願いします……リリを危険に晒したくない………」
「当然だ…………お前が完全に制御出来る様になれば、リリアーナの場所は私が言わぬとも分かるだろう」

 そうして、封印の準備に、ドラクロワ公爵夫妻にも知らされぬ、ドラヴァール国境の田舎の村外れに、魔法で家を建てた国王。
 グリードが番いの間から出られない時間を見つけては、国王は自らリリアーナをその家に連れて行き慣れさせた。

「リリアーナ、覚悟は出来たのだな?」
「はい、陛下」
「この洞窟の中でグリードが待っている………私も付き添うが、グリードが暴走しない様にする為だから安心するといい」
「…………はい……」
「両親と弟に暫しの別れをしなさい」

 洞窟の前で、心配そうに見つめるドラクロワ公爵夫妻とハーヴェイ。

「…………決心が鈍ります………私の記憶が封印されたからと言って、両親と弟はいつまでも家族です…………遠い国に………帰って来れない場所に………お嫁に行った、と思って下さい……」
「リ、リリアーナ………」

 12歳になったばかりのリリアーナの覚悟だった。
 顔を見たら、記憶を封印する事に躊躇する、とリリアーナは思って、顔が見られなかった。

「良いのだな?リリアーナ」
「はい!グリードを助けたいんです!」
「よし…………では行こう」
 
 リリアーナが歩き出すと、背後では啜り泣く両親と大泣きするハーヴェイの声が聞こえ、リリアーナも涙が止まらない。
 だが、リリアーナはグリードの前では笑顔で居たかった。

「あの扉の向こうにグリードが居る」
「……………涙を拭かせて下さい……」
「勿論だ………リリアーナ」
「私………笑えてますか?陛下……」
「あぁ、良い笑顔だよ」

 精一杯の笑顔だが、泣き腫らした目のリリアーナ。
 国王は其処に触れようとはしない。
 扉を開けて、リリアーナが入ると、荒れた部屋に蹲るグリードの姿があった。

「グリード!」
「……………リリ……こんなに泣いて……ごめん………ごめん………私の為に………」
「ううん!大丈夫!大丈夫だよ!私は平気!」

 グリードも泣き腫らした目でリリアーナを見つめ抱き締め合うが、直ぐにグリードから放される。

「リリ………落ち着く迄………待って……っ!」
「い、今抑制するから!」
「暴走するから………」
「リリアーナ………私が抑えておくから治癒を掛けなさい」
「は、はい!」
「父上…………ありがとう………ございます……」
「私が抑えてやれる内はまだ良い………だが、暴走しては制御出来ない……これが限界なのだ………自身で制御しなければな」

 何とかこの場は落ち着き、リリアーナの封印を始める事となった。

「先ずはリリアーナの記憶を封印するが、眠って貰わねばならん。雑念が入ると性格が変わったりするからだ…………眠ったら、もう最後………今のリリアーナとは会えぬが其方達、良いか?」
「リリ…………別れのキスして良い?………離れ難くなるけど………出来ないのは辛い……」
「うん……」
 
 唇が触れるぐらいのキスは今迄もして来た。
 抵抗は無いが、何年掛かるか分からない再会の為に、軽いキス等出来なかった。
 国王が見守っていたが、気にする余裕等なく、唇が重なると、頬に伝わる涙が口にも入る。
 甘いのに、涙の味がしょっぱく、リリアーナを潤した。

「っ!…………も、もう……今度ね………また揺らぐ……から……」

 リリアーナはグリードの想いが、途轍もなく重苦しく思った事は無かった。
 グリードを突き放し、リリアーナは涙を拭う。

「陛下!お願いします!私を早く眠らせて下さい!」
「……………分かった……グリード……冷静になりなさい」
「っ!」

 ベッドの上に仰向けになり、リリアーナは眠らされ、今迄の記憶を閉じ込めると、苦しそうな顔から安らかな顔へと変化した。

「……………もう、リリアーナはお前の事も忘れた………さぁ、魔力をリリアーナに流し込むのだ。リリアーナの魔力はグリードの抑制の為に使うように操作する」
「リリ…………リリ……」
「グリード!しっかりするんだ!」
「は、はい………」

 こうして、グリードの魔力はリリアーナに流れ、グリードが自分自身で魔力を制御出来る迄、残る魔力をリリアーナに管理、抑制して貰える様になった。

「…………暫く、休むといい……リリアーナは私が連れて行く…………目覚めるのは翌朝、リリアーナが暫く住む家のベッドの上………家は私の防御魔法で守り、リリアーナはお前の魔力で守ってくれる………よくやったな」
「……………」

 ベッドから国王に抱き上げられたリリアーナは、深夜密かに10年住んだ村に運ばれた。
 グリードの番いのリリアーナが、その村に居る事は、10年の歳月、反対派貴族に知られる事なく国王のみぞ知る。
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