魔力を封印された女の解呪はまぐわいでした※新婚編※【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
上 下
4 / 43

3 *思春期

しおりを挟む

 グリードに思春期が始まると、魔力の制御が再び難しくなってしまった。
 性欲も加わって来た事で、昂ぶりが魔力の暴走に繋がったのだ。
 グリードの性欲の捌け口は、リリアーナに必然的になり、リリアーナの身も危険が及ぶ可能性も出て来た。

「離れるんだ!リリ!」
「い、嫌よ!だって辛そうなグリードを見ていられないもの!」
「っく………お願いだ………落ち着かせてみせるから、今は離れて……」

 その頃になると、グリードは番いの間に身を潜める様に閉じ篭っていた。
 番いの間のある洞窟は、魔力を溜めてくれる霊山でもあり、竜の魔力を持つグリードと相性は良い。

「そろそろ、決断の時が迫っている」
「…………陛下……それは、竜の王になるべく為の番いへ封印が近い、という事でしょうか」
「…………そうだ……日に日に増す制御不能の年頃に、リリアーナに協力して貰わねば………」

 議会の間で、グリードの番いのリリアーナに、グリードと魔力の保持をし、一時グリードの魔力を減らすのだ。
 減らしたからと言って、竜の血脈の魔力は、人間に匹敵しない程の魔力だ。

「異議ございます、陛下」
「サイモン公爵……何だ?」
「些か、番いと仰る令嬢では、難があるかと思うのですが………」
「何故そう思う」
「まだ10代前半でしたな?ドラクロワ公爵の令嬢は………若過ぎやしませんか?」

 反対したい気持ちは、番い候補から外された家の者なら分かる。
 グリード本人が選んだリリアーナなのに、納得しないのだ。自分の娘以外の娘は。
 それ程、竜の血脈に番いを出した家は、その後も恩恵を受けられ、地位も高く、権力や権限も強くなるのだという。
 公爵の位を与えられる事もあるので、国政を担う役職を持つ者には、喉から手が出る程欲しいのだ。
 なので、過去にドラクロワ公爵家やサイモン公爵家は、竜の血脈に番いを出していた名門中の名門。
 余程の事が無い限り降位はあり得ない。

「その点、我が娘フローレスは、純粋にグリード様を愛し、魔力も高く、聖魔法を得意としており、グリード様とは歳も近いではありませんか」
「グリードを愛しているから、という理由だけでは、番いには出来ぬ………それに、リリアーナも聖魔法の持ち主で、魔力も高く、今迄もグリードの魔力を制御しておった………知らなかったのか?」
「っ!………そ、その様な事、初耳ですぞ!陛下!」
「グリードとリリアーナを見ていれば分かる事だ。グリードが精神が揺さぶられる度に、リリアーナが抑え込んでいたのを」

 邪な目で見ていたのではないか、と国王に続けられた。
 元より、番い候補さえも挙がらなかった貴族達は、その時点で諦めが付いていて、頷く者も多い。
 しかし、一度でも候補になった家は、夢見てしまう、私利私欲の塊だ。
 次は、その次代の番い候補を狙うしかなく、その時になったら、世代交代になってしまうからだ。

「くっ………し、しかしですな……」
「しかしも、だからも無い………それで、リリアーナに害を与える事も許さぬからな?」

 こうなる事は見越している国王。
 リリアーナさえ居なければ、とリリアーナの生命の危険もあるので、リリアーナが番いと決められた時に、国王の魔力でリリアーナに防御魔法が掛かっていて、リリアーナが狙われても、魔力で弾き飛ばされるのがオチだった。
 ドラヴァールで一番高い魔力の持ち主は国王なのだから、敵う筈も無い。
 リリアーナがグリードの番いとなり、過去何度もリリアーナは生命の危険に晒されてきている。
 実行犯は処罰しているが、主犯格はリリアーナ反対派の家の者達。
 何度、リリアーナの事を認めさせようとしてきた国王やグリードだが、例え番いが誰かに変わろうとも、また同じ事が起こる為、認めさせる事を選んでいる。
 命令を降した者達は巧妙に、魔力残渣も残さなかったり、魔力を使わなかったりと、実行犯と主犯格の繋がりが出て来る事が無かったのもあった。

「心外でございます。私は陛下やグリード様に忠誠を誓う者。グリード様が悲しむ様な事は決してしておりませんし、する事はございません」
「……………ならば、リリアーナの封印を早急に準備する!異論のある者は挙手せよ!」

 リリアーナの封印とは、グリードの膨大な魔力をリリアーナの魔力に抑制させる事を意味する。
 グリードの成長と共に、制御出来るようになる力であるので、封印中はグリードには早い制御が余儀なくされるのだ。
 そして、共鳴しあう両者には、お互いの魔力で暴走し傷付け合う事を避ける為、リリアーナにはグリードやリリアーナ周辺にまつわる記憶をも封印し、グリードの居ない地で生活してもらう事になる。
 まだ、親離れしていない少女に、離れて暮らさせるのは酷であるが、リリアーナは1人で生活出来る知恵も、后教育で身に付けさせられている。
 料理、掃除、平民として生きる一般的常識等だ。
 そして、聖魔法を使うリリアーナには薬学知識も叩き込まれていて、薬師としての職の資格さえも持たせている。
 よって、リリアーナの方は用意は出来ていると言っても過言ではない。
 後は、リリアーナの覚悟と、グリードの説得だった。
 グリードがリリアーナと別れ離れになる事は、自分が死ぬより嫌な思いをするだろう。
 それだけ、リリアーナに執着する盲目的愛情者なのは、出会ってから一寸も衰えていないからだ。
 リリアーナには四六時中警護を付けていて、異変があれば一目散に駆け付けに行くぐらい、リリアーナが優先される。
 そんな執着をされると普通は嫌がるが、リリアーナは嫌な顔をしても、グリードなら仕方ない、と許している。
 リリアーナも大概で、グリードにラブレターが届くのを知ると、ラブレターを贈った主の前で破り捨てるのは当たり前で、それをグリードは喜んで見ているぐらい、リリアーナもグリードしか見ていなかった。
 リリアーナ自身は自分が虐げられるのは良くても、グリードに害を成す者には容赦しなかったので、愛情の深さはお互い様である。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男装騎士はエリート騎士団長から離れられません!

Canaan
恋愛
女性騎士で伯爵令嬢のテレサは配置換えで騎士団長となった陰険エリート魔術師・エリオットに反発心を抱いていた。剣で戦わない団長なんてありえない! そんなテレサだったが、ある日、魔法薬の事故でエリオットから一定以上の距離をとろうとすると、淫らな気分に襲われる体質になってしまい!? 目の前で発情する彼女を見たエリオットは仕方なく『治療』をはじめるが、男だと思い込んでいたテレサが女性だと気が付き……。インテリ騎士の硬い指先が、火照った肌を滑る。誰にも触れられたことのない場所を優しくほぐされると、身体はとろとろに蕩けてしまって――。二十四時間離れられない二人の恋の行く末は?

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる

西野歌夏
恋愛
 ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー  私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。

不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない

かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」 婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。 もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。 ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。 想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。 記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…? 不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。 12/11追記 書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。 たくさんお読みいただきありがとうございました!

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【完結】君は私を許してはいけない ーーー 永遠の贖罪

冬馬亮
恋愛
少女は、ある日突然すべてを失った。 地位も、名誉も、家族も、友も、愛する婚約者も---。 ひとりの凶悪な令嬢によって人生の何もかもがひっくり返され、苦難と苦痛の地獄のような日々に突き落とされた少女が、ある村にたどり着き、心の平安を得るまでのお話。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...