魔法陣の中の皇女【完結】

悲しみのお茶会

　セシリアの部屋を出て、ナイアの部屋でお茶会を誘われたアンジェリーク。
　誘われたはいいものの、2人の姉の事に驚き過ぎて話も出来ない。

「…………アンジェ、驚きましたでしょ？仲の良い姉妹だと言われてきましたが、アンジェが見ていない時はいつもあのような態度のお姉様でしたのよ？」
「………ナイアお姉様………本当にセシリアお姉様はご学友に意地悪を？」
「キルスト様に片恋していた女の子にはそうだった筈よ。貴女は教室の棟が違っていたから分からなかったんでしょうけど、皇女の立場にあるお姉様だから、問題にしなかったんでしょうね、お父様もオーロラ様もご存知無い筈よ。わたくしがお姉様の性格を知っていたから、時折ご注意申し上げていたのだけど、アンジェにもう隠せないだろうと思っていたの。昨日、お姉様に会いに行ったと聞いて、多分また来ると思って見計らっていたわ。ごめんなさいね、アンジェ。」

　紅茶にナイアが育てたハーブを浮かべ、一口二口飲むナイアは優雅だ。
　穏やかな性格で、花を愛でる趣味を持つナイアにはいつも癒されていた。
　セシリアとはまた違う美しい姉。
　嫁いだらなかなか会えなくなるだろう。
　
「……ナイアお姉様、嫁がれたらナイアお姉様のお世話していた草花、わたくしもお世話させて頂きますね。」
「あら、アンジェもキルスト様に嫁いだら、お世話出来なくなりますわよ？………クス。」
「…………わたくし、まだ日取り決まってませんから。」
「………ありがとう、でも大丈夫よ。お母様と一緒にお世話していたから、お母様がそのまましてくれるわ。それに、お兄様がさっさとお相手が決まれば、アンジェの日取りも決まるわよ。即ね。」
「………そうでしょうか……。」

　ほんのり赤らめた頬のアンジェリークを、ナイアは見逃さない。

「あら？何か心が変わったかしら？」
「……………ナイアお姉様……洞察力が鋭いです。」
「分かりやすいのですもの…………それで？お気持ちは分かったの？」

　クスクスと口元を扇で隠すナイア。
　何でもお見通しという空気を醸し出す。

「………多分……。」
「…………そう、好きになられたの。良かったわ。」
「………た、多分………て……………は、はい……。」
「可愛い、真っ赤な顔してるわ、アンジェ。」

　アンジェリークも扇で顔を隠して見破られないようにしたが、時既に遅かった。