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羨ましいよ

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午後になり、少し落ち着いてきた頃、昨日ノエルと行った料亭の女将とのリフォームの相談を終わらせ1階に降りてきた2人。

「まぁ、神谷様。」
「あれ?女将、来てらしたんですか。」
「はい、とても素敵な指輪にリフォームしてくれそうです。」
「それは良かったですね、また出来上がったら、店に伺う事にしようかな。」
「はい、神谷様、高階様と是非。では失礼致しますね。」
「ありがとうございました。」

 翡翠は深々と頭を下げた。

「………さっきの電話、あれ何?」
「それ、聞きにきたの?」
「まさか、ついでだよ。デニスの指輪の受取に付き添っただけ。」

 よく見ると、デニスも居る。

(デニスさんが取りに来たのか。………ん?冷たい視線?)

 見渡すと、店内の女性客はノエルに釘付けで、手が空いているスタッフは、羨ましそうに見ている。

 「………私、今から打ち合わせがあるから、行くわね。ごゆっくり。」
「あっ!」
「翡翠さん!すいません、お待たせしてしまって!」
「酒井さん、今日はお世話になります。小林も呼びますね。」

 インカムで、小林を呼ぶ翡翠。
 その横で、何か話したそうなノエル。
 その光景を見ている酒井は、

「モデルさんですか?[NEO EARTH]もモデルさん入れるようになったんですね。」
「あ、……………まぁ、その。」
「酒井さん、行きましょう。小林も直ぐに来ますから。」
「翡翠さん、広告に彼入ってくれませんかね?」
「は?」
「お待たせしました~。わっ!めっちゃイケメン!」
「小林さん、ご無沙汰です。ね、いつからモデルさん、雇ったんです?」
「え?私知りませんよ、社長!聞いてませんよ、私!」
「い、いえ、彼は、モデルじゃなくて、ですね………。」
「いいですよ、モデルやっても。ただし、あいつも込みで。」

 ノエルは、デニスも巻き添えにする。

(の、ノエル~!!)

 2階のVIPルームに入ってきた翡翠達。
 訳も分からず連れて来られたデニスと勘違いしているデザイナー小林と、広告代理店の酒井。

「どうしようかな、人物ないプロットで作ってしまったんですが、彼等が入るなら変えたくなったなぁ。」
「先ず、考えて頂いたプロット見せてもらえますか?」
 「3周年が近いので、翡翠さんの代表作の[NEO EARTH]から次世代への意味を込めてこんな感じで作ってみたんですけど……。」

 [NEO EARTH]が中央に飾られ、それを投げてるのか受け取るかのような神秘的な広告。

「CMは流す予定無かったですよね?でも発表にはやっぱり彼等を起用して、[NEO EARTH]のジュエリーを身に着けさせての発表ですか?」
「いえ、あの彼等はモデルじゃな………!」
「翡翠、そんな冷たい事言うなよ。愛しい彼女の仕事を手伝いたいんじゃないか。」

 ベタベタと翡翠に抱きつくノエル。

「あ、あぁ…………何だ、彼氏さんでしたか。だとそれは………それで……。」
「社長、いつの間にそんなスペックの高そうな人を……。羨まし過ぎますよ。」

 広告掲載の打ち合わせも思ったより進まなかったのは言うまでもない。
 デニスにも説明しないまま、訳も分からずデニスは呆然としていたし、翡翠も集中出来ずにいたからだ。

 「では、ノエルさんとデニスさんの2人を入れた撮影予定させて下さいね。いやぁ、楽しみだな。」
「こちらこそ、カッコよく撮って下さいね。」
「めちゃ楽しみです、私も。」

 3人だけが盛り上がっていたのだ。

(もう、どうとでもして……。)

 酒井を見送り、小林とVIPルームを片付けてると、ノエルがやって来た。

「ちょっといい?翡翠。」
(来た!)

 少し躊躇していると小林が、

「あとやっときますから~。」

と追い出す。

 「何?まだ仕事しなきゃ。」
「効率いいと思ったんだよ。俺がモデルとして、翡翠の側に居たら不自然じゃないだろ?」
「…………集中出来ない。」
「仕事の邪魔はしないよ。俺は俺の仕事をする。君は君の仕事をすればいい。彼氏だから、て君の仕事中にうろちょろする訳にはいかないからな。」
「………私、仕事しなきゃ。」
「あぁ、頑張れよ。」
「……ありがとう、貴方も無理しないでね。」

 何故か、寂しさを覚える会話だった。
 翡翠は、仕事だから自分の側に居るんじゃないか、ノエルは距離を置く翡翠にどう接していいか分からない。

(不味ったか?)

ノエルは、そう思わずにいられなかった。

『ノエル、何で俺までモデルしなきゃならん?』

 先程、小林からやっと詳細を聞いたデニス。

『いいじゃないか、お前もイケメンなんだし。』
『良くない!ジェニーにバレてみろ!ヤキモチ妬かれるじゃないか!』
『いいじゃないか、羨ましい。』
『何だ?翡翠は妬いてくれないのか?』
『…………知らん。それより受け取ったのか?指輪。』
『あぁ、なんて美しく輝くんだ!ジェニーの左薬指によく映えるだろう!』

 そこにジェニーが居るかのように、エア抱きするデニス。

『………お前が羨ましいよ。』
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