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エピローグ
しおりを挟む城に到着すると、既に連絡が通っていたのか、転移先専用の部屋に、多くの貴族達が集まっていた。
「び、びっくりした………」
「懐かしい城だろ?リリ」
「うん、よく遊んだね、この部屋で」
転移魔法専用部屋は、城の出入りに使われている。
ドラヴァールの城は、徒歩や馬車では行けず、空中に浮いているからだ。
この城も、歴代の竜の王が魔力を溜めて浮かせている。
「おかえりなさいませ!グリード様、リリアーナ様!」
「おめでとうございます!」
歓声と共に出迎えられたリアナとグリード。
何だか、少し擽ったい気持ちになってしまう。
「賛辞は、陛下と后に面会してからだ。切りがない」
「賛辞に、面倒くさく思う事ないのに」
「その度に足止めを食らうじゃないか」
「ふふふ………」
寄り添って歩く姿を貴族達も10年振りに見るのだ。
次期竜の王になるグリードの魔力暴走の心配も無く、安寧の世代になる事を期待する者も多かった。
グリードの両親の待つ玉座には、出迎えきれなかった貴族達も並び、歓迎の声で迎えられた。
「陛下、后……王太子グリード、番いのリリアーナ・ドラクロワを無事、帰還させ封印解呪しました事を報告致します」
「国王陛下、お后様………リリアーナ・ドラクロワ公爵令嬢、ただいま帰還致しました………これからは、グリード様のお傍で、お支えする事を、此処に誓います」
最敬礼の礼を、玉座の前でするリアナ。
グリードもリアナに合わせ、礼も欠かさない。
「よく無事で帰還した、リリアーナ……私も至極嬉しく思う」
「わたくしも、リリアーナに会え本当に安堵致しました………苦労もあった事でしょう……よく帰ってきてくれました」
「お后様………」
もう1人の母として尊敬して止まない人が傍に居て、もう怖い物は無い、と思える。
グリードに愛されて幸せで、支えて行こうと心から思えた。
「リリアーナ、刻印を見せてくれぬか」
国王や后、他の貴族達にも確認して貰わねばならず、リアナは身体を起こし、刻印を披露する。
銀色に輝く刻印は、次期竜の王の番いを証明する者であり、無事竜の王の后になる者として認められた女として見られる、確立した地位となる。
歓声が再度挙がり、賛辞も降り注いだ頃、リアナやグリードに近付く影があった。
「義姉上……お帰りなさい」
「っ!」
「デューク、其方も祝って欲しい」
「えぇ、祝ってますよ、兄上」
グリードには弟と妹が居る。
弟の彼は竜にはなれない、産まれながらに王位継承が出来ない王子。
魔力は高いのだが、不遇な扱いをされていた。
勿論、後援する貴族は居ない。
しかし、そんな弟をグリードは可愛がっていた。
国王も后もグリードと同様の愛情を注いでいたが、捻くれた性格になってしまった男だ。
リアナはそんなデュークが苦手で、10年振りに会ったデュークに恐怖心しか起こらない。
「デュークも私に力を貸してくれ」
「…………はい……」
そして、もう1人の妹。
「お姉様~!おかえりなさい!」
「シャ、シャル?………あ、会いたかったわ」
「シャルロッテ!リリから離れろ!」
別れた時はまだシャルロッテは8歳で、少女だったのだが、今やもう淑女だと、グリードから聞いていたリアナ。
シャルロッテはリアナが大好きで、グリードと取り合っていた事もある。
「嫌よ!お兄様!帰って来てから、お姉様をこれから独り占めするのですよね?シャルにも少しはお姉様と語らう時間は欲しいわ!わたくしだって、嫁ぐ日が近いのですもの!」
「え?………シャル、嫁ぐの?………やだ……寂しいわ……」
「リリ!」
「お姉様!わたくし、お姉様が駄目だと言うなら嫁ぐの止めます!」
「お、おい!シャル!」
「…………て、言いたい所ですけれど、シャルも大人になりましたわ……冗談ですわよ」
おしゃまな所は変わらない義理妹に、リアナも安心した。
「いい加減にせぬか……さぁ、今日は祝祭だ、皆で祝おう!」
リアナの新婚生活は始まったばかり……。
*独身編𝐸𝑁𝐷𓂃𓈒𓏸◌*
✦ ✦ ✦
※新婚生活編も準備中です。
公開日10/01~です
↑訂正します。9/25から新婚編を公開する事にしました。
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