魔力を封印された女の解呪はまぐわいでした※独身編※【一旦完結】

Lynx🐈‍⬛

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 その後、リアナは疲労困憊で益々仕事に手が付かず、そのままベッドに突っ伏してしまった。

「如何したのだ?リリアーナ」
「っ!………わ、私はリアナ!」
「…………リアナは、其方の両親が呼ぶ愛称だ………本名はリリアーナ………そして、私から其方にリリ、と愛称で呼んでいて、いたく其方はその呼び方を気に入っていた」

 この夢の中で、珍しくリアナは服を着ていたままだった。
 それは、グリードが見せる都合なのかもしれない。
 拘束はされておらず、夢の中の場所は変わらない。

「リリ………そ、そう……私の愛称がリアナ………」
「そうだ…………今日は少し話をしよう………疲れが見えているからな」
「誰の所為だと………」
「フッ…………仕方あるまい?切っては切れぬ関係なのだ、其方と私は」

 優しい口調で、物静かに語るグリードの声は心地良く、ほわほわとした温もりでリアナは包み込まれる様な感覚を覚える。
 まるで、睡魔に襲われそうな心地だった。

「あの……聞いても良いかしら?話をしよう、と言ってくれるなら、聞きたい事を聞かせて欲しいわ」
「良いぞ………だが、其方の記憶に関する事は話せない………以前も言ったが、見解が其方と私と違う可能性もあるからな………ねじ曲がるのは避けたい」
「…………それは、封印を解呪する事に関係あるの?」
「いや、言った言わない、の口論に発展する気がしてな………昔は、見解の不一致でよく喧嘩したのだ………懐かしさで、私のなけなしの理性が飛ぶのを必死に抑えている」
「た、例えばどんな事で喧嘩したの?」
「…………他愛ない事だ………何方がより好きか、とかな」
「っ!」

 10年前だと言うならば、リアナは12歳前後だろう。
 今のリアナでは、随分とませた事をグリードと話ていたという事になる。

「封印前の事を言えば、戸惑うのではないか?」
「う、うん………か、解呪出来てからでいい……」
「それで?………聞きたい事とは何だ?」
「あ…………私、攻撃魔法は使えない、とばかり思っていたんだけど、今日風で人を突き飛ばしてしまって………」
「それは、私の力だ………其方の中に封印した私の魔力が其方を守っている。それは、其方が不快に思う事全てにおいて、拒絶反応を示し、私の魔力が反応するのだ。其方が私の魔力を使えば、私に伝わる」
「…………だ、だから静電気が起きたり、突風が吹いたりしたんだ………」
「そういう事だ………其方が私以外の男を避けるのも、私が拒絶させている」
「え!」

 不思議だった事の辻褄が合う。
 今迄も異性として見られない相手には、拒絶する様な魔法は出なかったリアナ。
 だが、ロブやヒューイの取り巻きに魔力が反応したのは、グリードの魔力だと知り、納得出来た。

「役立っただろう?ん?」
「や、役に立ちました………あ、ありがとう……」
「その魔力を少しずつ引き出しているのだ………暴走しない様にな……そして、其方の魔力も」
「私、微弱の治癒能力しか使えないってば」
「9割方、私の魔力保持の為に使って貰っているから、微弱しか今は出ない………言わなかったか?同等の魔力、もしくは治癒魔法を持つ相手を番いにした、と」
「聞いたけど、本来の私の魔力って何なのか分からなくて」
「治癒魔法を得意とした聖魔法を持っている」
「あ、貴方は?」
「私か?…………私は火、水、雷、風……不得意な魔法は無いが、聖魔法は使えない」
「だから、補う為に私が選ばれた、と?」
「…………封印が解呪出来たら分かる」

 封印に関係する事は、グリードは言いたくない様だ。
 リアナの幼少期の事でもあるからだろう。

「そういえば、魔獣について知っている事あるかしら?」
「魔獣?あぁ、答えてやろう」
「今日、魔獣に助けられたんだけど………」
「…………私が命令を降したからな」
「え?…………ま、魔獣を従えられるの!」
「従えている訳ではない………従えられるなら、人は襲うな、と服従させられるだろう?だが、魔獣は人を襲うから、攻撃魔法を使える者が時々討伐に出向くのではないか」
「そ、そうだよね………」
「全ての魔獣を従わせる事は無理だ………あの時は、其方が自らの身を守らず、拒絶せず逃げたからだ………数匹、あの傍に居た魔獣に、苦手な魔法を掛け嗾けただけ………リリには攻撃させない様に、リリの姿を魔獣に見せぬ様にしているのだ」
「…………だから、私は魔獣に襲われた事が無いの?」
「そうだ」

 幾ら魔獣の気配を感じ取ろうと、襲われない事の理由さえもグリードなら出来る事の様に思えた。
 並外れた魔力の持ち主だと、リアナが身を持って分かっているからだ。
 初めて会った時の、突如現れて突如に消えた事も、他人の夢の中に現れる事が出来るのも、リアナはそんな魔法がある事も知らなかった。

「貴方は一体………何者?」
「其方の番いだと言った………それ以上も以下でもない………其方は、素直に私を受け入れ、飛び込んで来れば良いのだ………私という男を知る時間だと思え」
「……………分からないから戸惑うんじゃないの……悪い人だとは思ってないわ………でも良い人ともまだ思えない………何度も助けて貰っているけど、あの…………か、身体を………弄ばれる……し………」
「今日はしてないだろ?」
「し、してはいないけど!」
「嫌ではない筈だ」
「っ!」
「……………リリ……」

 向かい合って話していたリアナとグリードはまだこの日触れ合ってはいない。
 だが、この会話でリアナが赤面してしまい、グリードから目を逸らすと、グリードはゆっくりとリアナの頬に手を伸ばした。
 リアナから拒絶する様な反応はなく、その手の心地良さから、リアナは避ける事は出来なかった。

「何なら、初歩的な事を経験してみるか?」
「しょ、初歩的?」
「この場合………キスかな……」
「っ!」

 向かい合っていた身体が、グリードが前に進めた所で、リアナとグリードの膝が当たる。

「避けないのか?今日は拘束してはいないぞ?」
「…………わ、分からない………その目に吸い寄せられそうで………」
「そうか………なら目を瞑れば良い………瞑ったらキスしてしまうがな」
「っ!」
「…………綴じなくとも、キスするつもりだぞ?」
「どっちにしたってキスするんじゃないの!」
「したいからな…………リリ……私の番いは其方だけだ………其方もこの想いに追い付け………」
「…………っ………」

 避け切れなかったリアナ。
 吸い込まれそうな眼力と、優しい声と温かい手の温もりに、リアナはグリードに委ねてしまった。
 記憶が封印される前は如何か分からないリアナだが、初めてのキスだとリアナは思うと、ぎこちなく終わってしまうのだと思った。
 しかし、グリードからのキスは終わらず、唇を舌で割り入れられ、深いキスをされ、リアナは自然とグリードに応えるかの様に返すのだった。
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