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苦行の元凶の愚者達
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しおりを挟む時は少し遡る。リーダス山脈、ユージーンの家。
「どういう事!コーウェン!」
「ど、どう、て?」
「今、フィーネに子供が居て、お父さんとお母さんの魔力がフィーネに注がれて………更に人を………殺した……て言ったじゃない!」
フィーナは薬草を踏み分け、ロマーリオの胸ぐらを掴んで詰め寄った。
「フィーナ!落ち着け!」
ユージーンも声色で喜怒哀楽が分かるからか、ロマーリオから引き離そうとするが、フィーナは止まらない。
「何で!黙ってくれなくてもいいじゃない!何で教えてくれないの!」
「フィーナの悲しむ顔見たいと思うか!俺が!」
「………っ!」
既に目を充血させ、頬を伝う涙。拭き取ろうともしないフィーナ。ただ1点だけロマーリオを見つめる目。
そんなフィーナに目を逸らす事なく、フィーナの身体を支えるロマーリオ。
「今………話してる間でも、そんなに辛そうなのに、昨日の話だけでも泣きじゃくった奴に、それ以上………俺は言えなかったよ……」
「でも、隠し事されるよりずっといいわ!3年前、何もお互いの素性隠し合いながら付き合っていた頃とは違うのよ!協力してくれるんでしょ!違うの!?」
「違わないさ………俺は国王の野望を止める……父親とはもう思ってない……だがフィーナ、お前はいざという時、フィーネと戦えるのか!?」
「………っ!」
「5年前、俺が城を出てからはフィーネの様子は知らない………アイゼン、俺の腹違いの兄を殺した時でさえ残虐だった……殺した後、高笑いしてたんだ!そんな妹、お前知らないだろ!」
「…………わ、笑ったの?……殺しておいて?」
「そうだ」
「…………」
フィーナは言葉無く、コーウェンの胸に凭れ込むと、そのまま床に座り込んでしまった。
「虫も………嫌がって……殺せなかった子だったのに……」
「ロマーリオ殿下、早めに決行した方が良いかと………今国中、俺を捜索している……そして、フィーナも」
「フィーナも?」
「魔力を吸い取る魔法具を壊したんです……国王は欲しがるでしょうから」
「そうだな………手薄になる時期を見計らうか」
「そうですね」
「フィーナ、俺は街に帰るが、お前は如何する?ユージーンと居るか?」
ロマーリオは屈み、フィーナと目線を合わすと、所在を如何するかを聞いた。
「………私が居ないと移動出来ないじゃないの………帰るわ……ユージーン、偵察してるのよね?」
「勿論………だが、城内は以前壊されたままで城内の事は一切分からないがな」
「城内の事はある程度俺が分かるから、偵察させた部下達の報告があれば、ユージーンに知らせよう………方法はフィーナが行き来してか?」
「その点は、俺の魔法具を飛ばしますよ」
そう、ユージーンが言うと、1羽の鳥がユージーンの肩に停まる。
「鳥?」
「鳥型の魔法具です……コレは魔法壁を通り抜けれますから、この魔法具に話をすればそのまま俺に伝わります」
「何それ………私知らなかったんだけど」
「お前は魔法具作りが下手だから教えなかったんだ」
「悪かったわね、下手で」
「あんな、処刑された時の下手な人形、焼け焦げたから良かったものの、残骸が残っていたら、上手く逃げれなかったんだぞ?フィーナ」
「う、煩いわね!上手くいったんだからいいでしょ!」
本当に鳥に見える魔法具に驚くと、ユージーンからフィーナの肩に移る。
「ペットにしか見えんからな、だが大事に使え」
「ありがとう、ユージーン」
「分かったら連絡する」
「殿下、姪を宜しく頼みます」
「………当たり前だ」
ロマーリオとユージーンのわだかまりも無く、フィーナは安堵しながら、魔法陣を作り、ロマーリオを呼んだ。
「コーウェン」
「フィーナ、覚悟を決めろよ?フィーネとの対峙」
「………ユージーン……分かってるわ」
「…………」
ロマーリオは何か言いたげではあるが、フィーナを見つめ抱き寄せた途端、一瞬で景色が変わり、家に戻って来た。
「「…………」」
無言でお互いの温もりを感じつつ、魔法陣が消えると身体を離すフィーナとロマーリオ。何も言葉を出せないまま、ロマーリオの服のポケットの中から音が出る。
「…………ロマーリオだ」
『殿下、連絡付かなかった所に居ましたか?やっと繋がった!』
「サムエルか」
『そうですよ!』
ペンの様な、通信専用の魔法具の1種だ。対になっていて、その対の持つ相手同士しか連絡は出来ない。
『何処に居たんですか!一大事だったんですよ!』
「すまない……今、お前1人か?」
『騎士団の団長の執務室で、団長も一緒です』
「…………ユージーンに会いに行ってたんだ」
『ユージーン!会えたんですか!』
「あぁ、フィーナのおかげでな」
『フィーナとは話出来てるんですね、良かった』
『サムエル、こっちからの報告を』
『あ、そうだ……そこにフィーナも居ます?』
「居るが、フィーナに用事か?」
『なら一緒に聞いてもらって下さい……残酷な話ですが、知っておいた方が良いかと』
ロマーリオはフィーナを見つめると、フィーナは頷く。もう、知らない事は嫌だという現れだった。
「教えてくれ」
『はい……王太子妃は3人子が居ましたが、内2人……王太子妃の暴力で亡くなってます』
「なっ!」
「…………フィーネ……何て事を……」
フィーナは堪らずに手で口を覆い涙目になる。枯れるのではないかと思う程、最近泣く事が多い。そんなフィーナの肩を抱き寄せ、温もりを与えたロマーリオ。魔法具の鳥はその拍子に飛び上がるが、直ぐにロマーリオの頭に降りた。ユージーンにも聞かせる必要もあるので、離れないだけ扱いやすいと感じる。
―――頭に乗るなよ……ったく……
「…………サムエル、それで?」
『その王太子妃、王太子と違う男との不貞もありまして、その相手というのが国王でした』
「な、何だと!一回り以上違うのにか!」
「…………何をしてるの、あの子は……」
次から次へと、王城内で見てきた事を聞いたフィーナとロマーリオは驚きを隠せずにいた。
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