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魔法研究所
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しおりを挟むロマーリオはサムエルと共に魔法研究所へとやって来た。
「サムエル、俺をロマーリオと言うなよ」
「分かりました」
騎士団の制服に着替えていれば咎められる事は無いだろうとの事だ。
「街の女が運ばれただろう、様子を見に来た」
「南市街地のですか?………どうぞ」
案内された部屋で暴れたのかベッドの上に括られたコレットが唸っていた。
「押さえつけろ!」
魔道士達の手で括られた身体でも悶えるコレットを2人掛かりで押さえ付けて、魔法陣の上に運ばれた。
呪文を魔法陣の上で唱えるが、弾かれてしまう魔道士達。
「!!」
「弾かれた!?」
「どういう事だ?」
ロマーリオが見守っている魔道士に聞く。
「呪縛が強く我々で解く事が出来ないのかもしれません………余程、恨まれていた女なのでしょうか……」
「…………そうかもな……」
―――フィーナ……そこ迄傷付いてたのか?
コレットに同情はするが、自業自得でもある。だがやり過ぎの一言が過るロマーリオ。
「強い魔力の者か、呪った者でなければこの呪縛は解けないでしょうな」
「そういう者は居ないのか?」
「…………居るには居るのですが……もうその方は我々に協力はしないでしょう……」
「誰だ?」
「この魔力研究所の創始者、大魔道士ユージーン様以外思い当たりません」
「…………ユージーン………か……」
ロマーリオもユージーンの事を知っているが今何処で何をしているかも分からないし、彼は協力はしないだろう。
フィーナの呪いであればユージーンはフィーナを支持する筈だから。
―――アイゼンが生きていたら、魔力が強い者や結界を探せたのにな……
そのおかげで、ユージーンの妹夫婦の場所が分かったから、あの惨事になったのだ。
「お、おい!大変だ!王城からの指示が出た!………その呪縛である魔力を吸い取れ、と!」
「な、何だと!生きている者のを吸い取れと言うのか!」
「…………生きている者の魔力を吸い取ったら如何なる?」
「…………い、生きられません………吸い取り過ぎるのです………生命力と比例する魔力に反応して吸い取り切ってしまうのです」
「誰だ!そんな指示をだしたのは!」
「ひぃっ!」
ロマーリオは、伝えに来た魔道士に食って掛かった。
「お、王太子妃でして………」
「…………クソッ!」
「コーウェン!魔道士達が怯える!」
王太子妃と言えば、フィーネ。ロマーリオが城から出る頃にトンプソンとの子を妊娠し、王太子妃となったフィーナの妹だ。その彼女が関与するとはフィーナは考えていただろうか。
「もし、魔力を吸い取ったら呪いを掛けた者は如何なる?」
「わ、分かりません……呪い返しになるかもしれません」
「………吸い取るのは止めろ」
「コーウェン!」
一介の騎士が王太子妃の命令を覆す様な事を言って良い筈はない。
「な、何を貴方そんな権利……」
「俺はこの国の第三王子、ロマーリオだ!俺に命令出来る者は、国王とトンプソンのみ!責任は俺が取る!」
「だ、第三王子殿下……ですと?」
王子の顔を知らない者が多い魔道士達。それもその筈で、国王は王子達の顔を公開しておらず、幼い時に王子達の呪縛に関わってきた者は僅かな者だけ。そして、王太子になったトンプソンだけが表に出ていた。現国王の方針で、王位継承権争いで、負けた者は生命を取られる事も多く、自身も兄弟と、その母達を排除してきた経緯があり、それを表立って出す訳にはいかず、王子王女の人数も公開していなかった。
ロマーリオは兄達と王位を争うつもりもなく、政には拘わって来なかった為、トンプソンが王位継承権を持っても殺される事はなかった。第二王子は排除され、役立たずと見られたら排除された弟も居たが、ロマーリオ自身何人兄弟が居るかも分かってはいない。
「生命迄取るな………ギリギリに制御しろ」
「………わ、分かりました……少しだけ足掻いてみます……出来なければ吸い取るしか恐らく手は無い事はご了承下さい」
魔力を吸い取る魔法具を、コレットに翳される。
「ユージーンが作った物か?」
「は、はい……我々ではユージーン様を超えられず……」
―――ユージーンがフィーナと会えていたりしたら、コレは予想していた、とかないのか?
古びた魔法具を見ると、ロマーリオも奥底に鎮めた記憶が蘇ってくる。コレットが乗せられている魔法陣も、フィーナの両親が乗せられ、魔力を吸取られた場所なのだ。
「………うぐっ……」
「ロマーリオ殿下!」
思い出すと吐気がする。人道的な事だと信じて疑わなかった幼少期の自分に殺意さえもあるのだ。コーウェンとして生きて、ユージーンに謝罪をして、この生命を捧げてもいい、とさえ思い騎士団に入ったのに、謝罪しなければならないのはユージーンだけで無かったと知らしめた存在フィーナ。
フィーナが、王と自分に恨みを持っているのを知りながら、回避させようと思っているのに、解決策が見つからないまま、長年藻掻いてしまった。それを思うとロマーリオは吐気が収まらない。
「休みますか?」
「………いや……見届ける……呪い返しにさせてたまるか……止めれなかったら寸前で魔法具を壊さなきゃならないからな」
「そ、そんな事をしたら解決にならない!これは1つしか無いんです!」
「無能なら無能なりに考えろ!」
「「ひぃぃっ!」」
サムエルに支えられて頼りないなりのロマーリオに、魔道士達は怯えている。それだけ威圧的な態度を示すのだった。
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