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しおりを挟むリーヒルが国王になり、グレイデル元公爵と、ダーラ元王妃の裁判が行なわれた。
朝から始まる裁判に傍聴したいという貴族や平民も集まって来る。
レティシャを長年、冷遇させる様に裏で手を回していたグレイデル元公爵。証人として何人かの貴族が話した。シュピーゲル国の筆頭公爵家の立場から、逆らえない貴族が多く、沈黙を貫いていた様だった。その証人の貴族達も、処罰を受ける。財産や領地の一部を没収や事業撤廃させる等、様々な処罰が与えられる。
レティシャが二年前の間、何処に居たのかは伏せられたまま、グレイデル元公爵の管理下で監禁されていた、とされた。そして、囚人の毒殺の証拠として、毒の成分、入手方法、グレイデル元公爵家の邸に、同薬物があった事もあり、信憑性を増した。
「グレイデル公爵家は取壊し、全財産を没収。血脈の者で犯罪に加担した者は、それぞれ裁判を行ない、似合った年数の禁固刑とする。そして、私もグレイデル公爵家の血筋の為、処罰を考えたが私の私財の半分を国の税に当て、各地の領地に振り分け、孤児院や子供達の為の教育施設の為に使う」
リーヒルの私財は、国家予算の3分の1はあり相当なものだった。
「へ、陛下の私財迄……」
「私の私財について意義が無い事は、先日貴族会の会議で決議で決まっている」
グレイデル元公爵の処罰に関しては主犯格という事もあり、極刑。いわば死刑と判決が降された。自ら手を加えてはいない、と主張したグレイデル元公爵だが、多くの人間が亡くなっている。レティシャの誘拐や監禁、殺人未遂、関連した人間を殺害、という重罪だ。当然と言う民衆の声と、重過ぎるのでは、という貴族達の声も挙がるものの、それはレティシャ反対派からの意見が大半で、隠していたオルデン前国王にも責任がある、と迄出てくる始末。
「オルデン前国王が何故に責任があるのか?それにグレイデル元公爵の所業には関係は無い。国王の事は国政にも関係の無い私情。前国王の生命を奪おうとした暗殺計画をしたグレイデル元公爵の父の罪は、もう亡くなっている者により処罰はしてはいない。その彼がレティシャ王女の両親を殺害した証拠はグレイデル公爵家邸からも出て来ている。その事でレティシャ王女から裁判を起こされれば、もっと罪状は重なるとは思えないか?この裁判はレティシャ王女の馬車の事故に見せ掛けての殺人未遂、誘拐、関与した人間への殺人。レティシャ王女の両親の裁判ではない」
「………」
もう、反対派からは言葉は出なかった。
「グレイデル……何か言いたい事は?」
「………全ては、リーヒル……お前の為に…」
「私は貴方の駒ではない、叔父上……無いとみなし、ダーラ元王妃の裁判に切り替える」
「其方が………レティシャを、あの娘を妃にすると言ったからではないか!」
「…………それならば、私とレティシャを会わさない様にしておけば良かったのです。レティシャの両親を殺害したから、父上はレティシャを引き取った………違いますか?全ての元凶はお祖父様ではありませんか」
「…………くっ……」
分かってはいたのだろう。レティシャの両親が、レティシャを育てて平民として育っていれば、リーヒルと出会わなかったのかもしれないのだ。もし出会い恋に落ちたのなら、また成り行きは変わっていただろう。
「お兄様、お見苦しいですわ」
「っ!………ダーラ!お前もだ!グジグジと悩み、私に相談等してくるから、手を貸したのではないか!」
「…………娘を傷付けておいてよく言いますわね………お兄様にも娘が居ますのよ?お兄様の目的は、リーヒルにお兄様の娘を娶らせる事。レティシャの出自はと置いといて、他の令嬢がリーヒルと婚約しても、阻止されていたと思いますわ」
「っ!」
ダーラ元王妃は、それも予測していた様だ。
それを聞いてしまうと、レティシャは関係は無くなってしまう。
「わたくしの裁判です。お兄様は黙って下さいな」
「グレイデルには証人として意見を求める迄、発言を認めぬ」
ダーラ元王妃の裁判が始まり、始めこそ騒がしい場であったが、静かに進んだ。
ダーラ元王妃の経緯は、女達からは同情の声も聞こえた。
「お、王妃様……」
オルデン前国王が、何故話さなかったのも知らなかった民衆は、グレイデル公爵家の処罰は妥当だ、と罵倒が始まり、また騒がしい裁判となっていく。
「………陛下」
「何だ?グレイデル」
リーヒルが母を旧姓で呼ぶ等、初めての事だ。
「わたくしは、嫉妬も憎悪もございません………あるのは後悔だけ……それは、人を傷付けた事、信じなかった事の後悔……極刑で構いません………わたくしは愛する方を………信じなかった罰を受ける覚悟は出来ております」
「…………判決を行う……ダーラ・グレイデルの処罰、禁固刑、若しくは死刑、何方が相応しいか………皆の者に問う」
「禁固刑!」
「…………し、死刑!」
「禁固よ!禁固刑!」
「陛下!温情を!」
様々な意見が飛び交う中、ダーラ元王妃は目を閉じ、瞑想していた。
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