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「父上!母上やグレイデルの処遇がまだな不安定な時期に廃位だ等と!」

 翌日には、オルデン国王の廃位の話や、ダーラ王妃、グレイデル元公爵の捜査で慌ただしくなっていた。

「この時期だからこそだ!」
「そんな、父上が廃位になるのなら、私でしょう!私はグレイデルの血を受け継いでいる!」
「では何か?余はもう兄弟は居ない!唯一の子はお前だ!お前が王太子を降りたら誰が国を治める!余にまた妃を娶り、子を作らせるのか!余の歳も考えよ!余にはダーラだけだ!」
「良いんですか?私は犯罪者の子ですよ?」

 確かに、リーヒルは犯罪をした者の孫であり、甥であり、子でもある。

「他にお前より優秀な者が居るのか?」
「知りませんよ」
「では、リーヒルが王太子を辞するなら、レティシャの婚約者も外れるという事だな?レティシャの夫になる者に継承権を与えるか………」

 なかなか承諾しないリーヒルに、オルデン国王は強硬手段に出ようとしている。

「なっ!レティシャは誰にも渡しませんよ!」
「では、お前は王位を継ぎなさい」
「…………お、横暴な言い方ですね、父上」
「とにかく、裁判の日迄に国王となれ、リーヒル」
「…………母上に刑を執行せよ、と?」
「裁判は、物的証拠と証人で、民衆の判断だ。大半が求める刑をお前が最終的に判断しなければならない。余では甘さが出る」
「逃げたいだけじゃ……」
「…………ダーラは余より、お前に託したのだ」
「…………」

 真面目な話だという事は分かっていた。
 深い溜息がリーヒルから漏れ、暫く沈黙になる。

「分かりました。父上の廃位、認めます………但し!臣下達の多数決承認だったらですよ!」

 オルデン国王の廃位は多数決の承認は若干数多かっただけで、まだ早いという声もあった。

「まだ陛下はお若いではないですか」
「そうです!王太子殿下はしっかりされておられますが、まだまだ勉強不足では……」
「其方達、レティシャ反対派であったな……」

 そう、多数決で反対したのは、レティシャ反対派の貴族が殆どだ。
 グレイデル元公爵の所業で、暫く息を潜めてはいたが、まだまだリーヒルの妃にレティシャを反対する者も少なくない。

「ゔっ………」
「出自については証明されたではないか。王太子とレティシャとの血の繋がりは無い。ただの平民出自の娘が王太子と恋に落ちたと思えば良い」

 確かにそうなのだが、年頃の娘を持つ貴族の親は、娘を王妃にさせたいのだろう。

「無駄な足掻きだ………私はレティシャしか愛さないと言うのに」
「余も、王太子のこの頑なさは知っているのでな……レティシャを幼い時から王妃教育はさせていた。ダーラを教育者としてな」
「元王妃を、ですか?………ですが、元王妃はレティシャ殿下を……」
「それはそうなのだが、レティシャが王妃の素質がなければ、余とてリーヒルの妃にさせよう等とは思わぬよ………妃にさせようとして、教育したと言ってもいいがな」

 貴族達は、あまり表に出ないレティシャが分かってはいないのもあるのだが、王妃として貴族や民衆に親しまれたダーラ王妃が教育したレティシャなら、と思う者も居た様だった。
 結局、オルデン国王の廃位は認められ、その夜にはレティシャの耳に入る。
 祝祭の日からレティシャはリーヒルに夜会うのは久し振りだった。それだけリーヒルは忙しくしていたのだ。

「お義父様が………廃位……」
「私が国王になる」
「…………そう…です……か………」

 レティシャは複雑な顔してリーヒルの言葉を聞いている。

「父上が国王を辞すれば、私が国王、レティシャが王妃候補だな」
「………」
「何だ?嫌そうだな」
「こんな……形で……継承なんて……嬉しいと思います?」
「……まぁ、ね……私も聞いた直後はかなり父上を詰ったよ」

 リーヒルも複雑なんだろう。犯罪を犯した血脈の王子なのに、責任を取る訳でもないのだから。

「それより、レティシャ………」
「はい?」
「私が、部屋に戻る時間は聞いていたのだろう?」
「っ!」

 そう、レティシャはリーヒルが部屋に戻る時間を予め聞かされていて、それ迄に準備をして先にリーヒルの部屋に来て待っていた。

「何故、ガウンで隠してるんだ?」
「そ、それは……義兄様と……お話……ある……か………と……」
「………まぁ、話は父上の話ぐらいだが、それは顔を合わせて直ぐに言うつもりではあったし……」
「お、お風呂……入って……ない……ですよ?」
「………あ!」
「?」
って言ったな!」
「…………はい……言いました………よ?」

「………あ……」

 レティシャはリーヒルの名を呼ばなかった為に、リーヒルは拗ねる。
 すると、リーヒルはレティシャが羽織るガウンの紐を解いた。

「っ!」
「…………うん、可愛いね、レティシャ」

 レティシャが着ていたのは、以前アンが用意し、着させていた夜着だった。

「アンは気に入らなかったけど、アンはいい仕事したな………風呂に入って来るから、レティシャは………」
「え!」

 リーヒルに抱き上げられ、ベッドに乗せられるレティシャは、手首をガウンの紐で結ばれてしまった。

「良い子で待ってるんだよ?」
「そ、そんな……これ……や……んっ、んんっ!」

 深いキスをされて、感じてしまいレティシャはトロンとした顔をさせられたまま、リーヒルは風呂場へ行ってしまった。
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