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しおりを挟む未央理が通う三条高校が1週間、テスト期間に入った。
毎日発狂しながら、机に毎教科、問題を解きまくり、書くだけ書いて、地獄の1週間終わらせた。
「終わったねぇ、試験」
「やっとね……」
「未央理、疲れきってる」
「私、皆程頭良くないし」
「そんな未央理に、今日打ち上げしない?未央理いつも送迎あるからさ、たまには皆でお茶しようよ」
「あぁ!行きた~い!前の学校や中学とかは毎日、学校帰りは友達と遊んでた!」
進学校で、なかなかそういう事が出来る日は少ない。皆、大学進学の為に塾通いが当たり前だ。だが、その塾前に多少の時間がある者は、時間潰しにしているという。
「じゃ、決まりだね」
「でも、彼氏とデートとかは無い訳?未央理」
「………あぁ……聞いてみる……ちょっと連絡してみるよ」
未央理は友達から少し離れて、スマートフォンを出した。同じ高校の敷地内に居ながら、その話をしに行く事は出来ない。
『あれ、君………』
「?………あ!オリバーさん!」
『やっぱり………え?ミオリってここの生徒なの?』
『っ!』
しまった、と未央理は身震いする。
教員として赴任するオリバーが、秀平との結婚の事を秀平がどう説明しているか分からないし、何故制服姿の未央理と、大人びて背伸びした未央理が、直ぐに一致させられるのか。
『オリバーさ……ゆっくり、話て……』
『制服姿可愛いね~、シュウも罪な男だよ。自分の奥さんが………むぐっ!』
奥さんというワードが出た瞬間、未央理はオリバーの口を手で塞いだ。何を話たのかは全部理解出来ない。だが、それを口止めしなければならない、と第六感が教える。
『黙って!』
『…………』
「きゃっ!」
『………ミオリ、可愛いね。その声………此処が学校じゃなきゃ、直ぐに味わえるのに』
「やめ……」
口を塞いだ未央理の手をオリバーが掴み、指の間を舌が這う。
「未央理~!彼氏に許可取れた~?………え?」
「ヘルプ!」
「え?……」
『おっ!可愛い娘多いね~、ミオリの友達?』
『離して!』
逃げようとする未央理の手を持つオリバーがしている行為は、変質者に襲われ掛かる女子生徒だ。
「未央理!」
「あ、明日香~!」
『分かったよ、離すから………職員室何処?この学校の英語教員に赴任してきたんだよ。道を聞こうとしたら、知り合いが居たからスキンシップだ。だけど、照れやだよね、ミオリは』
『そ、そうなんですか……職員室はその校舎入って右にあります』
『本当?ありがとう』
明日香は、英語が堪能なのかオリバーに道案内して事無きを得たが、未央理にしたら冗談に済ませられる訳はなく、その焦り様の未央理を気遣う。
「だ、大丈夫?未央理………今、あの人に手を取られて……な、舐められてなかった?」
「気持ち悪~い!手洗う!ありがとう……明日香助かったよ~」
「何か知り合いって言ってたけど……」
「………この前、ナンパされたんだよ……デート中に彼氏が離れてた時に」
「え………彼氏、知ってるの?」
「知ってる……見てたし、止めてくれたから」
「………うわぁ……如何するの?うち等のクラスの教壇に立ったら……」
「そうなったら、英語の授業サボる!」
「いや、それは無理だって………退学になるよ?授業受けないと」
「…………マジで~?……やだぁ……」
単位が取れなくなるので、授業をサボる事は禁止になっている学校だったのだ。そんな事も知らない未央理は、校則さえも把握していなかった。
その未央理の彼氏ではなく夫、秀平はオリバーと再会する。
『オーリー、これから宜しく頼む』
『シュウ、君は罪な男だね。妻と言っていたミオリがこの学校の生徒だなんて』
『………会ったのか?』
『さっきね……可愛かったなぁ……ちょっと揶揄ったら、きゃっと悲鳴挙げてさ』
『………オーリー、以前言っておいたが、教員以外の生徒達はアイツが結婚して、俺の妻だと知らない。日本では学生結婚はナーバスな問題だ。アイツだけじゃない、教員が学生と恋愛するのはやめろよ?』
『堅苦しいなぁ、日本は……自由に恋愛したって同意があればいいじゃないか』
秀平は、以前オリバーが未央理をナンパしているのを見て、友人だろうとオリバーが未央理を気に入っている様だったのが気に食わない。
『真っ直ぐ職員室に来れば良かったものの……』
『あぁ、そういえばミオリ、友達と遊びに行きたい、とか言ってたな』
『友達?』
『アスカ、て呼ばれた娘達と……日本語だったし、少ししか聞き取れなかったな』
『………そうか………確認してみる』
『過保護か?お前……遊びに行かせてやれよ』
『煩い』
秀平のスマートフォンにも未央理から連絡が入っていたのは、オリバーと再会する直前に見たのだが、内容は見れてはいない。ポケットから取り出したスマートフォンには、やはり未央理が明日香や他の友達と遊んでから帰りたい、という内容だった。
金曜だという事もあり、テストの疲れを労ってやろうとは思ってはいた秀平だが、羽目を外さない事を念を押し、未央理には許可を出すのだった。
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