貴方は私を虐げてきたのではないのですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
上 下
19 / 41

18

しおりを挟む

 ホテルの部屋からも見えると、秀平から聞かされて、部屋に入ると未央理は直ぐに確認した。

「急に抑えたから、ツインルームだけどな」
「充分綺麗に見えるよ?もっと綺麗に見える場所は無いの?レストランからの様に」
「あぁ………スィートなら見えるんじゃないか?」
「………ふ、ふ~ん」
「泊まってみたいか?」
「い、いや………いい………高そうだもん」
「プッ………貧乏性だな………風呂入ろうか……一緒に……」
「!…………ひ、1人で入る!」

 窓枠に寄り添って、夜景を見ていた未央理の手に重なる秀平の手が、やらしく絡められると、未央理の身体が跳ねた。
 咄嗟に手を引っ込めた未央理が、緊張しているのが伝わる秀平は笑い飛ばす。

「はははっ………先に風呂入ってこい」
「………う、うん」

 重ねられた手を胸の前で庇い、身構える未央理の緊張が、秀平にも移っていたのだが、お互いに落ち着かせる為に、少し距離と時間を置いた。
 バスルームへと向かう未央理が、ドアを閉めると、秀平もやっと一息つけた気がする。

「………はぁ……何やってんだ、俺……もう少しクールだった筈なんだが…………如何でもいい女との違いか?」

 セットした髪をくしゃくしゃと掻き毟り、スーツのポケットから用意していた物をベッド脇に置いたが、直ぐにスーツのジャケットに戻した。

「………後にするか……」

 暫くして、シャワーを浴びて出て来る湯上がりの未央理に気付くと、秀平はすれ違う。

「待ってて……俺も入って来るから」
「………う、うん」

 ホテルのバスローブを羽織り、メイクが落ちた未央理は、年相応に戻ってしまったが、それは秀平の性欲範囲内ではあるので、嗅ぎなれたシャンプーでは無いだけで、違うシュチュエーションがまた緊張を戻した。
 そのニオイも、直ぐに秀平も未央理と同じになる事が未央理にも分かるので、同じ様に緊張を思い出す。

「び、びっくりした………す、直ぐに入ってっちゃうんだ……」

 未央理は何処に座って待っていていいか分からないので、ソファに座ってみた。
 ベッドで待つには難易度が高い気がしたからだ。

「あ………ジャケットに皺付くよね……」

 ソファの背凭れに掛かる秀平の上着をクローゼットに掛けようと持ち上げると、ポケットから幾つか物が落ちた。

「っ!」

 個包装のスキンが連なって落ち、ジュエリーボックスも床に落ちる。

「ヤバイヤバイ!」

 慌ててポケットに戻し、背凭れに戻したが、ジュエリーボックスがソファのクッションにまた落ちた為、気になってしようがない。

 ---あ、あれ何!ゴムは分かるけど……見てない見てない!見てないフリしなきゃ!

 勘違いして、未央理にプレゼントされる事を期待してはいけないと思い、それを見ない様にすると、ベッドか壁だ。

 ---ひゃぁぁぁっ!ベッドなんて見たら余計に緊張する!スマホで気を紛らわせ!

 スマートフォンを取り替えられてから、マトモに触っていなかったが、友達が出来たのもあり、そのスマートフォンを触る時間も増えてきた。

 ---あ……明日香から……

 カラオケに誘われて、結局断ってしまったが、その後にまた連絡が入っていた。

「なっ!………あの男……何明日香に……」

 『補修後に、彼氏にデート誘われちゃった。そっちに行っていい?』と連絡を入れている。
 明日香はそれに違和感なく了承していたが、月曜に根掘り葉掘り聞かれそうな予感がしてならない。キスマークを見つけられてから、誤魔化してきたのに、これはもう肯定するしかないまま、相手の事を聞かれて、秀平の事を話を出さないままで、恋愛話をする事になるからだ。

「お待たせ」
「っ!」
「何びっくりしてるんだ?」
「な、何でもない………緊張してるだけ……」
「………そうか…………あ……」

 秀平は髪をタオルで乾かしながら、上着から出ている物を見つけた。

「………未央理、見た?」
「何を?」
「………まぁいいや………」

 秀平はソファのクッションの上に落ちたジュエリーボックスを手に取り、中身を出すと未央理に見せた。

「………これ何?」
「何って誕プレ………誕生石のネックレス……付けてやるから、髪持ってろ」
「………誕プレ用意してたんだ……」
「記念日デートだから当たり前だろ?……何が気に入るかは分からなかったから、誕生石なら妥当な物かな、と………指輪はまた今度な……サイズ分かんなかったし……うん、いいんじゃないか?」
「見れないよ、私………ちょっとコンパクト……」

 バックの中にある化粧ポーチに鏡が入っていたから、未央理はバックに手を伸ばそうとするが、秀平に手を取られた。

「え?」
「鏡はいつでも見える………今は早く欲しい」
「っ!」

 ベッド迄数歩だが、その数歩でまた鼓動が速くなった未央理。
 ベッドに向かい合わせる様に座らされ、 見つめ合った。

「っ!………ち、近い顔……」

 未央理の頬に秀平の手が撫でる。

「もっと近くに行きたいんだが?」
「………ど、如何すればいいか分かんない……」
「このままでいいぞ………あぁそうだ……膝立ちしてくれ」
「膝立ち?………こう?」
「そう………言っておくが、俺から口にはキスしないからな」

 少しだけ、秀平の顔より高くなった未央理の顔。
 秀平の左手は未央理の腰を支え、右手は頬や耳朶を擦る。
 未央理はピアスを外していたので、指での愛撫はまだ未央理には擽ったかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...