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しおりを挟む内装も商品も、高級な物ばかりの店に入った未央理は圧倒され、恐る恐る服の値段のタグをチラ見した。
---値段書いてない!何で!
「いらっしゃいませ、三条様」
「彼女を5歳増しに全身コーデしてくれ……下着もね」
「あら、三条様には珍しい可愛いらしいお嬢さんですね」
「妻なんだ……今迄の女は忘れてくれ」
「畏まりました……奥様」
「………え?……奥様?………は?私!?」
「俺の妻は君だろうが」
「え!………ちょっと………は?」
「5歳増しに色気増してこいよ」
店の雰囲気に飲まれ過ぎて、店員達によって着せ替え人形にされ、髪もセットさせられた。
「下着も数着買っておきたいんだ。自宅に配送も頼む」
「あらあら……三条様は夢中なんですね、奥様に」
「可愛いだろ?彼女」
「まだお若いでしょう?」
「………そこは詮索無しで……大人びたら今はそれでいい……俺の手でいい女にしたいからね」
「お任せ下さい」
着せ替え人形をし終えた未央理が、疲れた顔で試着室から出て来る。
「………つ、疲れた……」
「………鏡見たか?」
「………わ、私じゃない……これ……」
「正真正銘、俺の奥さんだけど?似合ってるぞ、未央理」
大人びた服装なんて初めてで、鏡に見る自分が16歳には全く見れなかった。
パンツスーツにクールな印象に仕上げられた未央理は、本当に5歳増しになったのだ。メイクも未央理自身では大人っぽく等出来ない仕上がりだった。
「じゃ、次行くぞ」
「何処に?」
「未央理が好きか如何かは分からないが、俺に任せてみたら如何だ?」
「………う、うん」
ブティックを出るとデートスポットでも有名なビルに入って行く。
「か、観覧車!」
「夜景も見えるからな、一周したら飯食べよう……どうせ並ぶのは確定してるから、丁度いい時間になるしな」
「………来たかったんだ、此処……」
「未央理、人にぶつかるぞ」
「っ!………ご、ごめん……」
観覧車を見上げていた未央理に、通行人がぶつかりそうになり、秀平に抱き寄せられる。
「外見大人びてもまだガキだな」
「い、いいでしょ!別に」
抱き寄せられた身体を離そうと未央理はするが、秀平は離さない。
「………ね……近い……」
「デートなら当たり前」
「………か、かもしれないけど………」
「お、綺麗な娘が居るじゃん」
「男連れだろ?無理だって」
順番待ちにチラホラと目線を感じてはいた未央理だが、秀平はその目線を感じる度に、未央理の身体を撫でていた。
「ち、ちょっと……本当、近いから……」
「5歳増しにしたは良いが、目線が未央理に行き過ぎなんだよ」
「………私を見てたの?これ……アンタじゃなくて?」
「見られてるのは未央理だって………あ、次だぞ」
「え?………やった!」
「っ!」
「何?顔赤いよ?」
「キスしたくなった………」
「なっ!」
笑う顔があまり見られなかったからだろう、今の未央理の笑顔は、秀平に効いた様だ。
「エロ教師」
「………今は夫」
「どうぞ、足元お気を付けて」
「乗るぞ」
「あ、うん」
繁華街の中に、夜景スポットとして人気の観覧車に乗れるとは思わなかった未央理は、夜景を楽しんでいる。
「嬉しいか?」
「そりゃ、嬉しいよ………連れて来てくれてありがとう」
「俺も、未央理の笑顔が見れて嬉しいよ」
「っ!」
「喧嘩が多いからな」
「したくて喧嘩してる訳じゃないよ」
「分かってるさ………今を楽しめばいい……未央理」
「え?」
「………」
「っあっ……っ!」
名前を呼ばれ、未央理は秀平の横に座らされた。
「ち、ちょっと!」
「しっ………」
喧嘩をしたくない雰囲気に、秀平は未央理の唇に指を当てたと思った直後、秀平の唇が未央理の額や頬、鼻に触れた。
「っ!」
「………キスしたかったんでね」
「………ば、馬鹿じゃないの?」
「口にはしてない………口にする時は未央理から貰わないとな」
「………エロ教師!」
「名前呼んでくれるのはいつになるやら……」
「アンタなんて、エロ教師でいいの!」
だが、未央理は秀平にキスをされて、ドキドキが止まらず顔が赤い。
「後でベッドの上でたっぷり可愛いがってやるよ」
「す、好きな人じゃなきゃ嫌だ!」
「それなら、連れて来いよ……それ迄は練習台にしたらいい………俺が夫である限り、未央理の横の場所は譲らない」
「っ!」
喧嘩する時は挑発的で、その延長線上で口説く秀平が、時折甘い言葉が出るので困る顔を見せる未央理だが、悪い気はしなかった。
「お疲れ様でした~」
「一周早いなぁ」
「………そ、そうだね……」
「夜景見れなかったな、俺」
「な、何を見てたのよ」
「未央理しか見てないけど?」
「………え……」
「腹減ったな………飯食いに行くぞ。予約は入れてはいないが連れて行きたい場所がある」
「何処?」
「この観覧車が見える場所」
「?………いっぱいあるじゃん、街中だよ?此処……っ!」
再び、肩を抱かれ、秀平の言葉に、鼓動が速くなっていくのを未央理は感じた途端、話題を変えたり、スキンシップをするのだと、それが秀平の癖だと未央理は気付いた。
秀平を見上げ、横顔を見ると、それが照れ隠しなのだと秀平の耳の赤さが伝えていた。
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