52 / 53
エピローグ
エピローグ①
しおりを挟むローウェンがアルジャーノン国の王になりグレイシャーランドに戻って来た。
まだ、悪阻が治まらないミレーユが迎えるより、先にローウェンと公爵になったヴァルムが着いてしまった様だ。
「足元気を付けなさい、リタ」
「はい」
母エリザのエスコートで、ゆっくり歩く。
「部屋で待っていても良かったのではなくて?」
「お出迎えしたかったんです」
漸く、王城前に着くと、馬車からローウェン達が降りたところだった。
「あなた」
「エリザ、ミルド、ミューゼ………迎えに来た」
「お父様、アルジャーノンに帰れるの?」
「ミューゼ、そうだよ」
「僕、姉上の赤ちゃん見たかったな」
「お父様、おじいちゃんになるんだよ!」
ミルドとミューゼが嬉しそうに言うと、ヴァルム公爵が驚く。
「リタ!本当か!」
「お父様…………はい……ちょっと悪阻が重いようで、お母様から助言頂きながらなんとか…………」
「そうか………おめでとう……リタ」
知らない間に、ミレーユも変わっていたのだ。
「あ、お父様泣いてる!」
「な、泣いてはいない!」
「泣いてたわね、お父様」
「うん!」
翌日にローウェンとヴァルム公爵の家族達はアルジャーノンに帰って行った。
「寂しくなるな………」
「………えぇ……産まれたら、アルジャーノンのヴァルム公爵領に行かせてね?」
「勿論だ、ローウェンとナーシャの結婚式もあるからな……ローウェンには伝えてあるぞ、子が産まれてから式を挙げろ、とな」
「そんな無茶苦茶な……」
「ローウェンもナーシャも、子の顔を見たいのさ」
その10ヶ月後、ミレーユは女児を出産する。その頃には、アルジャーノンも大分落ち着き、ローウェンとナーシャの結婚式の日程もグレイシャーランドに知らされた。
アスランに抱かれた王女はイレーネと名付けられ、アスランはすっかり親馬鹿になっている。
「………あぁ、仕事しなきゃ……」
「陛下、そろそろ仕事して下さい」
「執務室に連れてってもいいか?」
「仕事しなくなりそうだから駄目です」
アスランはミレーユに断られ、イレーネをミレーユに抱き渡すと、渋々執務室へと行った。
「子煩悩ですね、陛下は」
「本当ね………」
ミレーユが妊娠中から、その気配はあったアスラン。しかも女の子だったから尚更かもしれない。世継ぎとしては王子が欲しかっただろうが、国中が歓喜に湧き、ミレーユの友人達もそれぞれ伴侶に恵まれ、連絡も取れる様になった。
「本日はご友人と会われるのですよね?」
「えぇ、アルジャーノンの事も知らせないとね………話せなかった彼女達の家族の事も話さなければ」
「王城の応接室の準備を整わせておりますので」
「ありがとう……私も出迎えに出なきゃね、そろそろ来る頃だし」
数人の友人達が、初めて王城に通される。ミレーユは質素なドレスで砦で別れてしまった友人達を迎え入れた。
「マーニャ!ドーラ!マリエラ!」
「ミレーユ!………本当に王妃になったのね!」
ミレーユは8年もの歳月を共に過ごした友人達とハグで迎え入れた。
「王妃になったからと言って、私は私よ………砦で皆と離れ離れになってから、如何してるか心配だったの………アルジャーノンの事も知らせなきゃならなかったし」
「皆、元気かしら………」
「…………それは、今から話すわ……」
応接室にミレーユは招き入れて、アルジャーノンの事を友人達に話す。皆泣き崩れて意気消沈してしまった。
「来週なんだけど、私と国王陛下はアルジャーノンへ新国王即位の祝賀と結婚式に招待されているの………数日だけど、私達が育った村へ立ち寄るわ……ご主人達の了承があれば貴女達も同行しない?」
「い、行けるの?」
「帰れるの?」
「戻っても両親や妹達居ないと……」
住み慣れた村がもう無い、家族も殺された可能性もあると聞かされたマーニャ達は、帰っても如何していいかも分からない様子。
「今の領主は私の父よ………埋葬し、共同墓地ではあるけれど、慰霊碑も建てたそうなの……今は村ではなく、大きな街に変わっていってるわ………共同墓地には村人全員の名を刻み、家族を待ってもらってる……前国王ライオネルの行なった事は許せないから、と……あの領地出身者の女性達の帰郷は、アスラン陛下から許可は取れてるの……あとは貴方達が行く気があるかどうか………ご主人がグレイシャーランドに居るのだから、戻って欲しい、という前提ね」
「…………ミレーユ…ありがとう……私……アルジャーノンにお父さんとお母さんを確認してくる!旦那に行かせてもらう様に話てみるわ!」
「マーニャ…………うん、話してみて……ドーラやマリエラは?」
「私も戻って確かめたいわ」
「うん、私も!」
募る話はまだまだあったが、面会時間もあまり取れず、1時間程で解散したミレーユ達。しかし、直ぐにマーニャ達から手紙が届けられた。3人共に『同行する』と。それからは手紙のやり取りでしか出来ず、出発する日にマーニャ達に王城へ来てもらい、『侍女』として同行を許されアルジャーノンへと旅立った。
0
お気に入りに追加
251
あなたにおすすめの小説



淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる