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【番外編】新王帰還
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しおりを挟む「やっと来たか」
「ただいま」
アスランが王城の入り口に出ていた。ローウェンが砦から伝書鳩を飛ばし、連絡を受けて出て来ていたのだ。
「ローウェン様ぁ~~~!!」
「!!………ナーシャ!!元気だった?迎えに来たよ?もうねぇ、ずっとずっとずっと!寂しかったんだよ!!」
「私もです!16歳になったのよ!!早く妻にして!!」
「うんうん!アルジャーノンに帰ったら結婚式挙げようね…………あ、駄目だ……喪中だった……」
「ナーシャ、それぐらいアルジャーノンで待てるよな?………グレイシャーランドで待つより良いだろ?」
「はい!待てるわ!」
王城入り口でローウェンとナーシャが抱き合っている後で、ミレーユがゆっくりとヴァルム公爵夫人やミルド、ミューゼと歩いて来る。
「あなた」
「エリザ、ミルド、ミューゼ………迎えに来た」
「お父様、アルジャーノンに帰れるの?」
「ミューゼ、そうだよ」
「僕、姉上の赤ちゃん見たかったな」
「お父様、おじいちゃんになるんだよ!」
「リタ!本当か!」
「お父様…………はい……ちょっと悪阻が重いようで、お母様から助言頂きながらなんとか…………」
「そうか………おめでとう……リタ」
知らない間に、ミレーユも変わっていたのだ。
「あ、お父様泣いてる!」
「な、泣いてはいない!」
「泣いてたわね、お父様」
「うん!」
ローウェンとヴァルム公爵は、1泊して翌朝ナーシャやヴァルム公爵家族を連れ、アルジャーノンへ帰る事になった。
この3ヶ月間、ローウェンとヴァルム公爵はアルジャーノンでの事やライオネルの事を話す。
「ライオネルは最後迄変わらなかったな」
「寂しい方だったのよ……ローウェン様の優秀さに僻みが強くなって、人を寄せ付けなかったから……」
アスランもミレーユもしみじみと語る。子供の頃の印象から全く変わらなかったライオネルに同情等しないが、知っている相手だけに感慨深い。
「もうねぇ……8年振りに帰ったアルジャーノンは荒れてたよ……王都はまだマシだったし、通ってきた領地にもよるけど、閑散としていた街もあってねぇ、アルドール公爵もよく我慢していたな、て思う」
「そのアルドール公爵に散々仕事押し付けてますけどね」
「僕だって仕事してるよね!!」
「陛下は要領が良いのですよ………だから、それに合わせると、仕事量が皆に増えるのです………改革の速度が早過ぎるのは悪い事だとは思いませんが、皆の速度に合わせる事も大事かと」
「………仕方ないじゃん……教育係のヴァルム公爵の教えだったんだし……ね、ミレーユ!そう思わない?何でもかんでも、あれやってこれやって、て1日に終わらない量の勉強量を熟して行けば、要領良くなるよね!!」
「…………わ、私から言っても、ローウェン様の速度は恐ろしかったんですけど……」
ローウェンに対してライオネルが劣等感を抱くのは当然かもしれない。ミレーユでさえも追い付けない程の頭脳の持ち主なのだから。
「剣術は、ライオネルやミレーユには勝てなかったけどね」
「ローウェン陛下は、頭脳派ですからな」
「ローウェン様は顔だけじゃないものね~」
「ナーシャ~、褒め言葉も嬉しい~」
『はいはい』と、ローウェンとナーシャの2人の会話は、そう突っ込みを入れたくなる空気に変わってしまう。
「リタ……アスラン陛下………私はヴァルム公爵領、グレイシャーランドとの国境砦の管理をアルジャーノン側から管理致します………必ずや往来が出来やすい様に努力しますので、娘を里帰りしやすい様に、陛下もお願い致します」
「…………ど、努力します」
「いや、何……砦から1日半……5日程毎回帰して頂ければいいので、孫と一緒に………そして、陛下もご一緒にアルジャーノンの変化をローウェン陛下と共に変わるアルジャーノンを見届けて頂ければ幸いです」
「はい………義父上」
翌朝出発な為、夕食を共にすると休む事にしたローウェンだが、アスランと2人で話したくて、アスランの執務室で酒を酌み交わしていた。今は居ないライオネルの分のグラスと共に。
「大ッキライだったのに、急に居ないとなったら、ちょっと寂しくなっててさ………」
「…………兄弟だからじゃないか?」
「うん………母上がまた寂しそうでね……今更後悔しても遅いのに、暴走を止めようと思っても出来なかった、と言って泣いてた……シャルロットを、殴りながら性的暴行していたのも知ってて、僕に『白い結婚』だって言ってたのも、僕がアルジャーノンに戻らせない為だった、て……だから、亡くなったんじゃん………アルドール公爵を悲しませたのに傍観してた母上も許せなくなってきたよ、僕」
「前王妃からすれば、2人の息子の肩を何方も選べなかったのさ………」
「…………だと分かるんだけど、心情ではねぇ……」
ローウェンとライオネルの母は、ライオネルが国王になった以降、国政に関わる事をしなくなったという。それにより悪政になって行くのを分かっていても、ライオネルを止める事も出来なくなり、シャルロットへの暴行も強く戒める事もしなかった。
今は後悔の念により、体調を崩しがちになっている。
「だからといって、王妃が弱くてはいけないな」
「ナーシャは違うもん!」
「鍛えたからな、俺なりに……父上も厳しく教育している………知ってるだろ?」
「ミレーユを彷彿とさせたよ~、また違う愛らしさはあるけど」
「そのミレーユから、ナーシャは料理も教わって、格段に上達したからまたアルジャーノンでも作ってもらえ………幸せにしてくれよ?……結婚式にはリタと産まれる子と共に行かせてもらう」
「頑張るね!」
「あぁ………ライオネルとは違う治世にしてやれ、地獄からまた羨ましがるぐらいの国にしてな」
ライオネルの分のグラスに向け、ローウェンとアスランは乾杯をし直した。
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