【完結】性欲に溺れたその先は……

Lynx🐈‍⬛

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犯罪は晩餐会に

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 王都の街中にある神殿に、ミレーユとアスランが、結婚式の為に来ていた。

「…………駄目だ!今すぐ抱きたい!」
「………時間無いから駄目!」
「頼む!1回だけ!」

 ウエディングドレスを着たミレーユを見て、押し倒したい欲が募るアスラン。

「夜に…………ね?………また着ればいいんじゃない?」
「……………分かった………絶対だぞ!」

 侍女達が居てもお構いなしのアスランに、侍女達は困惑していた。

「そういう事だから、晩餐会の後にもウエディングドレス用意しておいて?」
「畏まりましたわ、妃殿下」
「本当に、しょうがない人……」

 ミレーユはアスランの頬を撫でる。その手も目もアスランには怒ってはいない。それが分かるから、アスランはそのミレーユの手を自身の手を重ねて優しい表情を返す。仲睦まじい姿は、これからの2人の幸せが永遠に続けられるという安堵感を与えた。

 コンコン。

『陛下、妃殿下………お時間でございます』
「分かった………さぁ、リタ……」
「はい……アッシュ」

 2人で神殿の祭壇前で婚姻を誓い、グレイシャーランドが崇拝する神への報告だけの儀式だ。正式に参列する者は家族だけ。アスランの父、前国王と妹ナーシャ、ナーシャの婚約者ローウェン、ミレーユの両親ヴァルム元伯爵夫妻とミルド、ミューゼの弟と妹だ。

「これより、アスラン・ジュード・グレイシャーとミレーユ・リタ・ヴァルムを夫婦と認める」

 既に婚姻はしていても、結婚式という儀式をするとしないとでは心の持ち用が変わる気がしたミレーユ。

「…………陛下……私……幸せです……」
「俺もだ」

 婚姻を成立された国王と妃を祝う為に、グレイシャーランドはお祭り騒ぎだ。若き国王が結婚した事は、国を安心される。神殿から王城への帰路は、フラワーシャワーで祝われた。

「陛下!妃殿下!お幸せに!」
「おめでとうございます!!」
「他国出身の私が妃になっても祝ってくれるのね……」
「あぁ、俺の母上もグレイシャーランドの女じゃないからな………貴族でも無かったし」
「アルジャーノン?」
「…………あぁ……だから、子供の頃は母上が実家に帰る時に同行していた……」
「…………そうなんだ……」

 苦労していたのかもしれない、平民から王族の一員になり、若くして亡くなった前王妃の話を初めて聞いたミレーユ。

「ナーシャ産んでから産後に病弱になられ、亡くなったが、幸せそうだったよ………父上は、それから一夫一妻制の法律を制定し、今のグレイシャーランドがある……唯一の自分の妃は母上だけだ、と仰ってな」
「…………素敵なお話……今度、お義父様に馴れ初め聞いてみたいわ」
「…………ああ……止まらなくなるけどな」

 何故ローウェンと親しかったのか、とは思ったが、国交以外の為もあったのだ、と理解し、王城へと帰って来ると、直ぐに晩餐会が始まる。
 急ぎドレスを着替え、晩餐会が行われる。既に、参加者も飲食を楽しんでおり、ミレーユはアスランと共に賛辞を受け取りながら、会場入りした。
 その姿を睨み付けるライオネルは少し離れた場所で別々の者と話をしている男達を見付けた。

 ―――あの男……ヴァルム元伯爵……アルドール公爵………アルドールは分かるが、何故ヴァルムも居る……

「おい………」

 給仕をしている城の侍従に、ライオネルは声を掛ける。

「あの階段の近くに居る男は誰だったか分かるか?………白銀の髪を後ろに流している男だ……」
「…………階段の近く………あぁ、妃殿下の父上ですね……確かヴァルム様かと」
「……………妃殿下の父親……だと……」
「はい、陛下と妃殿下の結婚が決まって、陛下が来賓としてお招きされた方でして」
「…………あぁ、そうか………ありがとう……あと、これを頂こう」
「ごゆっくり……」

 侍従が持つグラスをトレイから受け取るライオネルは一気に喉に流し込むと、そのグラスを握り締めて割った。

 ―――騙したな!アスラン!ミレーユ!!………アスラン………ミレーユを奪ってやるからな!!

 侍従達にはライオネルが要注意人物だとは通告していなかった。
 ライオネルは急ぎ会場を出て側近に声を掛ける。

「おい!会場にヴァルムとヴァルムの娘ミレーユが居る!捕まえろ!ミレーユは国王、アスランの妃だ!」

 しかし、同じ会場に居るヴァルム元伯爵もアルドール公爵も馬鹿ではない。ライオネルの同行は逐一確認し、ローウェンも侍従に紛れ込ませた兵士も配置しているのだ。簡単にライオネルの思い通りにはさせない。

「気が付いた様だな」
「当然でしょう………わざわざ目立つ場所に我々は居ましたからな……そして、ライオネルの近くに彷徨くのはローウェン様の配置した兵士達………騒ぎを起こさせられたとは考えてもいないでしょう」
「…………ヴァルムよ……熟、其方と争いたくないものよ」
「………よく仰る………散々煮え湯を飲まされたのは私も同じ……」
「ふっ…………今は同志だ……心強い」

 ライオネルはというと、アスランとミレーユ、ヴァルムを見張らせて会場に戻る。

 ―――付け焼き刃だが、準備はさせた……どちらかでも捕まえたら直ぐに出立し、グレイシャーランドとの国交は終わる………ふふふふふふ………

 ミレーユの知らない所で、謀が行われるのはあと数時間も無いだろう。
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