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視線の冷たさは恋慕であらず
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しおりを挟む「あ、あの………私の顔に何か?」
ミレーユは話をしていないのに、ライオネルから視線を感じ、顔を上げるとライオネルと視線が合った。
「アスラン…………ミレーユが見つからなければ、この女を貰う」
「………は?………ライオネル馬鹿な事を言うな」
「なかなか面白い女だからな………ミレーユとは8年は会ってないが、見目が悪かったら困る…………それなら、この女でも俺を楽しませてくれそうだ」
「兄上!!ミレーユは昔も今も可愛いに決まってる!!ミレーユはミレーユだ!!代用品扱いするな!!代わり等居ない!!ね、ナーシャ、君も思うよね?ナーシャの代わりなんて、誰にもなれないんだよ」
「ローウェン様は……前の婚約者と私とどっちが大事なの!?……ミレーユ様は可愛いかもしれませんが、今はローウェン様の1番は私よ!!」
「うんうん、勿論だよ~ナーシャ……あぁ、その目でいっぱい僕を蔑んで!可愛い可愛い僕のナーシャ………」
―――流石ローウェン様………空気を読んで下さるわ………ライオネル様からの目線が変わった……
ローウェンからしても、ミレーユがライオネルに奪われてはいけない、と思っている。ライオネルが目の前のリタという妃とミレーユが同一人物だとは勘付かれてはいけない。
「ローウェンは相変わらず、邪魔な空気を出す………」
「兄上の邪魔するのは、僕の十八番……ミレーユも王妃も、兄上になんて渡さない……撤回………いや………聞かなかった事にしておくから、兄上は兄上だけの女を探しなよ………ミレーユだって、8年貴族社会から離れて自由の身なんだよ………放置されて今更王都に、しかも兄上の妃にされたらかわいそうだ」
「ふん………ミレーユにとって、俺の妃になる事は名誉しかないわ」
―――名誉?地獄の間違いでしょ………
「ライオネル、その名誉という根拠は何だ?」
アスランの問いに、ライオネルはローウェンから目線を外す。
「国王妃になれるんだ、貴族の女共は俺の寵愛を受けたがっている」
「ローウェンとの政権争いに勝てたから、国王になれたんだ………ローウェンが勝っていたら、ミレーユというその女がどの道国王妃になっているさ………だが、8年お前と会うこともなく消えたのなら、国王妃には拘ってはいないだろう………違うか?」
「そんなものは、後から如何とでもなるな………リタは国王妃になりたかったか?」
「……………私ですか?………特に……好きになった男性が国王だっただけなので」
「そうだ、男で如何とでもなる!ミレーユを探して俺の元に連れて来い!アスラン!ローウェン!」
「「断る」」
アスランもローウェンも同時に返す。
「明日は結婚式…………そんな暇は無い」
「そうそう………兄上が探したら?街に居るかもよ?でも、女性に同意無く乱暴や連れ去るとグレイシャーランドはちょん切るからね、幾らアルジャーノンの国王でも」
「探せなかったら、リタを連れ去るだけだ」
「それでも同罪で~す!残念でしたぁ!」
ローウェンはライオネルを馬鹿にした態度で話す。
「ライオネル………グレイシャーランドの女達は、未婚でも既婚でも所有者が付いている………無関係な男が女達を略奪すれば、それだけで重罪だ………覚えておけ」
「ふん、女の同意させればそれで終わる……そうは思わぬか?リタ」
「…………私がライオネル陛下に同意する事は無いと思われます………私の身体も心も占めるのはアスラン陛下だけですわ」
―――虫唾が走るわ……
ミレーユがライオネルに『リタ』と呼ばれる度に思う。こんな事なら、偽名にすれば良かった、と。
「そういう事だ…………ミレーユという女を探すなら探せ………だが、探して連れて行く事は許可しん………帰国は明後日なんだろう?……見つかるとは思えんな………それに、名簿も見せる気も無い…………名簿ならアルジャーノンにもある筈だ……帰ってミレーユという名に想いを奔らせておけ」
「アスラン………お前、変わったな……」
「何が?」
「お前は子供の時は貧弱で、よく俺とローウェンに虐められピーピー泣いて、俺の言う事に従っていたのに」
「子供の頃とは違う………今は妃の身体を啼かせる事に夢中なんでね」
「へ、陛下!!」
食事中に話す様な話ではない、卑猥な言葉。
「何だ………処女ではないのか……如何だった?リタ………この男のモノは………クククッ………」
「…………陛下、そろそろデザート如何です?お好きな葡萄のタルトですわ」
ミレーユはライオネルを無視し、アスランにタルトを切って差し出す。
「貰おう…………卑猥な言葉が出たから口直しだ」
「陛下が、言い出した事ですわ!次は怒りますからね!」
「許せ、リタ」
「ご自分の言葉には責任をお持ち下さいね」
「……………」
ライオネルはミレーユの今の言葉に目を見張る。
―――よく言っていたな、その言葉を
ライオネルはミレーユを思い出していた。
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