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探る腹、探られたくない腹

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 ライオネルはアルドール公爵より3日遅れでグレイシャーランド王城に到着する。アルドール公爵はライオネルに不審がられる訳には行かず、アスランとの謁見の場には居なかった。

「ようこそ、グレイシャーランドへ」
「…………お、お前……」
「何か?ライオネル国王」

 ライオネルが城内に入り、馬車を降りると、アスランを見て驚いている。

「ホント、びっくりしたんじゃない?兄上」
「!!…………ロ、ローウェン……」

 ライオネルはアスランの後ろに控えたローウェンを見て、握り拳を作っている。本当にライオネルはローウェンを憎たらしくて仕方ない様だ。

「ローウェン………逆なでするから迎えるな、と言った筈だが?」
「いいじゃない………久々の兄弟再会をアッシュも祝ってよ………兄上にも会わせたいしね」
「………お前……婚約者が居たのか……」
「うん、可愛いよ~………本当に天使!以上に!」
「…………っ!!」

 ローウェンは神経を逆なでする術に長けている。ライオネルはこういうローウェンが嫌いで堪らない。ローウェンの婚約者になったミレーユに、直ちょくライオネルは話掛けていた。自分が王になる為に、ヴァルム元伯爵を部下にしたいが為に、娘婿になろうとしていたから。それをローウェンに知られ、わざと逆なでする事を覚えたのだ。

「アッシュの妃も天使の様だし………兄上は、次の妃迎えないの?病死された、て耳に入ったけど」
「…………何故、それを知っている」
「嫌だなぁ……僕だって、母上の子だよ?兄上と同じ母上なのに、連絡ぐらいするでしょ…………兄上はとは言わなかったし……今度、僕の天使を会わせたいなぁ……行っていい?」
「お前がアルジャーノンの地を踏むのは許さん!!」
「…………あ、そ………なら母上に来てもらわなきゃね~………母上はお歳なのに、長旅出来るのかなぁ?心配だなぁ………僕、グレイシャーランドでは宰相だから、その仕事振りも見て欲しいけど、来てもらうのは心配………」
「ローウェン………慎め………ライオネルがキレる前に………」

 ワナワナと身体を震わしているライオネルとローウェンの喧嘩を城前でしるにはいかない。

「ライオネル………さぁ、中に」
「アスラン……妃は出迎えには来ないのか?」
「…………あぁ、妃は結婚式後の晩餐会の準備に忙しい」
「女の比率が低いグレイシャーランドでは、女の扱い等知らんだろう?」

 が不慣れだろう、と馬鹿にするライオネルだが、アスランは気にも止めず、ライオネルに返す。

「………心配無用だ……女性比率が低いからこそ、女性への対応では考慮もしている。逃げられては困るしな………だから、アルジャーノンから未婚の女性達を買っているのだろう………アルジャーノンだけではない、エヴァーナからも女性達が来てくれる。その者達は帰る事は簡単ではないが、グレイシャーランドでの収入や物品を贈る事は禁止していない………
「…………そうそう……アルジャーノンとグレイシャーランドの砦の役人が、急に未婚女性が減った、て困ってたよ~」
「………確認させよう」

 ―――こいつ等……何処まで探っている?

 ライオネルからすれば、所々で棘がある言い方な様に聞こえる。

「さぁ、ここでゆっくり夕食迄茶でも飲もう」

 応接間にライオネルを通し、侍従に給仕をさせるアスラン。

「アスランの妃を見たいのだが?」
「だから、忙しいと言ったが?」
「来賓の俺に紹介しない失礼さがあるとはな」
「アッシュの妃は出来る人だから、侍従達が信頼して離さないのさ………僕の天使も彼女に夢中で寂しいよ」
「夕食には同席する」
「…………そうか……なら待つとしよう」

 カチャ。

 突然扉が開き、アスラン、ローウェン、ライオネルが扉の方を一斉に見る。

「あ!………義兄上……ご、ごめんなさい!使われてないと思って………」
「ミルド………悪いが来客中でな……」
「本当にごめんなさい!」
「何か用事だったのか?」
「ミューゼとかくれんぼして遊んでて……」
「………そうか………するなとは言わないが、庭でやっておいで」
「申し訳ありませんでした……お邪魔して」
「ミューゼを見つけて、城内では今は止めてくれ…………来賓が増えているから」
「はい!義兄上」

 ―――ミルド……?ミューゼ………?何処かで聞いた覚えがあるな……

「そう言えば兄上はどっちの砦からグレイシャーランドに入ったの?」

 今のやり取りを見ていたライオネルが考え込んだので、考えさせない様に咄嗟に話題を降る。

「………あ、あぁ、エヴァーナからだが」
「何で?」
「……………何故聞く?」
「え?エヴァーナ側から来るの大変でしょ……山越えあるし、日数掛かるし」
「アルジャーノンとグレイシャーランドの砦から来た方が早くない?」
「……………アルドール公爵領に用事があったんだ」
「ふ~ん」

 ライオネルにとって探られたくない腹を覗かれる質問をローウェンがした事で、ライオネルは考える事を止めた。
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