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動き始めたライオネル
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しおりを挟むナーシャの誤解も解け、ミレーユは王妃としての教養や勉強を始める事になった。それは、ミレーユがアスランに頼んだのもあり、始まった勉強に、何故かナーシャやミューゼも一緒にやる事になってしまった。
ミューゼは貴族令嬢としての勉強をした事が無いので、ミレーユにはついては来れない為、ミューゼの勉強速度に合わせてはいる。
「お義姉様の教養、問題ないですわよ」
「そんな事はないと思いますわ、ナーシャ殿下」
ナーシャは何故か、ミレーユに懐いてしまい、毎日空いた時間があれば会っていて、ローウェンは文句ばかり言っているらしい。
「ナーシャがミレーユに取られたぁ!どうにかしてよ!アッシュ!!」
「お前は仕事しろ」
アスランの仕事中にミレーユとナーシャが会うので、その事は如何でもいいと思っているが、ローウェンは要領が良い為、時間配分が上手く、仕事の合間にナーシャとイチャイチャする時間が無くて不服そうだった。
「ナーシャに会いに行くとさ、邪魔するな、て言うんだよ………まぁ、その時の冷たい目がまた良いんだけどさ……寂しい……」
「はいはい………」
コンコン。
「失礼します、陛下………アルジャーノンに動きがありました」
「…………何があった?」
「妃殿下が住まれていた領地が反乱の罪で、領主及び、その地の配下の街、村が荒れ地になりました」
「…………それはいつだ?」
「3日前から続き、廃墟となったと」
「動いたか………ライオネル国王は王都か?」
「はい、姿は見えなかった、と」
「分かった………王都の偵察部隊に引き続き動向を探らせておいてくれ」
「はっ」
ギシッ。
アスランはペンを置き、ローウェンと目を合わせる。
「どう………思う?」
「怒ってるねぇ……ライオネル」
「ライオネルの政権で不満要員は居るとは思うが………お前はそこから崩せるか?」
「あぁ…………ダメダメ……以前も突っ突いたけど、乗らなかったよ……ライオネルの恐怖政治が怖いのと、それで甘い蜜吸う奴らばっか………それなら、僕の派閥だった元貴族達の方から立ち上げた方がいいね」
「…………じゃ、やれよ」
「………簡単に言わないでくれる?……8年待たせちゃって、動いてくれると思うの?近況報告はたまにするけどさ……」
「密に連絡取ってるなら動くだろ………お前……ヴァルム元伯爵がグレイシャーランドに居ると、言ったか?」
ローウェンは、それを聞いて身を乗り出した。
「……………言ってない……」
「使ってもいいんじゃないか?」
「………ちょっと、伯爵と相談してくる」
「………サボるなよ~」
「サボるんじゃないよ!僕は時間の使い方が上手いの!!」
ローウェンは執務室を出て行った。
―――ローウェンがアルジャーノンに戻れば、国交もやりやすくなる……上手く行けばいいが……
だが、ライオネルの居るアルジャーノンも、行方不明になったヴァルム元伯爵の行き先をグレイシャーランドと見ていて、動向を探らせようとしていた。
「陛下、もう諦めては如何ですか!?ヴァルムはもう8年も政治の世界から離れているのです!役立つとは思いません!」
「では、お前はヴァルムの倍働けると言うのか!!」
「そ、それは……」
「俺が即位してから、財政が悪化!領主達は横領ばかり!税金徴収もままならん、仕事をしない者ばかり!!この前潰した領地!!あれは何だ!!干ばつした地を立て直す気さえも無い!!あの地に居たんだぞ!グレイシャーランドに潜伏しているのは分かっている!ヴァルムに戻る様に書簡を送れ!!戻らねば、ヴァルムの縁の者共を消すとな!」
ライオネルは本心では、たかが1人の人間に馬鹿らしいとは思っている。支持率の悪い国王への反乱分子が出て来る前に、支持率の高かったローウェンの懐刀のヴァルム元伯爵が居れば、悪政の中でも隠したい物から、上手く隠れ蓑にさせる為にヴァルム元伯爵が必要だった。
ライオネルの臣下に悪政を隠せる者を何人か就かせたが、ボロが出て国が破綻寸前に追い込まれている。私利私欲で財産を貯め込むだけの貴族ばかりで、王族への恩恵等ありはしない。
それは、ライオネルが妃に迎えてから歯車が狂い始めた。ライオネルの派閥の家の令嬢の中でも病弱の女を娶ったのは訳がある。幼い時にライオネルの父はヴァルム元伯爵の娘を弟ローウェンの婚約者に据えた。王太子も決まっていない状況で、父が最も信頼していた男の娘を弟の婚約者にした事で、次期国王の呼び声がローウェンに集まっていく。その意図は無い、と父から言われても信用等出来ず、ローウェンに対して劣等感と憎悪が積み重なるライオネル。その中で、ローウェンが持っている物全て欲しくなり、ローウェンの婚約者ミレーユも欲しくなった。まだ結婚も出来ない少女。それならば少女が大人になる迄、形だけの妻を、と派閥の家から娶っただけだった。それが政権交代が起きる前だ。10歳は歳の離れた少女に固執しているライオネルは病弱の妃に等愛を与える事もなく、1度も妃の顔を見る事は無かったという。それにより、妃の父はライオネルの派閥に居ながら、悪政を国民にバラしていたのだ。冷遇はれた王妃にさせられた娘を案じていても、恐怖政治を強いるライオネルに反発も憚りながら、徐々に蝕まれさせられたのだ。
それならば、とライオネルも意地になり、立て直す為にヴァルム元伯爵を手元に置く事の願いが強くなったと言えるだろう。意地の張りすぎる王の姿だった。
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