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ローウェンのパニック
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しおりを挟む「何で!何でミレーユはアレを出す訳!!」
「…………煩い、ローウェン」
アスランの執務室で1件を聞き、ローウェンは発狂している。
「子供の頃からミレーユは、礼儀に煩かった子なんだ!あの蔑む目が見られたなんて、なんて羨ましい!!」
「…………は?」
「婚約者時代、僕を立ててくれたけどあまり見られなかったんだ!あぁ!悔しい!!」
「俺はそんな目を見た事はないが?」
「……………ふふふ……するんだよ……ミレーユはね、睨む時の目がとても魅力的なんだ」
「………俺は分からん……俺には扇情的に誘われるニオイと柔らかさが堪らんな……」
「うわぁ………真っ昼間からやらしい~」
「お前にはナーシャが居るだろうが………リタに靡くな」
「…………リタ?………な、何でミレーユを愛称呼びしてんの!?僕は呼ばせてくれなかったのに!!」
「……………愛情の差だろ?」
『ほら、仕事しろ』と言わんばかりに、ローウェンに処理をさせる書類を押し付ける。
「で?その『リタ』は何してんの?」
「リタと呼ぶのは俺と彼女の両親だけだ!………書庫に行ってる筈だ」
「へぇ~………本当に勉強好きだなぁ………」
「なぁ………」
「何?」
「リタを婚約者にしたい、て言ったのはお前の両親なんだって?」
「あ、うん………でも………僕も好きだったよ…………あの子の父親のヴァルム伯爵は、父上の側近の1人で目を掛けていたからね……まだミルドが産まれてなかったから、諦めていたけど、ミルド産まれたから、てミレーユを僕の婚約者にさせたのさ………子供の頃から頭良かったしね」
「6歳差だったな、弟とは」
「そうだったねぇ、確か………ミューゼもその後産まれて、世話好きなお姉さんになった時に、あの蔑む目を見たんだよぉ……可愛かったぁ………」
「さ、蔑む目………て………」
「あの目で罵られてごらんよ………きっと今日言われた令嬢達も怯んだ筈さ」
怯んだ、とは報告は上がってはいるが、些かアスランには信じ難く、そのままローウェンの戯言と思い、聞き流していた。
一方のミレーユは書庫で司書と話をしていた。
「どのような本をお探しで?妃殿下」
「ここにある本の種類が先ず分かりませんから、分野毎の書棚の場所を標した物はありますか?…………読みたい分野の物が多くて選び難くて………」
「……………では、分野毎の書棚はこれですが………」
書棚の絵で分野毎に表されている。
「…………では、先ずはグレイシャーランド国内の地理………産業、名産物に関する書物……後は歴史………と……法律………と、貴族名鑑なんてあるかしら?」
「…………ひ、妃殿下が読まれるのですか?」
「えぇ、王妃となったからには、陛下の邪魔にならない様に、寧ろお役に立てる王妃になりたいですから」
「…………ひ、妃殿下………し、少々お待ち下さい!!」
「慌てなくて結構ですから」
司書達は慌てる。勉学を好む女は珍しかったのか、あれがいい、これがいい、と口論しながら、本を持ってくるのだ。
「ま、先ずは……こ、これぐらいの物から……」
「…………あ、これは街で買った本だから要らないわ………あと、これは………こっちと被るから…………うん、いい選択して頂いたわ……ありがとうございます」
「い、いえ………私達も妃殿下のお役に立てられて光栄でございます………」
「3日もあれば読めると思うの………次回お邪魔する時に、算術の本をお願い出来るかしら…………貴族名鑑は少しまだ借りておきたいけれど………何分、8年勉学が出来ない日々を過ごして来たので、知らない事が多過ぎて心配なの」
「さ、算術………迄……」
「お持ちします、妃殿下」
「重いから、私も持つわ」
「そんな妃殿下には持たせられません!」
「これでも、体力はある方だと思うんだけど…………」
―――アッシュに抱き潰されて、自分の体力には心配にはなったけど、今は言えない……
書庫内で読むスペースは無く、司書達に気を使わせると思ったミレーユは部屋で読む事を決めた。
「綺麗なお庭………」
「花々はお好きなのですか?」
「嫌いではないけど、ゆっくり眺める事が久しくて………」
「庭の散策もされますか?」
「でも、重いでしょう?………今日は止めておくわ」
だが、庭を見られる廊下を侍女達は歩いてくれる。遠回りしている事は分かったが、その気遣いに感謝しながら、ミレーユはついて行った。
「やぁっ!!」
「………ん?……ミルドの声?」
「この先に闘技場があるんです………ミルド様を鍛えたい、とヴァルム伯爵様が仰って」
「…………見ていい?」
「はい…………では、本は私達2人でお運びしておきます」
「あ、ごめんなさいね、重い本を」
「妃殿下はお気遣いは不要ですよ」
1人残った侍女と共に闘技場へと入るミレーユ。ヴァルム元伯爵に剣を向け、簡単にあしらわれるミルドを微笑ましく見ている兵士達も居た。
「妃殿下」
「お父様、ミルド」
「お姉ちゃん!!」
「こら、教えただろう?ミルド………姉上、もしくは妃殿下と呼びなさい、と」
「お父様迄、妃殿下と呼ぶのは寂しくなります………せめて名前で呼んで頂きたいわ」
兵士達もミレーユに気が付き敬礼をする。
「もう、貴女は国王妃だ……それに私達は来賓扱い……立場を弁えた方が宜しいかと」
「…………寂しいから嫌です……」
「家族間の時は名で呼びましょう」
「………分かりました……ところで……ミルドだけですの?鍛錬のお相手は」
「……………何が仰りたいのですかな?」
「私もお相手をお願いします!お父様!!」
「妃殿下!!なりません!!」
侍女はびっくりしている。
「ミルド、剣を………」
「え!!………お、お姉ちゃん………」
ドレスの裾を上げ結び、剣をミルドから奪う。10歳迄、父と剣を交えていたし、農民になってからも、短剣ではあるが剣の扱いにはなれているミレーユ。
そこに、アスランとローウェンが来る事等知らずに。
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