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ミレーユの気持ち
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しおりを挟む時は少し遡る。
夜中、アスランが山小屋を出て行った事には気が付いていたミレーユ。
山小屋の扉がノックされて気が付いて、聞く耳を立てていたのだ。
―――こんな夜中に………アルジャーノン?何故アッシュがアルジャーノンの事に拘ってるの?
カチャ。
アスランは新聞の空白に伝言を書き、ミレーユの手の下に残すと、山小屋を出て行った。疲れきっても後を追うつもりで慌てて服を着たが見失ってしまった。行き先等分からない。馬が残されているから街ではないだろう。
「アッシュ………いつも一緒に居ない時、何をしてるの?」
手の中にあるメモを月明かりの下で見る。
『急用が出来た。なるべく早く戻る』
「急用、て何?」
1ヶ月一緒に居れば、アスランという男の性格は分かる。だが、何の仕事をしているのか、昼間留守が多く、狩りに行くと言っても、獣1頭持って帰って来る事はない。〆た後や干し肉だったりするのだ。
聞いた事もあった。
『残酷なの見たくないだろ?森の中にある洞窟で捌いて持って来てるんだ』
と、言って誤魔化されている気がした。
宛もなく探す訳にはいかない。森の中には入るな、とアスランから言われている。迷いやすいと言ってはいたが、それを知ってわざわざ入るつもりもなかった。
呆然としながら、主人の居ないベッドへと戻るミレーユ。アスランの温もりの無いベッドは寒くて堪らない。
「アッシュ…………アッシュ……」
ベッドで繋がった身体の残骸が冷たくて余計にミレーユの身体を冷した。
女性の扱いが上手く、ミレーユの存在を決して邪魔にしない。料理を作れば美味しく食べてくれて、ミレーユが出来ない事は進んで助けてくれる。そんなアスランが好きになり、房事も嫌とは思わなくなっていた。むしろ、アスランの温もりを欲する自分にも気付いていて、それを感じたら一気に想いが溢れていた。房事中も、強請る様にキスを求め、求められるまま恥ずかしながら応じる。それがとても幸せで、1ヶ月がとても短く感じていた。
―――如何しよう……また砦に戻されて競売になったら………多分……私耐えられない……アッシュ以外の人は嫌!!
それを思うと眠れなくなる。今何をしているのか、自分の事を考えてくれているのか、と考えてしまう。想いが巡り回り、ミレーユはアスランを感じたくて、秘部に手を運んでしまう様になっていた。
「…………はぁ………あっ……止め………な……きゃ………」
思っても続く自慰に、虚しさだけを残し朝を迎えたミレーユ。食事も取れる気もせず、ただ呆然と山小屋の前で座って読み掛けの本を読まずに開き、アスランの帰りを待っていた。
「ミレーユ?」
「…………ローウェン様?……あれ?今森の方から出て来られました?」
「………あ、あぁ………ちょっと用を足したくて、山小屋の裏から回ったんだ」
「仰って下されば、山小屋の中で出来ましたのに………」
「い、いや………アッシュに怒られそうだから………」
「…………アッシュは居ませんよ、今」
「うん、知ってるよ………今迄アッシュと一緒だったし」
「そうなんですか?」
「うん…………それでね、アッシュがミレーユに来て欲しい、て呼んでるから一緒に来てくれる?」
「…………え?何処に……」
「いいからいいから」
ローウェンはミレーユの持つ本を奪い、山小屋の中に戻すと、馬を連れて来る。
「乗れるよね?」
「………あ、はい」
手綱を渡され、ワンピースの裾を気にしつつ、馬に跨ると、ローウェンは馬に乗って歩き出した。
街に入るが一向に降りる事はなく、意外な場所に辿り着く。
「ローウェン様、城内に居らしたのでは?」
「いや、陛下の命で出てたよ」
「いつ出られましたっけ?」
「そんな細かい事は聞かなくていい………彼女の身は保証するから、通るよ…………ミレーユ、行くよ」
城門の大きさにも驚くミレーユだが、そのミレーユに驚いたのは兵士達だ。ミレーユの首に着けられた首輪を見て、兵士達はミレーユに敬礼する。
「??」
兵士達とすれ違う度に、ローウェンだけでなくミレーユにも敬礼する姿に訳が分からない。
「ローウェン様………何故か私も敬礼されるのですが………」
「うん、それは仕方がないから諦めて」
「…………え?」
「城内に入ったら、着替えて貰うからね………8年前迄経験して来た教養を、城内で知らしめて貰うから」
「え!?………わ、私もう出来ませんよ!!」
「ミレーユなら出来るよ」
城内に入ったら入ったで、数少ない侍女達の姿も見える。だが、その侍女達さえも、ミレーユを見ると頭を下げていた。
「ローウェン様!そろそろ教えて下さい!城で何があるんです?………本当にここにアッシュは居るんですか?」
ざわっ!
その声を聞いた侍女や兵士達。慌てて取り繕った様だが、それがミレーユを不審がらせた。
「大丈夫だってば……………ほら、ここに入って………侍女達がミレーユの着替えを手伝うから」
「ミレーユ様、私共にお任せ下さいませ」
「さ、様って…………何があるんです?私は一平民で………出稼ぎに来た女です!」
「存じ上げております………ですが、そのお姿では、陛下の前には立てませんから」
用意されたドレスは、ミレーユが好きな色で、サイズも合わせてあった。
―――な、何故ドレスの採寸迄合ってるの?
髪も結うか結わないかでも議論され、結局アスランから受けたうっ血痕を隠す為にサイドの髪だけ飾り着けられた。
「まぁ………ご寵愛を受けていらっしゃるので安心致しました、ミレーユ様」
「………え?」
「何でもありませんわ」
言葉を誤魔化す様に、侍女達に微笑まれ着飾るとローウェンにまたも連れて行かれたミレーユ。
「ここにアッシュが居るよ」
「…………ローウェン様、本当にこのお城にアッシュが居るんですか?」
「居るんだってば!!………いいから入った入った!」
ローウェンに背中を押され、恐る恐る部屋と入るミレーユは目の前に居る人物達に、驚愕するのだった。
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