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契約続行か解消か

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 ローウェンが応接室から出て行くと、アスランは伯爵に頭を下げた。

「ミレーユを今から連れて来てもらいます」
「一体ミレーユは何処に………城では無さそうですが………」
「………訳あって、城外の家に住んでもらっていました」
「城で働いていた、という事ではないのですか?」
「それを今からお話をさせて下さい」

 アスランは、グレイシャーランドの人口比率から話して行く。グレイシャーランドでは花嫁競売をしていて、アスランがミレーユを買った事。その金を両親に渡されている事を信じていた事。1ヶ月、山小屋に一緒に衣食住を共にした事。そして、ミレーユを妻にしたいとの事を。

「決して、生半可な気持ちでミレーユと住んでいた訳ではありません……彼女は私がこの国の王だとは知りませんが、それは彼女自身で私という人間を知って欲しかっただけ……隠していた事にミレーユは怒るでしょうが、私はミレーユが傍に居ないと駄目な様です」
「それだけ………国王の地位が魅力的に女性には映るのでしょうな………陛下」
「…………はい」
「娘は………王子妃の教育をしておりました。だが、それは私に野心があって王子妃教育をした訳ではありません………アルジャーノン前国王と王妃にローウェン殿下の妃に、と願われたからこそ……結果的に恥ずかしくない娘に育っただけの事」
「…………はい……」
「娘が、国王妃になってもいい、と言うならば私は反対は致しませんが、娘に会わずにして決める事でもありません………先ずは2人の揃った姿を見てお返事致しましょう」
「…………では……プロポーズをさせて頂きます……見届けて頂けますか?」
「陛下が宜しければ」

 余りにも難しい話しが続くので、ミルドとミューゼは部屋の片隅で遊んでいたが、穏やかな雰囲気になりミルドとミューゼがヴァルム元伯爵に近寄ってくる。

「お父さん、お話終わった?」
「………あぁ、終わったよ……今からお姉ちゃんもここに来るって」
「本当!?お姉ちゃんに会えるの??」
「やったぁ!!」
『…………ローウェン様、本当にこのお城にアッシュが居るんですか?』
『居るんだってば!!………いいから入った入った!』

 応接室の外から聞こえるミレーユの声。

 カチャ。

「はい、ミレーユ」
「……………え!?………お、お父さん?……お母さん!!……ミューゼ!ミルド!!」
「「お姉ちゃん!!」」

 ミルドとミューゼがミレーユの方に走って来るが、ミューゼが着馴れないドレスで、裾を踏んで転んでしまう。

「ミューゼ!大丈夫?裾を踏まない様にしないと………この姿で走っちゃ駄目よ」
「お姉ちゃん、お姫様みたい!綺麗!!」
「はははっ…………お城に入ったら着替えさせられちゃって…………着飾るのも久々で驚いて………て………ア…………アッシュ?………その姿………」

 アスランがミレーユに近寄る。転んだミューゼを抱き起こす為に屈んでいたミレーユは、アスランの姿にまたも驚いている。
 アスランはミューゼを抱き上げると、ミューゼとミルドに話し掛けた。

「ごめんよ、もう少しだけお姉ちゃんとお話させてくれるかな?」
「は、はい………」

 ミューゼを下ろしたアスランは、立ち上がったミレーユの足元に跪いた。

「黙っていた事がある」

 真っ直ぐミレーユの顔を見つめるアスランに、ミレーユは緊張が奔り、胸の前で手を組んでいた。

「身分を隠し、ミレーユを騙していたと思っているが、聞いて欲しい」
「…………な、何?………何なの?」
「……………ふぅ……」

 ミレーユから見てもアスランも緊張しているのが伝わっていた。
 深呼吸をし口を開いては閉じてを繰り返すアスラン。長い時間ではないが沈黙が長く感じる。

「………アッシュ?」
「………私……アスラン・ジュード・グレイシャーは………ミレーユ・リタ・ヴァルムを愛しています……身分を隠し、君に出会い……恋をした………だがもう黙っている事等出来ない………グレイシャーランドの国王である私の妻になって欲しい」
「………………え?………こ、国王………陛下………?………え?………え?……ローウェン様!本当ですか?」
「本当だよ……アッシュは………この国の王様」

 ミレーユは顔を手で覆う。大粒の涙が溢れ、手袋をしている手は湿っていった。

 ―――契約………期限が切れるから……如何するかと………思ってた……けど………まさか……私を選ぶの?………国王が……?

「ミレーユ?」
「…………わ、私に………王妃になれ、と?」
「結果的にそうなる」
「…………ただ………私は……アッシュを好きなだけだわ?」
「…………うん……好きでいてくれてるんだろうな、とは知ってた……」
「き、貴族としての……嗜みも………教養も………忘れちゃった………」
「俺だって、無いだろう?」
「………………アッシュ………」
「………うん」
「……後ろ盾も何もない私でいいの?」
「ミレーユがいいんだ」

 ミレーユは手を広げる。

「アッシュ………」
「…………ミレーユ」

 アスランは跪くのを止めて立ち上がると、ミレーユを抱き締めた。

「返事は?………了解ととっても?」
「……………はい………私も貴方を愛しています……」

 応接室に立会人になったグレイシャーランド前国王、ヴァルム元伯爵夫妻、ミルド、ミューゼ、ローウェンはただ微笑ましく2人を見守っていた。
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