【完結】性欲に溺れたその先は……

Lynx🐈‍⬛

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愛しき人

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「はぁっ……んっ……んんっ……」
「………くっ!」

 くちゅ、ちゅぱっ、と深いキスを最後にミレーユと離れるアスラン。

「………はぁ………今夜も乱れたな…」
「……………そ……させ……たの………貴方……じゃ………」
「…………フッ……間違いではないな…水飲むか?」
「………そろそろ……寝た……い……」

 毎日、アスランに抱かれ慣れたミレーユ。いつも疲れ果てて、眠ってしまう事が多く、残骸を拭き取る事も出来てはいない。その寝付く姿は、アスランに癒やしを与えた。

「おやすみ………ミレーユ………」

 額にキスを落とし、ミレーユの身体を拭くアスラン。

 ―――5日後に決めなきゃな……いや…俺の意思は決まっている……アルジャーノンからの定期連絡がなかなか付かなくなったが、手間取ってるのか………?

 コツコツ。

「……………誰だ?」
「伝令です………急ぎの件で……」
「…………戻る………警護だけ頼む」
「………御意」

 アスランは服を着て、山小屋から出る。この山小屋は常に監視下にあり、ミレーユやアスランを守っていた。ミレーユに悟られる事の無い様に細心の注意で。

「…………アルジャーノンからか?」
「はっ……4名連れ帰還致しました」
「!!……………本当か?」
「はい………今かなりお疲れの様でお休みになられてしまいましたが、朝一にご挨拶されたい、と」
「分かった…………ちょっと待て」

 山小屋に再び入り、ミレーユにメモを残したアスランは、城へと戻った。

「ご苦労………それで?」
「アルジャーノン国王、ライオネルに不審な動きもありました」
「アイツはいつも不審な動きをするが、今回のは?」
「ライオネル国王の妃が病死し、新たな妃をヴァルム元伯爵の娘、ミレーユ様を妃に、とご所望でした」
「…………それで?」

 アスランの眉が上がる。眉間に皺がよる程のしかめっ面だ。

「ヴァルム元伯爵の爵位復帰も条件に、との事だそうです」
「だが、ヴァルム元伯爵はこちらに逃げて来たのだろう?」
「はい………ヴァルム元伯爵からの話では簡単には諦める王ではない、と」
「…………だろうな……それ程切れ者の人物だという事か………ミレーユの父上だからな…………分かった、探りに行かせている者達からの伝達もあるだろうが、もしかしたらまた行ってもらうかもしれん、それ迄待機してくれ………2、3日はお前も休めよ」
「ありがとうございます」

 ギシッ………。

 執務室の椅子の背に身体を預けるアスラン。

「昔から自己中心主義だったからな……ライオネルは……」

 子供の頃、何度か外交で前国王に連れられアルジャーノンに行った事もあるアスラン。その頃の事を思い出す。同じ母から産まれた弟に常に劣等感を持っていた。兄弟仲も悪く、社交的なローウェンとは合わなかったのだろう。アスランもローウェンとは仲良く出来たが、ライオネルに対しては打ち解けられなかった。アスランでも、ローウェンを羨ましい事もあったがライオネル程ではない。
 ローウェンは幼い時に婚約者が出来た、と意気揚々と話、婚約者とも上手くいっている、と自慢していた。

 ―――あの頃は、ミレーユとは会った事なかったしな………会ってたとしても、諦めるしかなかったが……

 ローウェンとライオネルの父が急死してから運命が変わった。ローウェンが王になるなら良かった。だがローウェンは政権交代に負けた事で、命からがら亡命をして来た。

『誰も殺さない、と約束させて僕だけが国を捨てる、と言って出て来た』

 と、アスランに助けを求めたローウェン。ローウェンも馬鹿ではない。それだけでライオネルが逃がす訳はないのだ。冗談交じりにローウェンは言ったが、グレイシャーランドに来てからも、ローウェンは私兵を使い間者をアルジャーノンに送っている。恐らくローウェンはライオネルに負けた振りして、失脚するのを狙っているだろう。ならば、ローウェンを助けてやりたくて、アスランもアルジャーノン内に間者を各地に送っていて、情報提供をしている。

 ―――俺の妃探しの裏で、ちゃっかりナーシャもモノにしやがって……狸だな……アイツは……さて、寝るかな……

 今頃、山小屋に戻るとミレーユを起こすかもしれない、と思い、アスランは執務室を出て城内の私室のベッドに潜り込む。

「……………やっぱ山小屋に行きゃ良かった」

 ミレーユを抱き締めて眠りたい。すっかり抱き心地が良くなったミレーユのニオイを感じながら、長い髪を自分にも絡めて眠りたかった、と今更ながら後悔すると、なかなか眠れずにいた。

「重症だな、これは………」

 今迄も、競売で買った女は数知れず。前国王の父から、貴族の数少ない令嬢との婚姻も薦められたが、女性人口が極端に少ない国の王妃に、と打診された女達は目の色が変わるのだ。明らかに私利私欲に満ちた態度、身体を1度でも合わせれば勘違いをし、寵愛を受けている、と触れ回る女達はウンザリで、国王としての身分を隠し、花嫁競売に参加する様になったのだ。
 アスランが条件に出した女は、男慣れしておらず、教養のあり知的な女。何度か女を買ったが、山小屋が住居だと知ると、女の態度が変わったり、変わりはしなくても房事の相性が悪かったり、知的さや教養が足りなかったり、とアスランが満足する女は居なかった。それもその筈で来る女達は平民や農民ばかり。字の読み書きもままならず、競売10回に1人が居ればいい方だったからだ。
 1ヶ月前、教養、知能が有りそうな女が居る、とアルジャーノン国境砦から伝達が入り、急ぎ砦に入ったアスラン。ミレーユは華奢だが、美しい立ち姿で意思の強そうな目。競売に掛けられる女達の大半は目が死んでいるのを何度も見てきている。諦めた目の女は求めてはいないのだ。
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