【完結】性欲に溺れたその先は……

Lynx🐈‍⬛

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【番外編】ライオネルとヴァルム、そして経過

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 ガシャ~ン!!ドカン!!

「ヒィィィ…………へ、陛下………お鎮まりに………」
「なるか!!」

 アルジャーノン国王城、会議をしている部屋で目の前にあるティーカップや銅像を床に落とすライオネル国王。

「俺は…………妃が死んだから、やっといけ好かない弟の婚約者だった、ヴァルム伯爵の娘を欲しいと言ったんだ!ローウェンの懐刀だったあの男は使える男だからな!……手に入れない、それを補う事が出来ないお前達が悪い!!」

 ヴァルム元伯爵が消息を絶った、という知らせが来た直後だった。ガーソンが帰都し、現君主のライオネルに報告した直後だ。

「あの男を探せ!ミレーユを探せ!」
「し、しかし……娘はグレイシャーランドに居る………と………」
「…………くっ!ならあの使えない領主を消せ!辺境地に押し込めば泣きつくと思っておったのに………」

 ライオネルは会議室から出て行こうとする。

「陛下!何方へ……」
「お前達の声聞く気にもならん!!声が届かぬ所だ!!」

 侍従達が止めるのも無視し、出て行ったライオネルは自室に戻っていた。

「………せっかく、病弱な女を妃にしたのに……ローウェンの婚約者だったあの女が俺の手足になるなら、と生かしておいたのに………ヴァルムを部下にしたくて生かしておいたのに………やっと、妃が死んで迎えに行くつもりだったのに………」

 要は、ローウェンを負かし、ローウェンの右腕になりそうなヴァルム元伯爵を自分の部下にしたいが為、見ていたらローウェンの婚約者に選ばれたヴァルム元伯爵の娘、ミレーユの頭の良さに、自分に無い物を見たからだった。

 ―――あの女と、あの女の父親さえ居れば、ローウェンの力を補える!

 結果的にローウェンに勝てたのに、まだ足りない!まだ欲しい!と政権を我が物にしたライオネルでも、まだ欲しがる物欲が増し、悪政を続けていた。各領地から、災害や干ばつ、援助を申し立てされても、無視し続け私利私欲にのめり込む事8年。遂に国を破綻へと導きしライオネル。
 その後、やっと病弱だった妃にした娘を看取り、ヴァルム元伯爵と娘ミレーユを手に入れる計画を練った。
 
 ―――ローウェンを蹴落とす為に、ヴァルムの執事を買収したんだ…………だが、アイツは使えなかった………ヴァルムに負けてのこのこと帰って来やがった……

 ガーソンから聞かされたが、ヴァルム元伯爵はライオネルを侮辱した後、ガーソンはヴァルムの殺害さえも失敗し、逃げられたと言われ、腸が煮えくり返る思いをしている。

「女を見繕え!!その場限りの女だ!」

 自室の扉を開け、廊下に控える侍女や兵士に怒鳴る。国王からの寵愛を貰いたい女は、アルジャーノン国内の中でも幾らでも居る、とライオネルは女を控えさせては抱き、追い出した。満足等無い。欲しかった女はミレーユだけだった。

        ♢☆♢☆♢☆♢☆♢

 一方、ライオネルが望んで欲しがった男、ヴァルム元伯爵は、西に、家族を連れて来ていた。

「時間通りで助かる」
「まさか、ご家族皆さんで来られるとは……」
「訳があってな…………このまま、私達家族をグレイシャーランドに連れて行ってくれるのは可能か?」
「…………私の判断では出来兼ねませんが……何があったか伺っても?」

 ヴァルム元伯爵は間者の男に一部始終説明した。男はそれに頷く。

「私の使命は、ミレーユ令嬢の家族を守る事………良いでしょう……幼き子も居られて過酷かと思いますが、ついて来て下さい……砦を通らず必ずグレイシャーランドにお連れします」
「私は、ローウェン様とグレイシャーランド国王を信じる………ミルド、ミューゼもお姉ちゃんと会いたいなら我慢しろ」
「「うん!!」」
「お父さん、僕我慢するよ!」
「私も!!」

 そうして、国境砦を通らない獣道を移動し、ミレーユが通って来た道程より長い道程を、ヴァルム元伯爵家族は通って、グレイシャーランドへと着いた。
 ミレーユがグレイシャーランドで住み始め半月は経った頃だった。

「ここが、グレイシャーランド………」
「お疲れ様でございました……申し訳ありませんが、奥様とお嬢様には男の変装を………」
「グレイシャーランドは女性比率は少ないんだったな………」
「はい…………民に襲われない為に……身分証明は王城に到着すれば、陛下がご用意するかと思います」
「エリザ……ミューゼ………いいな?」
「分かりましたわ」
「はい!」

 疑心暗鬼は残ってはいても、ライオネルより信用出来るグレイシャーランドに亡命したローウェンとローウェンと懇意にしているグレイシャーランドの国王だけを信じ、逃げて来たのだ。
 国境を超えたとてまだ王都は見えず、幼いミルドとミューゼが体調を崩しながら、着いた頃は1ヶ月を経っていた。

「陛下への連絡は、この伝書鳩で行っています………ご心配されて居られる様ではありますが……」

 と、幾度も連絡を取り合ったのだった。
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