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花嫁競売の意味

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 馬を街の停車馬に繋ぎ、賃貸金を払うアッシュ。

「まいど~」

 少し歩くだけで男だらけの街だ。女も居るが、色が違う首輪を何種類も見るし、首輪が無い者も居る。

「首輪が無い者は既婚者だが、既婚者の証明は指輪になる……左手薬指に旦那の身分証明書になる地位や職業を識別する石と、裏には旦那の名が打刻されている」
「…………あくまでも、なのね」
「そうとも限らんさ………女が少ない分、貴重な存在になるから、男から伴侶と決めた女を大事にしていくという法律もあってな……選ばれた女は、それに応じなければを放棄する権利を男に言い渡す事も可能だ…………女から言われた男は一生女とは結婚出来ん………だからこそ、『借り入れ』期間があるのさ」
「…………『借り入れ』期間は決まってる訳?」
「最低1ヶ月………延長は可能……だが1ヶ月毎に審査が入る………このまま延長か、結婚か………別れるか………同意が無ければ、別れが待つ」
「…………私は1ヶ月、て事ね……」
「そういう事だ」
「…………ねぇ……」

 隣に並んで歩くアッシュはミレーユの歩幅に合わせて歩いてくれているが、ミレーユは足を止める。

「ん?」
「…………1ヶ月で私が国に帰りたい、て言ったら、貴方は返してくれる?」
「……………昨日も言ったが、また競売に掛けられる」
「それでも、帰りたいって言ったら?」
「…………そんな権限は俺には無い」
「…………誰かある、て事ね?」
「っ!!…………さ、行くぞ……こんな所で立ち止まるのは迷惑だ」
「あるのね!!………今『しまった』って顔した!!」

 歩きを再び始めたアッシュの腕を慌てて掴むミレーユ。

「アッシュ!正直に答えなさいよ!」
「っ!」

 大声で怒鳴ったミレーユにアッシュは睨み付け、建物の物陰に連れて行く。

「大声で俺の名を叫ぶな!」
「何で?」
「…………目立つだろうが」
「只でさえ図体デカイのに?」
「……………はぁ………物怖じしないのな……お前……いいか?確かに権限は………だがその権限は国王ただ1人だ!国王が『許可しない』と言えば許可は降りない……………覚えとけ」
「……………国王には如何やったら会えるの?」
「……………お前………何でそう………」
「先ず第一に!女の出生率の低さの理由を考える!第二!競売で人身売買をする事が許せない!第三!………」
「まだあるのかよ………」

 アッシュは聞けば聞く程、溜息を吐く。

「女にも人権を!」
「女に人権あるじゃねぇか………首輪に未婚者を表せているのは、女を守る為だ………誰が今で、そのが責任を持ち、手に入れた女の衣食住は保証し、好きになって貰う為に努力する………それ以上はこの国では無理だ………女の奪い合う光景をお前は見たいか?」
「……………見たくない」
「だろ?…………俺が子供頃は、道端だろうが既婚者だろうが未婚者だろうが、女が複数の男達に襲われて人権なんてもんは無かった………法律で守られているからこれ以上の措置は今は出来ない…………もし、道端で複数の男が女を奪っていたりしたら男達は切られるからな」
「………き、切られ…………て………え?……アレを?」
「あぁ、容赦なくな……繁殖行動だからな、房事は」

 ミレーユには記憶が新しい。ここに来る迄、村の男レインの杭を切ろうとしていたから。それは犯罪にもなり得るのに、グレイシャーランドには当たり前の刑罰だという事か。

「お前………見せられたんだろ?……それだけでその権利はあるんだよ………以外の男だったらな」
「ね………所有者に手を出した女は?」
「……………あぁ……まぁ、そういうの聞かれるとは思ったが………そういう場合は所有者の権利は放棄し、切られたら一生独身にはなるが女はまた競売………かな………そんな話は今の所聞いた事は無いが、そうなるんじゃないか?」
「貴方………山小屋に人から離れて暮らしていて、詳しいのね」
「は?しょっちゅう街に出てるし、それなりに顔が広いから、そんな話は新聞読めば分かる」
「……………新聞?」
「あぁ、街に来れば売ってる………読むか?」
「うん!」

 第一、第二のミレーユが納得していない事は分かったアッシュ。第三に関しては納得してくれているのかは不明だったが、話が逸れた為、詰め寄られる事は無くなった。

「行こう!見て回りたい!」
「……………賢い女だぜ………全く………」
「ほら!案内してよ!新聞買いたい!」
「はいはい………」

 アッシュはミレーユの手を握る。

「!!」
「混雑するからな……逸れられたら探すの面倒だ」
「逸れないわよ!」
「初めて来た街を瞬時に覚える頭をお持ちならいいけどな」
「……………ゔっ……この人混みは無理かも……」

 街の目印になる物も店も覚えきれる程の量ではない大きな街だ。地図がある訳ではない見知らぬ街で迷子になる可能性だってあり、今アッシュからの権利の話を聞いたばかりで、恐らくあまり治安は良いとは言えないかもしれない、なるべく離れない様に、ミレーユはアッシュの手を握り返した。
 
「…………こういう可愛さはあるんだな……」
「え?何か言った?」
「いや?何も」

 ミレーユはアッシュに案内されながら買い物を楽しんだ。


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