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旅路で変わった人生
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しおりを挟むアルジャーノン国、グレイシャーランド国の国境近くの村。
「お姉ちゃん、本当に行っちゃうの?」
「ごめんね、ミューゼ……このままじゃ、皆生活出来ないでしょう?グレイシャーランドには女の働き手が居ないらしいから、こんな私でもいい給金で働ける筈なの………干ばつ続きのこの村じゃ皆死んでしまう………だから、お姉ちゃんが働きに行かなきゃ………ね?分かって?」
「じゃあ、私ももう少し大きくなったら、グレイシャーランドに行ってお父さんとお母さん助けるね!」
まだまだ小さな妹がミレーユに泣き付いて、抱き着いて来る。
「ミレーユ、身体には気をつけるんだぞ?」
「お父さん………必ずお金送るからね!それで、この村から出る資金にはなる筈だから」
「…………あぁ、この土地はもう駄目だからな」
「ミレーユ……ごめんね……貴女に行かせてしまう事になって……」
「お母さん、気にしないで……ミルドには学校に行って貰いたいんだから、そのお金を稼ぐ為にこの村では稼げないんだよ?」
「…………お姉ちゃん……そんな僕は学校なんて行かなくても………」
「ミルド、駄目だよ……男の子は学がないと!農業の出だからといって、文字の読み書きだけで済ましちゃ………ね、お父さん」
「ミレーユ………」
「…………あ、もう馬車が出ちゃう!行ってきます!」
ミレーユの父は元々貴族だった。ミレーユも10歳迄は都に住んでいたのだが、政権交代の政権争いにミレーユの父が推す王子が負けた為、一層されミレーユの父の爵位は剥奪されてしまったのだ。だからこそ、国境近くの辺境地の村にひっそりと暮らしている。
まだ産まれたばかりのミューゼ、まだ幼いミルドと共に、財産を切り崩しながら生活をしていたが、2年程前から干ばつが起き、王都や領主は辺境地の村への対策もしてくれないまま遂に困窮してしまった。村人は新転地を求めたり、ミレーユの様に娘が居る家は隣国グレイシャーランドに出稼ぎを決めた。
涙等は遠に枯れてしまった。領主に何度掛け合っても、罪を着せられ村の片隅に首を吊らされた村人達も居る。彼等を葬る事も罪になり、残っている村人達は諦めてしまった。まだ死にたくはないのだ。
「ミレーユ、グレイシャーランドに行っても会えるかな?」
「マーニャ………会えるよ、きっと」
同年代の村娘達。ミレーユとは皆仲が良く、皆緊張と不安を入り交じる表情をしていた。
荷馬車に数人ずつ乗り込み、国境を目指す。獣も多い為、村の男達が警護を担った。武器は剣ではない。鍬や斧の農機具だ。しかも切れ味悪い刃こぼれした古い物ばかり。
「警護にレインが居る!」
「………そうね……」
「よぉ!」
2台の荷馬車での移動で、マーニャがレインという青年を見つけた。顔を赤く染めるマーニャは彼にご執心だった。だが、ミレーユには恋が分からない。村に移り住んで8年。だが、10歳迄は貴族令嬢として、しかもミレーユの父が推した王子の婚約者として、ミレーユは教育を受けていたからか、それ迄の経験上、その王子以外の男の子との付き合いを制限されていたのもあり、今も尚それが抜け切れておらず、恋愛が出来ない娘だった。
その王子はもう会う事はない。政権交代の王位継承に負けた王子を如何するか等、負けた側がもう擁護も出来なくなるからだ。生存の有無も確認出来る程、辺境地の村では情報等入って来ないのだ。
「ミレーユも行くんだな」
「…………うん」
「そっか……寂しくなるな……」
レインは、ミレーユが乗る荷馬車の後ろの荷馬車を操作している。
「レイン!私も行くんだよ!寂しくなるでしょ?」
「あ、あぁ………マーニャも寂しくなるな!」
明らかに対応が違うレインの声。村の中の若い男の中では、レインは整った顔をしている為か、彼に恋する女達は多いが、ミレーユはレインには興味は無かった。小さな辺境の村には出会い等無い為、幼馴染同士で結婚する事が多い。幾つか少し離れた村との男女は全て顔見知りになっている。
「何よ、あれ………レインはやっぱりミレーユが好きなんだなぁ、て丸分かり」
「…………私はレイン苦手なんだけど……」
「カッコイイじゃない」
「………そうかなぁ……」
グレイシャーランド国には数日掛かる。それ迄はミレーユはなるべく、男達と距離を取りたかった。
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