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白銀の薔薇
しおりを挟むロベルト王の乾杯の挨拶と共に、王座の間に曲が流れる。
ロベルト王が来賓に挨拶をしたい、と侍従に言ったのはその後だった。
何人かの国外からの来賓と挨拶を交わすロベルト王とジュリアナ。
「ロベルト王に、こんなお美しい王女様が居られるとは……。さぞかし鼻が高いでしょうな。我が国に王女様程の美しい方は居ませんぞ。」
等と、鼻の下を延ばす来賓達。
「カムラ国、第ニ王子シヴァ・カムラ様。」
ざわっ。
「カムラ国、王子だって?」
「…………王子の姿は、こういう場に来る事はなかった、と……。」
「…………素敵な方……。」
「凛々しい………。」
ジュリアナの前に来るのは、シヴァかソロか………。
「…………シヴァ……。」
「………お初にお目にかかります。ロベルト王、ジュリアナ王女、キール王子。カムラ国王子、シヴァ・カムラと申します。………この度は、ジュリアナ王女が病からご回復の祝いの席にお呼び頂き、光栄に存じます。」
「シヴァ王子、ようやくお会い出来ましたな。貴方の母君カーネリアン王妃には大変お世話になっています。此度は我が国の依頼を受けて頂き、礼を言わせて頂く。」
「…………勿体無いお言葉。わたくし共も、ロートシルト国の依頼、感謝しております。そうでなければ、一生の宝になる方と出会えなかったでしょう。」
シヴァは、ジュリアナを見つめた。
「………ジュリアナ、どうだ?シヴァ王子と踊っては?今宵の華であるお前の姿を見たい。………来賓は最後であろう?」
「はい。」
侍従が答える。
「美しい王子だ、さぞかし美しい華になる。……シヴァ王子、ジュリアナを踊りに連れ出してくれぬか?」
「…………はい。」
「……お父様…………あ、あの……ありがとうございます。」
「………ジュリアナ王女、わたくしと踊って頂けますか?」
シヴァはジュリアナに手を差し伸べる。
「………わたくしで良ければ、喜んで。」
ざわざわと騒ぎ出す広間。
男は我先に、ジュリアナに踊りを申込むつもりで居たのだろう、苛立ちが隠せない様子。
ジュリアナは迷う事なく、シヴァの手を取った。
「………まぁ、なんと絵になるお二人でしょう。」
「しかし、恋仲になったとしても、王女は女王となる身。カムラの後継者と噂される、シヴァ王子とは結ばれまい。」
「ジュリアナ、今日も綺麗だ。」
「………照れちゃうね。」
ワルツを踊りながら、音の大きさで周りに2人の声は聞こえない。
「シヴァも素敵。」
「…………婚約の公表だが、もう少し待った方がいいんじゃないか?」
「………公表したら、動きがあるかな、て思って、お兄様にも聞いてみたの……。」
「兄上はなんて?」
「お兄様の見解は変わらない、て……でも、心配だから、お祖母様に確認して来る、とローザスに行ってる。」
「………そうか。」
「怒ってる?シヴァ。」
「…………怒ってたけど、ジュリアナのこの姿で忘れた………。」
「ふふふ………。良かった、シヴァが私の髪と眼をよく褒めてくれるから、髪と眼に合う色のドレス選んで……。」
ワルツの最中、シヴァとジュリアナが何やら話しているのは、周囲にも分かっていた。
とても初めて会ったような雰囲気ではない、と気付く者も居るだろう。
1曲が終わり、ジュリアナとシヴァに、年頃の男女が、我先に踊りを申込む。
「………すまないが、俺はロベルト王に頼まれたから踊った迄。踊るならジュリアナ王女としか踊らない。」
「………わたくしも、病み上がりです。誰とでも踊ったら疲れてまた倒れてしまいます。」
「ジュリアナ王女、父上様の方へ。」
「………はい、シヴァ様。」
シヴァにエスコートされ、ロベルト王の元へ。
「ロベルト王、公表の時期はお任せします。良き日に良き形で、私は迎える準備をしますので。」
シヴァは、ジュリアナをエスコートした手の甲にキスを落とした。
「ジュリアナ王女、では…………また。」
その姿に、広間の貴族達は魅了された。
シヴァの颯爽と歩く姿は、まるで阿修羅を振り回す戦う姿と類似する。
シヴァは何処でも戦う人なのだとジュリアナは思った。
その2人の姿を見て、面白くない影も居る。
それに気が付いていないシヴァではない。
アーヴァインの元に戻ったシヴァは、影の方の人物の事を聞いた。
「…………親父だ…………。」
アーヴァインの父、シャア宰相と取り巻きの貴族が数人。
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