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暴走

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「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……。」

 一足先に、爆発音のした場所のショッピングストアに来たジュディス。
 ショッピングストアで何の爆発かは分からない。
 だが、ジュディスを待ち構えるかのように、銃や剣を持つ輩達。
 ジュディスは鞭が1本……。
 1人では分が悪い。

「来たのは女1人だぜ?」
「人質に取ろうぜ。」
「美人だな、あの女……。」

 代わる代わる聞こえる声。
 怪我人も居るのか、悲鳴や唸り声も聞こえる。

「人質?…………私を?何故?」
「レジスタンスにロートシルトの王女が居るんだろ?その王女と引き換えだ。」
「………そう、じゃ捕まる訳にはいかないな。………王女はレジスタンスになんて居ないけどね!!」

 パシッ!

 気合入れで、鞭を一発鳴らすジュディス。

(早く、皆来て!!………今見えるだけで15人……流石に一度に来られたら無理!相手の命の保証も出来ない。)

 ダダッ!

 ジュディスは駆け出し、隙のあった男の持つ剣を鞭で奪い取り、そのまま横に居る男に向けて投げ返す。

(………このパターンもそうそう続かない!)
「うわぁ!!」
「何だ、この女!!」

 向かってくる剣には、鞭で落としては、銃を持つ方に投げる。
 ジュディスも銃弾が見える訳ではないので、銃弾を受けたら危ないのだ。
 次から次へと、無傷な男達が出てくる。
 その光景を見る野次馬達は加勢には来ない。
 我が身可愛さだ。
 それでも、犯罪に手を出した輩は許せないジュディスは、無心で立ち向かう。

「はぁはぁはぁはぁ……。」
(た、体力続かない!!次から次へと!!)

 バンバン!!

 そう思った瞬間、男達が倒されていく。

「アーヴァイン!!」
「ジュディス!!無事か!?」
「えぇ!何とか!!」
「危ない!!」

 ジュディスの一瞬の隙をついて、銃弾がジュディスに目掛けて放たれた。
 それを、シヴァが抱きかかえ庇う。

「……このバカ!!」
「…………バ、バカ?……バカって言った?」

 助けてもらいながら、何故か反抗的な態度になるジュディス。

「遊んでいる場合じゃないですよ!!」

 ソロが剣を構え、呪文を唱える。
 何を言っているかは、ジュディスには聞こえなかったが、シヴァも剣を構え、呪文を唱えたのは聞いたジュディス。

「我、唱える、悪しき心浄化し、天に導く。」
「………。」

 剣が光を帯び、シヴァの眼の色も銀色に変わった。
 ソロは変わらない。

「俺達の太刀筋内に入るなよ。」
「……………分かった。」

 以前見た、円舞の様な剣捌きに見惚れてしまう。
 シヴァの剣は切替しが早くしなやかな、太刀筋。
 レジスタンスのメンバーも加勢し、直ぐに制圧が出来た。

「………誰の指示だ?」

 シヴァは、自分やソロの倒した相手ではなく、ジュディスの鞭で怪我を負った男に話掛ける。

「………知らねぇよ、この国の王女がこの街に居るから捕まえて、首都に連れ帰りゃ、たんまり金貰える、て言うから来たんだよ。」
「俺も噂だから知らないんだ!命だけは助けてくれ!!」
「ノーマン!!!居るか!?」

 大声で、知らない名前を呼ぶシヴァ。

「はい、ここに!」

 弓を持った男が急に現れた。

「至急、首都に行って確かめてこい!!国王にも報告を!!…………ルーベンス!!!」
「はっ!直ちに!」

 ノーマンと言われた男は颯爽と消えて言った。

「はい、シヴァ様。」

 また違う男。

「国に戻って、武器補給だ!レジスタンスのメンバーが使える物を調達してくれ!母上にバレるなよ!」
「分かりました。」
「なりません!シヴァ様!我らの武器を他国の者に扱えるとは!」

 ソロが静止する。

「…………俺が使えるように改造する。それで文句ないだろ……。効力は長くは持たない。とりあえず、この街に王女が居る以上、戦力は必要だ。」

 シヴァは、ジュディスに目線を送る。

「いいご身分だな。自分の立場も考えず、1人で暴走して。」
「おい!ジュディスに何て言い草だ!」

 アーヴァインは、シヴァの胸ぐらをつかむ。

「離せ、この辺り一帯浄化する。能力を無駄に使いたくない。」
「シヴァ様、人は私がやりますから。」
「………あぁ、頼む。」

 シヴァは、胸ぐらをつかむアーヴァインの腕を締め外し、ジュディス達から離れ、呪文を唱えた。

「………我、唱える。この地を浄化し、魔滅す!」

 爆発が起きた一帯を光に包んだシヴァ。
 天から光の矢が飛んでくるような暖かさと美しさだった。
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