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ジュリアナ王女

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 コンコン。

「ジュディスです。」
「………お入りなさい。」

 ジュディスがお婆の部屋に入る。

「ジュリアナ………彼等を連れてきてくれてありがとう。」
「………お祖母様……私、連れて行かれるのですか?」

 お婆の横に座り抱き着いたジュディス。

「彼等にそう言われたのですか?」
「………いいえ……。でも私はまだ結婚したくありません。3年の猶予があった筈!お父様にもそうお願いしてあったのに………。」

 お婆は、ジュディスの髪を撫で、宥めるように話す。

「ジュリアナ……。この結婚は貴女の為なの。そして、国を平和に保つ為。……貴女は王女として、この国を見てきては来なかったの?」
「………お祖母様は、私の幸せより国の幸せが大事なのですか?」
「………いいえ、貴女の幸せが最優先ですよ。それが国の幸せになるのです。」
「………お祖母様には何が視えてるのです?」
「それを貴女に言ったら、そのまま動きますか?」
「!!!」

 ジュディスは首を横に振る。

「貴女は操り人形ではないのよ?お祖母様は貴女に幸せになってほしいだけ。お母様の分迄ね。」
「…………私に先見の眼があれば……。」
「貴女にはありませんし、付きません。それはここに来て、嫌と言う程分かったでしょう?」
「………女性継承じゃないんですか?」
「…………仕方ありません、先見の眼はお母様が貴女に残さなかったのだから。もし継承者なら、お祖母様だって、貴女にカムラの王子と婚姻を結ばせようとしませんでしたよ。」

 ジュディスは思い出したかのように、カムラの王子の事を聞く。

「………それですが、あの人、本当に王子なんですか?」
「どの人?…………あぁ……。」

 お婆は、彼等の小細工を思い出した。

「………私、あんな歳の差婚は嫌ですから!絶対に!」
「……彼ではありませんよ、王子は。あの国は自分達の身を削る以上、保身的です。王子の外観は勿論、性格や特徴は、国民全体で守り、王となる迄、姿は公の場に出しません。事、依頼中の案件がある間は。」
「…………何故そう迄して……?」
「カムラの能力です。」
「カムラの能力、て…………。」
「浄化の能力です。使える者はシヴァ王子しか居ません。………シヴァ王子は彼等の武器に浄化の能力を宿らせる事が出来る唯一の存在。その能力があるから、痩せた土地に住んでいても、繁栄する国が作れているのです。」

 ジュディス達が住む世界はそれぞれ不思議な能力が備わる世界。
 その能力は王家の極一部しか備わる事が出来ないのだが、各国の王家は大事に守ってきた。
 中にはその能力欲しさに戦争が起きたり、反乱が起きたり、と衰退した国もあるが、繁栄している国は、ジュディスの国、ロートシルトやシヴァの国、カムラぐらい……。
 その2大国の国婚を祝福する国は皆無。
 それを知らない国王でもない筈なのだが、ジュディスが15歳の誕生日に突如、婚約者を、決めてしまった国王。
 16歳になったら、結婚をするように、と言われ、顔も知らない相手との結婚するのも嫌だったし、ジュディスは王位継承者1位にも関わらず、カムラに嫁げと言われたのだ。
 先見の眼の継承者である筈のジュディスを…。
 今は、祖母だけになってしまった先見の眼の能力を絶やす事になるのでは、とジュディスは心配しているのだ。
 ジュディスの母であり、お婆の娘は先見の眼を持っていた。
 女性継承のこの能力と言われているのに、ジュディスにはその能力が無いのは、国王も知っている。
 だから、娘は要らない、と言われているようで嫌だったのだ。
 ジュディスには、8歳上の兄と5歳下の弟が居る。
 女はジュディスただ1人……。
 王妃だった母は5歳下の弟を産み、他界した。
 母には兄弟姉妹は居ない。
 だから、国を思うからこそ、異を唱えるジュディス。
 それを国王が分からない筈は無いのに、と思うジュディスは、近衛兵士の幼馴染のアーヴァインと侍女のコーラルを連れて、祖母を頼ってきたのに、祖母もカムラに嫁げと言う。
 
「…………お祖母様は、何を視て、私に結婚を薦めているのか分かりません。」
「それは、貴女自身が見極めなければなりません。………国王が仰ったレールの通りに行きたくないから、逃げて来たのでしょう?お祖母様が諭しても、そのレールの上に戻らされるだけですよ?自ら戻る決意をしなければ……。」
「…………お祖母様……。」
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