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お披露目会
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しおりを挟むお披露目会の朝、権藤の別邸での最後の朝だと思い、蝶子は出来る限り明るく振舞った。
前夜から月夜が部屋に居て、抱き締められる事も月夜に断り、部屋隅に見守られ一睡も出来ずにいた蝶子。月夜もまたしかりで、ベッドに横たわる蝶子をずっと見つめていて、目の下に隈が出来ている。
「月夜、眠そう」
「…………あぁ……まぁ、仕方ない」
「光月に聞いたけど………今日……」
「あぁ、決行だ」
「いよいよね?」
「…………」
月夜は目の下の隈を隠そうと、満月に化粧をしてもらっている。
「何で男に化粧なんてしなきゃならないのよ」
「…………お前に言われたくない……女装趣味野郎」
「仕事ですから………本職は違うでしょ?」
「…………まぁな……お前の変わりようが怖い……」
「ふふふ…………ほら、出来た……蝶子も食事終わったわね」
新月に食事を食べさせてもらっていた蝶子。食べたら部屋を移動し、夜の準備をさせられるのだ。
「…………ごちそうさまでした……満月さんのお料理、本当に美味しいです………ありがとうございます」
「あらぁ、嬉しい……もっと色々作らなきゃね」
「………………っ……そうですね!食べたいです!」
「……………」
「………月夜?」
「………」
月夜が蝶子の異変に気が付く。それに反応した新月と満月。満月は蝶子と月夜を見比べている。
カチャ。
「娼婦達が来たそうだ」
「!!…………分かった……蝶子、行くぞ」
「……………は、はい……」
部屋から出る時は裸でいなければならない蝶子は、着ていた浴衣を脱ぐ。月夜はその蝶子の全裸を見ない様に、敷布を巻くと鎖を壁から外した。そして、蝶子の耳元に顔を近付け、声を掛けた。
「………蝶子、余計な事はするなよ?」
「!!」
「……行こうか」
無言で鎖の端を掴み、歩き出す月夜に引かれる様に、足取り重く歩く蝶子。月夜の言葉から、蝶子が自害しようとしているのか、それとも他の企みをしようとしているのかを勘ぐった様だった。
娼婦達が待つ部屋に入る蝶子達。娼婦達は月夜達、男5人を見て色めき立った。
「あらぁ、貴方達が竿師?素敵~」
「こんなお嬢ちゃんを相手するより、私達が相手して欲しいわぁ」
「…………悪いが相手するのは、勘弁してくれ………この子を頼む」
鎖は月夜が離さないまま、娼婦風に仕上げられていく蝶子。蝶子を仕上げている間、月夜や他の4人も口説かれてはいたが無視を続けていた。
「ねぇ、ちょいと兄さん……この枷外さないのかい?」
娼婦の1人が、蝶子の目隠しを指差す。
「外す必要は無い…………この子は貴女達とは別扱いだからな」
「あら、言うじゃない………この子、良い所のお嬢さんらしいじゃないのさ………商売女とは一線引く、て権藤の旦那さんが言ってたけど何すんだい?」
「知らなくていい」
娼婦達は蝶子の目隠しに興味津々で、着替え終えてからも根掘り葉掘り聞いてきたが、着替え終えたと知らされた家令が蝶子を連れ出しに来る。
「準備出来た様だな………蝶子を連れて行くぞ」
「待て!会が始まる迄は傍に居させてもらうぞ」
「……………月夜、お前この女に惚れたか?」
「そうじゃない、竿師としての最上級の仕事をしたと、見守る迄したいんでね」
「好きにしろ………明日からはお前達には違う仕事を依頼したいからな」
「……………へぇ~、違う仕事ねぇ……それは後で聞かせてくれるんだろ?」
「旦那様はそう仰っている」
「ま、話を聞いてから決めさせてもらう」
蝶子は月夜の後ろから黙って聞いていた。もしかなくても、今日で月夜と会うのは最後。自分が死んでも尚、仕事があるのなら生活に困る事はないだろう。ただ、月夜達が幸せに暮らせるかどうかは話は別。そこに蝶子が居ないのは悲しかったが、今の蝶子にはこの生活が耐えられない。月夜が居ないなら何方にしても一緒だ。
何処かの部屋に入った後、金属音がすると家令の声が再び聞こえる。
「これに入れろ」
「…………悪趣味だな……蝶子、階段があるこれに上がれ」
「て、鉄の籠………ですか?」
「…………そうだ、お前の為に旦那様が用意して下さたった」
家令が説明する。鉄の籠に入らされると、足元はふかふかで、布団が敷いてある様だった。蝶子が繋がる鎖は鉄の籠に括り付けられた。
「月夜、目隠しを外せ」
「…………今、鍵は無いんだが」
「何故だ!持っているだろう!」
「…………目隠しの下は化粧もしていないんだ。外したらせっかくの目の下の化粧が台無しだろう………それに、誰が蝶子を抱いているかを当てる遊びをするのもいい余興だとは思わんか?………あぁ、それと……口枷はしておいた方が良いと思うぜ?………自害されたら興醒めだろ?」
「!!」
月夜は蝶子が自害するつもりなのに気が付いていた。
「それもそうだな………おい!紐を持ってこい!!」
「じ、自害等しません!!」
家令の一声で、蝶子は声を荒げたが、意味は無かった。逃げれる訳はないのだ。首も鎖で繋がれ、籠からも出られない。
直ぐに縄が持って来られ、口枷をされる。そして、手首にも月夜によって縛られた。
「…………馬鹿な事は考えるな…………頼むから、生きる道を諦めるな………隼人が待っている」
「!!」
小声で、蝶子の耳に囁かれる。自害を目論んでいた事や、それを月夜に勘繰られた事で、口枷をされ手首を縛られたのだ、と項垂れた。
「ぁぁぁぁっ………」
隼人の事は忘れてはいない。でも待たなくていいのだ、と言いたい蝶子。どうか、蝶子の居ない世界で幸せになって欲しいのに、最後の最後で、月夜に言われてしまい、一筋の涙が、胸元に落ちて行った。
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