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朝の寂しさ
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しおりを挟む「んはっ………あっ……」
「…………くっ……そんなに……締め付けるなっ……」
蝶子の隘路を行き来する隼人の肉棒。この悦楽の園を、隼人が初めて味わう事が出来なかったのが、隼人には嫉妬をぶつける様に、激しく律動を繰り返す。
「わ、分かり…………ま…せ……んっ……」
「これでは…………俺が……先…………うっ!」
隼人は蝶子から抜け出すと、白濁を蝶子の腹の上に出す。蝶子の腹の上に出された隼人の白濁は、蝶子の顔にも掛かり、隼人は直ぐに拭き取っていく。
「……………すまない、顔に掛かってしまった……」
「……い、いえ……」
「気持ち悪いだろ……直ぐに手ぬぐいを湯に浸してもう一度拭き取るから………動くなよ」
「…………あ……」
隼人は早々とベッドから出てしまい、蝶子は寂しく感じて、危うく手を出して、隼人を引き止めてしまいそうになる。
「如何した?」
「………い、いえ……」
隼人は直ぐに戻って来るのに、という言葉が過る。実在には直ぐに戻って来て暖かな手ぬぐいで、身体を清めてくれた隼人。
「………抱き締めていいか?」
「……………はい……」
余韻が身体の中に残っている。先程の権藤との夜伽と比べてはいけないが、蝶子には隼人との上書きされた夜伽の方が嬉しかった。隼人の胸の中に蝶子がすっぽり納まり、人肌がこんなにも暖かなものだと隼人は教えてくれたのだ。
「…………もう、眠れ……疲れた筈だ」
「………月夜さん……」
「………何だ?」
「ありがとうございました」
「…………礼を言うな……」
「如何してですか?」
「………………言われる資格等無いからだ……もう、今夜は何も考えるな……」
「……………」
蝶子は、月夜を隼人の代わりにしただけだ。それに礼をしたのに、その感謝を向けれない気持ちがあるのだ、と初めて知った。素直に上辺だけでも受け取ってくれたなら、蝶子は救われただろう。だが、蝶子は隼人の言葉に頷く。議論しても水掛論になると思ってしまい、目を瞑った。それが狸寝入りである事を、隼人に知られながら。
❈❈❈❈❈❈❈❈❈
「…………寝たか……」
狸寝入りをしていた蝶子だが、そのまま寝てしまう。隼人は蝶子が寝るのを待ち、ベッドから出ると服を来て部屋を出た。
「…………隼人様」
「……月夜と呼べ……誰が聞いてるか分からん」
「失礼しました……蝶子様は?」
三日月が、扉の前に居り月夜を待っていた様だ。
「今寝た………何か報告あったか?」
「いえ………」
「なら何だ?」
「お帰りになられるのですか?」
「…………あぁ……蝶子が望むのは月夜じゃない、隼人だからな」
「…………権藤との夜伽時、お傍に居られぬ方が宜しいのでは?」
「苦しい時には一緒に居てやりたい」
「早く解決あらん事を」
「……………あぁ……」
月夜は闇夜に消え、部屋のベッドは月夜の温もりを忘れ朝を迎えた。
「……………月夜さん……」
裸の蝶子は鎖に繋がれたまま、月夜を探す。昨夜の温もりが夢であったかの様に。
カチャ。
「起きてる?蝶子」
「…………光月さん?」
「うん、ご飯持ってきたけど、先に風呂入る?」
「………連れてってくれますか?」
「うん」
食膳を部屋のテーブルに置いて光月は鎖を外す。鎖の鍵を持っているのは月夜だけだが、月夜が居ない時は、他の者が受け取っている。鎖を光月は外し、風呂場へ入る。
「じゃ、終わったら声掛けて」
月夜以外、入浴を手伝ってくれる者は居ない。その代わり、石鹸を泡立てた泡や湯船に入りやすい様に誘導もしてくれる。
蝶子は1人では寂しく思ってはいるが、今は有難かった。
「…………隼人様を裏切ったんですもの……お父様の事が解決しても、ずっと生涯1人で過ごすのよ………きっと……」
父の事は心配で堪らないし、家に残る家族、母と幼い弟が如何しているのか気になる蝶子。父の無実が晴れない限り籠の中だ。
暫くし、風呂場の外から声が掛かる。
「蝶子、不便な事は無い?」
「あ、はい大丈夫です………そろそろ上がりますね」
「了解、開けるね」
そして、食事をし何をする訳ではなく、午後からは三日月と満月から指圧のマッサージをし、また権藤に呼ばれる、という日課が続いていく。その時は必ず、月夜が傍に居てまたその後は月夜が上書きをする。
蝶子の心は荒んで行きそうに見えたが、常に権藤に呼ばれる夜伽には必死で抵抗しながら、月夜が居たから精神を保っていられた。
「月夜さんは、夜から翌日迄何処に行かれてるんですか?」
ある日、ベッドの中で月夜の慰めの後、蝶子は月夜に聞いた。
「………昼は仕事を別に持っている………そっちも疎かには出来ないからな」
「…………何のお仕事を?」
「………店を切盛りしてるだけだ」
抱き締められながら、うとうとと蝶子はしているが、『早く寝ろ』と言われない限り、蝶子との会話をしてくれている月夜。
「………もし、私がここを出らたら……雇って貰えませんか?」
「……………え?」
「………私、隼人さんの許婚には戻れませんし、父の会社は弟が継ぎますから………私の様な汚れた女は、もう他に嫁ぎ先等ありません………だから、月夜さんのお仕事をお手伝い出来たら、と…………さ、竿師は……出来ませんが………じ、事務………とか……女が働くなんて、と思ってらっしゃいます?…………娼館で働くしかないのでしょうか………それなら……今と変わらない……ですね…………」
「…………蝶子……」
「い、いっその事…………月夜さんが娶ってくれたら………なんて…………虫が良過ぎますし………好きで私を慰めてる訳では無いのに………」
「……………」
月夜は言葉が出なかった。何を勝手に自己完結しているのか、と思っていた。婚約破棄も、蝶子で勝手に決めてしまって、隼人が動いたが、間に合わなかったから竿師として潜り込み、助け出そうとしているのに。
「あ、そろそろ出なければいけない時間ではありません?…………私の事は気にせず、お身体お気を付けて行ってらっしゃいませ……戯言と、私がした話は聞き流して頂いても構いませんから」
「……………諦めるのか?」
「え?」
「隼人を諦めるのか!?」
「……………っ……」
蝶子は首も横に振る事は無い。縦に頷いた。毎日、権藤に抱かれながら、隼人の名を呼び泣き叫ぶ蝶子を、月夜は見ている。あれが本心なのは分かっている。だが、それを冷静になれば押し殺しているのは明らかだった。
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